離婚事件 >相談:子供名義の預金は財産分与の対象ですか
離婚することになりました。夫婦の財産を分けると言う、清算的財産分与の考えも理解しました。ところで、子供名義の預金とか、学資保険は、やはり、財産分与 するのでしょうか。回答:名義人の子どもの固有の財産である場合がある
婚姻期間中に、夫婦の協力で形成された夫婦の財産を分けることが清算的財産分与(以下、財産分与を、この意味に使います)です。
夫婦の財産には、@特有財産(婚姻前から有していた財産、相続、贈与で受けた財産)、A共有財産(夫婦が共有している財産)、B実質的共有財産(夫婦の片方の名義だが実質的には共有している財産)があります。
財産分与の対象は、A共有財産とB実質的共有財産です。夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産や、相続や贈与によって取得した財産は、@特有財産として、原則として、財産分与の対象ではありません。
まず、子供名義の預金については、実質的に、権利者が誰であるかを考える必要があります。 子供名義の預金は、夫婦の協力によって形成された財産である場合が普通でしょう。名義人は子どもだが、実質的には、夫婦の財産(実質的共有財産)と考えられるのです。そうすると、子供名義の預金は、通常は、離婚の際、(清算的)財産分与の対象となります。
例外として、子供名義の預金の原資が、
父母(夫婦)以外の者から贈与などされた(親族からの入学祝いなどの祝い金、国からの手当て)ものである場合は、子供固有の資産(子供の特有財産)です。この場合は、財産分与の対象ではありません。
原資が父母からの贈与だが、
父、または、母が婚姻前から持っていたお金、父、または、母が相続、贈与によって取得したお金など特有財産である場合は、父、または、母の特有財産を子供名義にしただけですから、財産分与の対象ではありません。
また、原資が父母からの贈与だが 、
預金通帳などを 子供が管理していれば(父母の支配下から離脱している場合)、子供固有の資産です。この金額が小さい場合は、子供に与えた小遣いでしょう。金額が大きい場合は、計算上は、財産分与の対象と判断されるなる可能性があります。
以上をまとめると、 次のようになります。
子供名義の預金の権利者を決める要素 原資 預金の状況 判定 父母以外 第三者(父母以外)から贈与された入学祝などの祝い金や、
お年玉を貯めた預金元々、父母が形成した財産ではない。
子供固有の財産子供が障害者であり、障害者に支給される手当てを貯めた預金 子供への帰属性が高 い。
父母が形成した財産ではない。子供がアルバイトして貯めた預金 子供固有の財産 父母 父母の特有財産(婚姻前から持っていた 財産や相続財産)を、
子供名義の預金にした財産分与の対象ではない 子供が預金を管理している
子供が大きく、通帳、印鑑、キャッシュカードを所持している。
管理できる年齢は、12歳、13歳以上でしょう。
判例に表れた例
- 10歳・・・管理できない
- 成人・・・管理できる
父母の支配(管理)から離脱している。
原則として、子供固有の財産である。
ただし、金額が大きい場合は、計算上、
財産分与の対象となる可能性がある。父母が預金を管理している
父母が、子供の将来の教育費(学費)、生活費のために、
子供名義で預金をしている実質的夫婦共有財産である
財産分与の対象となる
学資保険は、夫婦で形成した財産ですので、財産分与の対象となります。子供名義の預金と財産分与についての判例
- 東京地方裁判所平成16年3月18日判決
(ア)原告及び子供名義の預貯金は,原告名義の預貯金が合計18万0725円(平成15年10月15日時点の郵便貯金が4万0074円,平成3年9月19日 時点での労働中央金庫の普通預金が14万0651円),A名義の定額貯金が元本46万8000円,B名義の定額貯金が元本47万3000円及び通常貯金が平成15 年7月23日現在で19万0611円,C名義の預貯金が236万7266円(亀有信用金庫の普通預金が平成12年5月26日現在で1000円,通常貯金が平成15 年10月18日時点で86万6266円,定額貯金の元本が150万円)である。
