登山NO.0051 剣  山( 剣山:1,955m ) 1995.3.25登山


 雨の剣山頂上( 1995.3.25 )

【剣山登山記録】

【剣山登山データ】

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NO.51 剣山登山記録

宮崎に単身赴任して2年と10ヶ月経ったある日、本社に戻るようにとの内示を受けた。
そろそろ単身赴任生活にも疲れてきた頃であったので、 家族の元に帰れることは 何よりも嬉しかったのだが、 百名山登山に関して言えば、 九州にいるうちに登ろうと思っていた 四国の剣山がまだ残っており、 少々慌てるハメになった。

実は、昨年のゴールデンウィークに石鎚山に登ったので、今年のゴールデンウィークは横浜へ帰る途中に剣山に登ろう と計画しており、 頂上の剣山頂上ヒュッテに予約まで入れていたところだった からである。

4月1日付での帰任になるということなので、数少ない日にちに焦りながら、金にモノを言わせて (とはいっても、 横浜から四国へ来る費用を考えれば可愛いものである) 急遽剣山に登ることにした。

金曜日の業後に宮崎空港から関西空港まで飛び、そこから高速船で徳島まで行ってその日は徳島市内に泊まり、 翌日は剣山に登ってから徳島市内にもう1泊し、 最後の日曜日に往路と同じ道順を辿って、 宮崎へと戻るというものである。

3月24日の金曜日、予定通り飛行機、バス、高速船を乗り継いで徳島港に着き、丁度待っていたバスに飛び乗って徳島へと向かい、 ホテルにチェックインしたのが 夜の11時であった。

翌朝早く、徳島本線に乗って貞光駅まで行ったが、ホテルを出た時にポツリポツリと降り始めていた雨が、 貞光駅でバスを待つ間に 本格的になってしまったので、 登山することを優先し、 天候の方はどうでもいいと思いながら急遽ここまでやって来たものの、 実際に雨に降られてしまったので ガックリ気落ちしてしまった。

バスに乗ったのは私1人で、途中で乗ってきた人もすぐに降りたことから、終点の剣橋までの間 (ほぼ1時間) ほとんど貸し切り状態となり、 今がシーズンオフであることを改めて認識させられた。

なお、バスの降り際に運転手さんが " 気を付けて " と言ってくれたので、雨で少々気落ちしていた私には この言葉は大変嬉しかった。

バス停からすぐに剣橋を渡って暫く進むと工事の飯場があり、中を覗くともう使われていないようだったので、 中に入ってレインウェアを身につけさせてもらった。

飯場を後に暫く川沿いの道を進み、途中から向こう岸に渡って山道に入ったのだが、最初その渡り場所が分からなくて、 少々ウロウロしてしまった。
結局は 目の前の種苗店の所から向こう岸へ渡ったのであるが、 道標があるような、 ないような状況で、 もっとハッキリとした道標をつけて欲しいものだと感じた。

雨でやや滑りやすくなった山道を暫く登ると、やがて先ほどのバス停からの道路と合流することになり、 左手の 道路が大きく右にヘアピンカーブする所に葛籠お堂が建っていた。

お堂の前にはコンコンと湧き出る水場があり、喉を潤して地図などを眺めて暫く休んだ後、道路を上へと進んだのだが、 ここでも道路から剣山登山口への入り口が見つからず、 道路を大分先まで進んでしまい、 おかしいと気づいて引き返すという失態を演じてしまった。

道路を葛籠お堂の方へと戻ると、道路右手にほとんど読みとれないような道標が見つかったので、そこを曲がって 民家の間を進むような道に入っていった。
夏のシーズン中は、 上方の見の越までバスが運行されているし、 また普段でも車で見の越まで行く人が多いようで、 もはや私のように剣橋や葛籠お堂から登る人は少なく、 従って道標などの整備も疎かにならざるを得ないのであろうが、 やはり 四国が誇る名山の一つなのだから 下の方も整備をしっかりして欲しい ものである。

畑と民家の間を進むと、やがて人の所有地を通るような感じとなり、そのまま道の先の方で1本レールをまたいで 杉の林の中に入って行くことになった。
このレールは 山の中腹にある家に荷物を運び上げるためのモノレールで、 以前テレビで紹介されていたことを思い出した。

杉林に入ると急な登りが待っており、ここは普段の昼間でも暗いと思われるのに、ましてや雨で太陽が隠れているこの日は 大変に薄暗く、 また途中ガスが立ちこめてきたりしたために、 一人歩くのは本当に気味が悪かった。

先が良く見えないためか、この登りは延々と続くような感じがしたが、やがて杉の林も終わりとなり、 同時に傾斜も緩んで 明るい山腹を進むほぼ平らな道となった。

暫く歩くと沢があり周辺には残雪が少々あったが、その後は雪は見あたらず一安心といったところで、 その後2つ程沢を横切って急坂を登っていくと、 登り切ったところが夫婦池であった。

実は、登り切って広い駐車場のような所に出たものの、ガスが濃く発生していて本当に一寸先も見えず、 この後の登山に対する不安が 急速に増してくるとともに、 どちらへ行くべきか、 全く分からない状態になってしまったのである。

手探りのようにして広場を進むと、丸笹山と剣山の絵地図を描いた看板が見つかったので、その絵地図を見ながら どう進むのか考えているうち、 ガスが少々薄れてきてくれ、 何とか進むべき道を見つけることができたのであった。

剣山国定公園夫婦池と書かれた立派な標柱を過ぎて、葛籠お堂から登ってくる自動車道に出ると、 ガスが薄れていたために ホッとすることができたのであるが、 それでも道の両側に見えるはずの夫婦池 (雄池と雌池) の方は全く見ることができなかった。

