ガクアジサイ

 中核真双子葉植物 キク類 ミズキ目 アジサイ科 アジサイ属 (APG分類体系)

 学名  Hydrangea macrophylla (Thunb. ex Murr.) Ser. form. normalis (E.H.Wilson) Hara
 アジサイ属はマンサク目ユキノシタ科、あるいは、バラ目アジサイ科に入れられることが多いですが、APGではミズキ目アジサイ科になっています。ミズキ目はキク類だから、バラ類とはかけはなれた分類になっています。
 名前のいわれは、外側の大きな花を額縁(がくぶち)に見立て、ガクアジサイと名づけたのでしょう.。
 ふだん目にするアジサイには、左のガクアジサイと下のアジサイがあります。
 
 アジサイはガクアジサイを品種改良したものですが、こちらのほうが先に命名されたので、ただのアジサイになりました。

 アジサイは、内側の花も外側の花と同じように大きくなったものです。
 大きな花の花弁のように見えるものは、じつは、がくなのです。
 花弁は開かず、つぼみ(球状)のままです。
 
 ガクアジサイの外側の大きな花です。
 がく片が、大きな花弁状に変化しています。
 がく片は、4〜5枚あります。
 色が緑色なら、葉のように見えることでしょう。
 がくも、シュートの葉が変化したものであるということを納得(なっとく)できます。
 中央の(まる)く見えるものは、開くことのない花のつぼみです。
 
 がく片をはがし、中央の青いつぼみを取りだします。
 4〜5枚の青い花被(かひ)(花弁)に包まれた花です。
 中はどのようになっているのでしょうか。
 
 たてに切ってみました。
 ほとんどの図鑑には、外側の花を装飾花と呼び、生殖能力をもたないと書いてあります。
 中を調べてみると、中央にめしべ、まわりにおしべが、ぎっしりと()まっており、花としてのつくりは、両性花と同じように、ちゃんとそろっています。
 ただ、このまま成長しないので、種子をつくることはないのです。
  
 アジサイの花序(かじょ)は、非常に複雑です。
 花序がボール状に見えることから、散房(さんぼう)花序とか散形(さんけい)花序と記載している図鑑が多く見かけられますが、セリ科の複散形花序とはようすがちがいます。
 散房花序のようにも見えますが、やはり、ちょっとちがうかな。
 2つに枝分かれした先の枝が2つに分かれ、その先が次々に分かれていくことから、これは有限花序であり、複集散(ふくしゅうさん)花序が最もあたっていると思います。
 
 集合花としてのガクアジサイもきれいですが、双眼実体顕微鏡で見た1つ1つの花も非常に美しい。
 アジサイにはない美しさです。
 4〜5枚の花弁が後ろに()り返ります。
 中央に3〜4個の花柱(かちゅう)が見えます。
 おしべは10本あります。

 
 両性花は、一斉(いっせい)に咲くことはありません。次々と咲きつづけます。
 だから、長い期間鑑賞できるのです。
 おしべをよく見ると、何か変わったことに気づきます。
 その前に、開いていないつぼみの中を観察してみます。
 外側の装飾花(そうしょくか)のつぼみと比べてみるのもおもしろいでしょう。
 
 外側の装飾花(そうしょくか)とつくりはそっくりです。
 ちがうところは、こちらのほうが、より成熟しています。
 おしべの葯が黄色くなっています。
 花柱もしっかりしていますし、種子をつくるところである子房が大きいですね。
 ちがいがわかりましたか?
 装飾花のほうは成長が止まっており、両性花のほうは成長しつけているということですね。
 
 さて、おしべです。
 おしべは、棒状の花糸(かし)の先をはさむように2つの葯室がついているものです。
 葯室は花粉をつくるところです。
 
 別の写真で角度を変えて見てみます。
 
 何か変わったところというのは、これです。
 完全に開いた葯とまったく開いてない葯が同時にあります。
 これはよくあることです。
 葯の開く時期をずらして受粉する期間を長くすることです。
 
 ガクアジサイのめしべです。
 青い部分の上のふくらんだところが子房(しぼう)です。
 花被(かひ)より下にあるから子房下位です。
 しぼうからは、3〜4本の花柱(かちゅう)が出ています。
 
 花柱の先端(せんたん)柱頭(ちゅうとう)といいます。
 (こま)かい突起物(とっきぶつ)におおわれています。
 柱頭の部分が向こう側へたれ下がっているように見えます。
 
 角度を変えてみます。
 クレーターのようなものが見えてきました。
 何なのでしょうか。よくわかりません。
 
 花冠(かかん)の外側を観察してみます。
 花柄(かへい)先端(せんたん)(こま)かい毛が生えていました。
 ちょうど子房のあるあたりです。
 
 毛を顕微鏡で拡大してみます。
 毛の生えている植物は、たくさんあります。
 毛のはたらきは、いくつか考えられます。
 分泌物(ぶんぴぶつ)を出すことや表面積を大きくして温度調節をすることもあるでしょう。
 たぶん、最も多いのは、害虫よけでしょう。
 
 アジサイの葉は、とてもきれいです。
 花が咲いていなくても、葉だけ見ていても落ち着いた気分になれます。
 クサアジサイのように葉のつき方が互生(ごせい)のものもありますが、ほとんどのアジサイのなかまは対生(たいせい)に葉をつけます。
 
 葉の表は色が()く、多少つやがあります。
 裏は、色がうすく黄緑(きみどり)がかっています。
 葉脈(ようみゃく)()き出ています。
 アジサイの葉脈は、中央の主脈から側脈(そくみゃく)が平行に出ており、その間に網状(もうじょう)の脈をはっています。
 単子葉植物にも、似たようなつくりになっているものもあります。どうしても、こういう形にならざるを得ないのでしょう。
 
 葉の(ふち)付近を拡大してみます。
 鋸歯(きょし)が規則正しく、それこそ(のこぎり)の歯のようについているので美しく見えるのでしょう。