原告の預貯金は生活費口座となっており,また,A,B名義の預貯金は,ほぼ全て同人らに対する様々なお祝いや,お年玉などを貯めているものであり,本 来的に本人らに帰属させるべきものである。さらに,Cの預貯金は,A,B同様のお祝いやお年玉のほかに,Cが障害児であることから,その将来のために出生後,原告 と被告の給与から各1万円月々2万円ずつ貯え,また,障害児手当なども併せて貯めているものであって,これもまたCに帰属させるべきものである。
(イ)原告名義の財形貯蓄の合計は平成15年6月30日現在で36万円,被告名義の財形貯蓄の残額が平成14年12月31日現在で26万3429円,原告名 義の年金積立金残額は平成15年7月1日時点で174万7176円,被告名義の年金積立金残額が平成14年7月1日現在で195万4147円,自治労共済積立の被 告名義の掛金累計が平成15年6月時点で27万円あり,原告も同様の掛金で,同様の掛金の積立がある。
(ウ)原告は,原告被告夫婦及び子供名義の預貯金等に関しては上記の状況に鑑み,第1次的には,それぞれの名義人に対し,それぞれ帰属させるべきものと考え る。- 東京地方裁判所平成16年1月28日判決
原告X2は,子供名義の番号3ないし5,8ないし10の預金が子供の特有財産であり清算の対象ではないと主張する。原告らの最年長の長女も現在10歳であ り,上記の預金を自ら管理できる状態にないことは明らかである。このような年齢の子供の名義の預金については,用途を限定して他人から譲り受けたような金銭であれ ばともかく,お年玉等の蓄積や,原告X2及び被告夫婦が将来のため子供名義で預金をしたとした場合には,実質的に夫婦の共有の財産とみるのが相当である。
したがっ て,別紙一覧表の番号1ないし17の預貯金全部が清算の対象となる。- 高松高等裁判所平成9年3月27日判決
控訴人及び被控訴人の各主張財産の存在を肯認できる的確な証拠はない。 なお、控訴人は、右認定の財産のほか、長女春子名義の預金243万3546円及び三女秋子名義の預金137万3991円も、財産分与の 対象に含めるべきであると主張するが、いずれも子に対する贈与の趣旨で預金されたと認めるのが相当であるから、財産分与の対象財産とな らない。* 判決時、長女、三女ともに、成人に達してい る。
- 東京高等裁判所平成7年4月27日判決
本件で問題となっている各財産の帰属関係及びその評価額について,双方の間で主張が対立している。
ところで,婚姻期間中に得られた収入等により夫婦のいずれかの名義又は子供名義で取得した財産は,夫婦の共有財産に当たるもので,財産分与の対象となることは明 らかである。また,特有財産の換価代金と婚姻中に蓄えられた預金等を併せて取得した財産も夫婦の共有財産に当たるもので,財産分与の対象となるものであり,ただ, 財産分与の判断をするに当たって,その財産形成に特有財産が寄与したことを斟酌すれば足りるものと言うべきである。もちろん,婚姻中に取得されたものであっても, 親兄弟からの贈与や,相続による取得物あるいは婚姻前から所持していた物又はそれらの買替物は,それを取得した配偶者の特有財産であって,財産分与の対象となるも のではないことは当然であるが,他の配偶者がその維持管理に貢献した場合には,その事情も財産分与に当たって考慮されなければならない。
したがって,そのような観点に立って,婚姻中に取得した個々の財産が各配偶者の特有財産であるか,それとも夫婦の共有財産に該当するかを判断するに当たっては, 取得の際の原資,取得した財産の維持管理の貢献度等を考慮して判断しなければならないが,特段の事情が認められない場合には,夫婦の共有財産に属するものとして, 財産分与の対象となるものと言わねばならない。* 判決時、子供は、成人に達している。