所々崖が崩れていた道路を進んでいき、やがて見の越に着いたものの、そこはまさにゴーストタウンといった雰囲気で、 夏場なら多くの登山者、 観光客で賑わうであろう周囲の売店は、 皆、シャッターを降ろしており、 自動販売機の売切を表示する赤いランプだけが光っていた。

剣山登山口と書かれた標識の所から剣山神社の階段を昇り、神社にてお参りした後、境内を右に進んで山道に入った。
すぐに道は残雪で覆われるようになり、 所々凍っているところもあったので、 道ばたに座って軽アイゼンとスパッツを装着した。

暫くは山腹を巻くように進んだが、左上の斜面には多くの雪が残っており、気温が緩んだりしたら雪崩が起きるのではないか と心配されるような所であった。

歩行の方は、アイゼンのお陰で傘をさしながらの登りでも快調に進むことができ、見ノ越からのリフトケーブルの下をくぐり (トンネルになっている) ジグザグに登っていくと、 やがて西島神社の標識がある所に着いた。

幕府の隠密が閉じこめられていたという岩牢なども見たかったのであるが、岩に囲まれた神社周辺は多くの残雪に覆われており、 踏み跡も全くなく、 膝上までの雪をラッセルをしなければ近づけなかったため 途中であきらめ、 そのまま西島野営場の方へと進んだ。

途中、道はリフトの終点である西島駅の横を通ったが、雪に囲まれた無人の駅は何となく不気味で、 建物の中から何かが飛び出してきそうな イヤな雰囲気であった。

駅のすぐ先で道が2つに分かれ、始めは木の鳥居をくぐって、当初計画していた大剣神社へのコースを進んだのだが、 このコースは先ほどの西島神社と同様に踏み跡もなく、 また雪も徐々に深くなってきたので、 これ以上先に進む自信がなくなり、 結局踏み跡があった刀掛へのコースへと戻ることにした。

露岩帯を登り、暫く進むと刀掛で、そこには小さな祠と石仏、そして剣山頂上へ560mと書かれた標識があったものの、 肝心の刀掛松というのはどれなのかが分からなかった。

この刀掛からモミ林を抜けての登りが体力的に一番辛く、またスズタケの上に積もった雪で道が分からない所があり、 ズボッと足をとられてしまうなど 大変苦労させられた。

やがて雪の量も膝下近くまで増えてくると、剱山本宮 (剣ではなく と書かれた、雪に半分近く埋もれた鳥居が現れ、 その下からは ラッセルするようにして進まねばらなくなった。

息を切らしながら雪の中を進んでいくと、周囲に建物が現れだし、やがて雪が少なくなったかと思うと金属製の鳥居が現れて、 その横の階段を昇りきったところが頂上の一角であった。

周囲にはほとんど雪がなく、ガスが薄らぐ中で目の前に見えた測候所の所から木道を歩き、 測候所の建物の周囲を一周するようにして進むと、 やがて三角点の所に着くことができた。

三角点 (そのように見えた) は、周りを岩屑で大きく円く囲まれ、さらにその外側を大きな岩で固めていて、 しめ縄のようなものまでつけられたユニークなものとなっており、 また三角点標柱の上には 丸い青銅色の玉が置かれていた。

頂上の展望はガスのため全く得られず、寂しい登頂であったが、奇跡的に、頂上にいる間だけ雨も止んでくれ、 セルフタイマーにて記念写真を撮ることができたのが せめてもの慰めであった。

下山は先程の木道とは反対の側を回り、宝蔵岩と呼ばれる大きな岩を過ぎてから、登ってきた道に合流し、 あとは一気に駆け下った。

雪が多くて登る時には苦労した道も、下山はグリセードのようにして快調に進むことができ、 また凍り付いた雪の所も アイゼンが良く効いてくれて、 自分でも驚くほど早く下ることができた。

あっという間に着いた剣神社の拝殿の前で、雨宿りをしながらアイゼンを脱ぎ、後はゆっくりと車道を戻ったのだが、 来る時にはガスの中で全く見えなかった夫婦池も この時は雄池の方を見ることができた。

夫婦池からの下りも快調であったものの、例の杉林だけは相変わらず薄気味悪く、勇気づけだったのだろうか、 知らず知らずのうちに一人ごとを言いながら歩いている自分に 気がついた。

葛籠お堂を過ぎて、やがて今朝レインウェアを着た飯場に着いたので、今度も中に入って汗と雨に濡れた服を 下着も含めて全部着替えさせてもらった。

剣橋のたもとにある民家の軒先で雨宿りをしながらバスを30分ほど待ったが、辺りは無人の村のように静かで、 考えてみたら 今朝バスの運転手に声を掛けられて以来、 今まで一人も会っていないことに気がついた (もし、 山中で遭難しても誰も分からないのだと思うとゾッとする)

生憎の雨で展望は全く得られなかったものの、残雪の山を楽しむことができ、なかなかの満足感が得ることができた。
宮崎への単身赴任の最後を飾るにふさわしい山行であったと評価できよう。


剣 山 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ登山日:1995.3.25 天候:雨単独行前日泊
登山路:剣橋−葛籠お堂−夫婦池−見の越−剣神社−西島神社 −西島野営場−刀掛−剣山−刀掛−西島野営場−西島神社−剣神社−見の越−夫婦池−葛籠お堂−剣橋
交通往路:宮崎空港−(飛行機)−関西空港−(バス)− ポートターミナル−(高速船)−徳島港−(バス)−徳島()−(徳島本線)−貞光− (バス)−剣橋
交通復路:剣橋−(バス)−徳島() −(タクシー)−徳島港−(高速船)−ポートターミナル−(バス)−関西空港−(飛行機)−宮崎空港
その他:3月24日徳島泊。翌25日剣山登山。25日も徳島泊。


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