ギシギシ

 中核双子葉植物 ナデシコ目 タデ科 ギシギシ属 (APG分類体系)

 学名 Rumex japonicus Houtt.
 大きな草です。
 1mくらいになります。
 ギシギシという名前がおもしろいですね。
 名前のいわれはよくわからないのですが、花穂(はなほ)が種子になったころ、()をしごくとギシギシという音がするという説があります。
 また一説には、何本かの花穂を()ると、ギシギシと音がするというのもあります。

 

 
 アレチギシギシ 学名 Rumex conglomeratus Murr.
 ギシギシにはいくつかの種類があります。
 右の写真のものはアレチギシギシといいます。
 そのほかに、ナガバギシギシやコギシギシ、エゾノギシギシがあります。
 スイバもそうですね。
 これらはすかんぽと呼ばれています。
 茎を折ると、そこから水がしたたるので、むかしの子供は水筒代わりによく利用しました。
 
 これがギシギシという名前のいわれとなった花穂(はなほ)です。
 たくさんの花(実)がついています。
 
 少し拡大してみます。
 すでに花が終わって幼い果実になっているようです。
 この花穂だけでギシギシ属とわかると思います。
 
 さらに拡大してみます。
 ギシギシ属特有の形をした花がぎっしりとついています。
 
 3枚のハート形の(ない)花被片(かひへん)が図のように()り合わさってギシギシ特有の形になっています。
 図の黒線で囲んだ部分が1枚の内花被片です。
 写真の白いものは果実です。
 
 これはアレチギシギシの花穂です。
 内花被片はギシギシより小さく、赤みを帯びた果実をつけます。
 輪のように花をつけるから、このようなつき方を輪生といいます。
 
 ナガバギシギシ  学名 Rumex crispus L.
 こちらはナガバギシギシです。
 やはり輪生(りんせい)です。
 アレチギシギシに比べると花柄(かへい)が長いですね。
 黄色いおしべが見えます。
 
 
 1つの花を取りだしました。
 大小合わせて6本のおしべを確認できます。
 
 
 花が終わると(受精(じゅせい)すると)果実(かじつ)ができはじめます。
 
 ナガバギシギシのおしべを観察します・。
 おしべは(やく)花糸(かし)から成り立っています。
 葯は2つの葯室(やくしつ)が平行に並んでおり、その境目を葯隔(やくかく)といいます。
 
 花粉を放出した後の葯です。
 花糸が葯の中央に着いています。
 このような葯を丁字(ていじ)着葯(ちゃくやく)と呼んでいます。
 
 花被片(かひへん)を取り除いて花の中を観察しやすくします。
 中央の緑色の球はめしべの子房(しぼう)です。
 子房は(じゅく)すと果実になります。
 おしべは6本あるのですが、1本少ないですね。とれてしまったのでしょう。
 
 子房から3本の花柱(かちゅう)が出ています。
 白い(ふさ)のようになっているところを柱頭(ちゅうとう)といい、花粉を受けるところです。
 房のようになっている理由は、表面積を大きくして花粉をとらえやすくしているためです。
 
 柱頭がしおれて子房がかたくなっていきます。
 このような形を三綾形といいます。
 出っ張っているところを稜といい、それが3つあるから三稜形です。
 赤みを帯びたところは、しおれた柱頭ですね。
 そのうちとれてしまいます。
 
 ギシギシの内花被片(ないかひへん)には歯があります。
 歯というのはギザギザしているところをいいます。葉の鋸歯(きょし)にあたります。
 花弁や花被片の場合は鋸歯より小さいので歯というようです。
 身近なところではタンポポの花弁でしょうか。
 タンポポの花弁の先端には5つの歯があります。参考にしてください。
 
 晩秋(ばんしゅう)から春先(はるさき)にかけて、写真のような大きい(かぶ)が目につきます。
 これはロゼットといって、葉が地面に張りつくように放射状に広がったものです。
 寒い風に強く、日光をたっぷりと受けることができる形態です。
 
 典型的(てんけいてき)なものにタンポポがありますが、タンポポは枯れるまでロゼットのままです。
 それに対してギシギシは、成長するにしたがって茎ものび、葉は茎にもまんべんなくつきます。
 上方の葉は葉柄(ようへい)がなく幅のせまい小さめの葉になります。
 
 下方の葉は、大きく、長い葉柄があります。