ゲンゲ

 真双子葉植物 マメ群 マメ目 マメ科 ゲンゲ属 (APG分類体系)

 学名 Astragalus sinicus L.

 ゲンゲなんていうと、なんだか変な感じがしますね。みなさんには、レンゲ草の方がすっきりするでしょう。
 ゲンゲというのは昔の中国名からきたもののようです。
 レンゲは蓮華と書き、ハスの花のようだからということでしょう。蓮はレンコンのレン、華は花を表します。

 
 ゲンゲは、漢字で「紫雲英」とも「翹揺」とも書きます。
 クイズにでそうな難読漢字ですね。
 元々は、中国の帰化植物だから漢名があったのでしょうが、日本では難しいからひらがなで「げんげ」と書く人の方が圧倒的に多いですね。
 
 この葉を見れば、ゲンゲがマメ科であることがすぐにわかります。ゲンゲは、マメ科の特徴である複葉(ふくよう)をもっています。
 
 写真のような複葉を奇数羽状(うじょう)複葉といいます。
 1枚1枚の小葉(しょうよう)は、うすくてまるくて、クローバーの葉に似ています。クローバーもマメ科なんですよ。
 小葉の先端がちょっとへこんでいるのも特徴です。
 葉の裏には、少しですが毛が生えています。観察してみてください。
 
 水を入れる前の田んぼ全面にゲンゲが咲いていることがあります。
 これは自然に生えているわけはありません。ゲンゲの種子をまいて育てることによって、田んぼの土づくりをしているのです。
 マメ科の植物は、根に根粒バクテリアという微生物がついていて、これがチッ素肥料として役立っています。
 チッ素は空気の約80%ですから、空気中にはたくさんあります。
 しかし、植物は水に溶けないチッ素を葉から吸収することはできません。
 根粒バクテリアは、チッ素を水に溶ける窒素化合物に変えてくれるのです。
 だから水といっしょに根から吸収できるというわけです。
 
 葉腋(ようえき)(葉のつけね)から長い()を出し、7〜8個の花が輪状(りんじょう)につきます。(輪散花序)
 これが(はす)の花にたとえられ、蓮華(れんげ)といわれるようになったようです。
 
 ゲンゲの花は輪状に咲きます。
 一つ一つの花は、輪の外側に向かって咲きます。
 
 5枚の花弁から成り立つマメ科特有のチョウ形花冠です。左の大きいチョウの羽のような旗弁(きべん)が1枚、白っぽい小さな翼弁(よくべん)が左右1枚ずつあります。
 舟弁(しゅうべん)は1枚に見えますが、手のひらを合わせたように2枚の花弁がふくろのようになっているのです。
 ふくろを開いて中がどうなっているのか見てみましょう。
 
 袋の中には()しべと()しべが入っていました。1本の雌しべと10本の雄しべです。
 マメ科の雄しべは変わっているんですよ。「二体(ゆう)ずい」といって、根元は1枚の紙を折ったようになっています。そして、先の方は9つに分かれて、その先にやくがついています。また、それとは別に1本だけ折れたすき間からやや短い雄しべが出ています。
 
 長田武正博士の図鑑によると、そのすき間から毛管現象によって花の蜜(みつ)がしみ出てくるそうです。
 袋状の花弁に昆虫がとまって蜜をなめにいこうとすると、花弁が開いて下がり、昆虫のからだに花粉がつくのです。からだについた花粉は、次の花で同じようなしかけで雌しべにつくことになります。おもしろいしくみですね。