<WWFジャパンプレスリリース>  
1999年4月26日
 
鳥獣保護法「現時点での改正は時機尚早」WWFジャパン
  WWFジャパン(世界自然保護基金日本委員会、畠山向子会長)は、農林水産業への被害対策を背景とする「鳥獣保護及ビ狩猟に関スル法律」の改正案が今の通常国会で成立しようとしていることに対し、以下の理由から反対を表明する。  「科学的・計画的な保護管理計画達成」のあいまいさ 環境庁は「科学的・計画的な保護管理計画達成のためのガイドラインを作る」と述べているが、その具体的な時期は明らかにされていない。また従来の鳥獣保護管理計画との比較として「モニタリングやフィードバック管理を行う」ことを挙げているが、具体的に義務づけているわけではない。鳥獣保護法が元来狩猟法であることから、対象種に偏りがあり、野生生物保護と矛盾する点がある(例:レッドデータブック記載種や2国間渡り鳥条約の掲載種が狩猟鳥獣に含まれている)。また、スポーツハンターに個体数調査や有害鳥獣駆除を委任しているが、公的使命を持った有害鳥獣駆除が、私的娯楽である狩猟に依存するのは問題である。生態系への二次的影響(例:エゾシカの死体放置によるオオワシの鉛中毒被害)への配慮も欠如しており、個体数管理を中心とする今回の改正案では、農林業への被害の防止はできない。さらに予算要求について、環境庁は「個体数管理で被害が減ってから」と述べているが、これでは目的と手段の順序が逆である。  地方分権をするにはまだ受け皿がない 法改正が行われた場合、各都道府県は「特定鳥獣保護管理計画」を独自に策定できることになる。しかし、「鳥獣法改正を考えるネットワーク」が行ったアンケート調査では、「全ての種の鳥獣保護業務を都道府県レベルで行えるか」について、28の都道府県が財政的、人員的、調査能力的に困難であると回答、市町村レベルまでおろした場合は、38もの都道府県が困難と回答している。十分に調査もせず捕獲制限を緩和すれば、それぞれの地域で野生動物の乱獲・減少を招くおそれがある。早期に各都道府県に野生鳥獣に関する調査研究機関と人員を配置し、適切な調査と捕獲のための保護管理計画に着手することが必要である。  情報公開、合意形成を 今回の法改正のための検討会は非公開であった。特定鳥獣保護管理計画の公聴会には利害関係者を呼ぶことになっているが、野生生物保護にかかわるNGOは呼ばれない。ガイドラインについても意見を求められない。農林業被害防除には「カモシカ食害防除学生隊」や「ツキノワの会」といったNGOの実績があり、NGOなど市民の参加を求めることが可能である。  WWFをはじめ、米国のシエラクラブやレインフォレスト・アクションなど、海外の環境NGOも今回の改正に反対を表明している。WWFは、もはや法の一部改正だけでは対応しきれない状況であると考える。今は改正を見送り、農林業被害と野生動物保護に関する検討委員会を組織し、林野庁や農水省などの関係省庁、NGO、農林業従事者、研究者などがひざを交えて検討し、1,2年後に抜本的な法制度の創設を提案する。 

 
 

 

 

この件に関するお問い合わせ
WWFジャパン自然保護室 草刈秀紀(くさかりひでのり)
пF03−3769−1713、email:kusakari@wwf.or.jp
 

 

 
 

 

 

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