NO.018 本 富 岳( 本富岳:979m ) 1993.5.4登山


 帰りのバスの車窓から撮した本富岳( 1993.5.4 )
【本富岳について】

【本富岳登山データ】


本富岳について

本富岳と書いて 「モッチョム岳」 と読む。
屋久島の南に位置し、その標高は 979mと 1,000mにも満たない山であるが、海岸に近いため標高差が 700mもあり結構 登り応えのある山である。
また、本富岳本体の山容はそれほど目立つものではないが、その本峰に続く モッチョム岩峰の景観が素晴らしく、 堂々とそそり立ったその姿を見れば、是非ともその頂上に立ってみたいと感じるであろう。
私がこの山に登ったのは、実は宮之浦岳登山ツアーのオプション登山であって、 そのツアーに参加するまで山の名前も場所も知らなかったのだから偉そうなことは言えないのだが、山が好きな者なら、 先ほど述べたように一目その姿を見れば登りたくなること間違いなしである。

安房の旅館からマイクロバスで県道392号線を南西に向かい、 原 (ハルオ) の集落から右折して進むと、やがて道は林道に変わり、 そのまま終点まで行くことになる。
終点にはトイレがあり、その手前には展望台も備え付けられていて、大型観光バスも駐車できる駐車場も設置されている。
本富岳に登る前に、北東にある 千尋の滝を見ておくとよいだろう。巨大な 1枚岩の斜面が作り出す渓谷を、 豊富な水量の滝が流れ落ちている様子は、本当にスケールが大きく、屋久島の自然の素晴らしさをここでも味わうことができる。

本富岳登山口からはしっかり踏まれた道が樹林帯の中に続いているが、 残念ながらその道は下山時に一気に駆け抜けただけだったので、どのような道かをここで説明するのは難しい。
実は、ガイドの牛島さんがどういう訳か道を間違え、手前の尾根から登り始めてしまったからである。
確かに道はわずかながらつけられていたので旧道だったのかもしれないのだが、もしかしたら猟師や木を切る人達の踏み跡だったのかもしれない (但し、 牛島さんはかなり自信ありげだったから、この道を昔登ったことがあったのではなかろうか)。
いきなりの急坂を喘ぎながら登っていくと、徐々に踏み跡が不明瞭になってきたが、こういう山だと思い込んでいた我々に牛島さんを疑う気など毛頭なく、 黙ってついていくだけであった。
どの位登ったであろうか、木と木がそれ程密生している訳ではなく、また下草がほとんどないことから、進もうと思えばいくらでも進めるのであるが、 登山道ではないといえばその通りで、皆がおかしいと思い始めた頃、とうとう牛島さんが皆を集めて道を間違えたらしいことを知らせた。
ガイドとしてはやや失格であるが、それからが本来の山のプロであることを示してくれ、登ってきた道を戻ることはせずに右へ右へとルートファインディングを行い、 尾根を 2つ程越えたであろうか、とうとう正規の登山道に導いてくれたのだった。
こういったやり方が正しいかどうか (登ってきた道を戻る方が絶対に正しい) については賛否が分かれると思うが、 山自体が先にも述べたようにヤブをこぐといった難しいものではなく、また地形が単純であることを考慮しての行動だったと思うし、 実はこういった冒険に私を含めて全員 (老若男女 5名) が喜んでいたのだから、良しとすべきであろう。
また、結構登ってきていたから、それをご破算にして登り返すなどということになったら、誰も YES とは言わなかったと思われる。
我々 5人のツアーメンバーも、ルートをはずれたお陰で新たな巨大杉でも発見できるのではないか などと余裕を持ちながら牛島さんについていっており、 全くパニックに陥ることはなかったが、これが私一人の単独登山時に生じたとしたらどうであっただろうか、 そう思うとあまり楽しんでもいられない気分であった。

辿り着いた登山道は、既に高さ 690mの所にある 万代杉より上の部分で、 やがて水場を過ぎ、急坂を登っていくと尾根に出た。ここを左に辿っていくと本富岳山頂であった。
と書いたが、実を言うとどこが山頂であったのか分からないままに過ぎてしまったのであり、途中 登山道からはずれて小ピークに登るようになっていたから、 そこが山頂だったのかもしれない。
モッチョム岩峰へは、結構道がキツく、ササの中の道を急下降したと思ったらまた登り返すなどしてやせた尾根を進み、 最後は木の根や岩を掴みながら無理矢理身体を持ち上げていくと、岩峰の頂上であった。
生憎の曇り空で展望はあまり得られなかったものの、スパッと切れ落ちた足元には尾之間の町であろうか、町並みと海岸線が見えており、 来し方を振り返れば、本富岳とそこから切れ落ちる岩壁を見ることができた。
岩峰の頂上には大きな岩があり、その岩を囲むように幅 1m弱位のスペースがあるだけで、そこから足元が切れ落ちているので結構立っているだけでもスリルを味わうことができる。
大きな岩の上にも登ることができるようであったが、海に近いためかこの日は風がものすごく強く、大岩に登ろうとすると風に吹き飛ばされてしまう気がしたので登ることは遠慮した次第。

下山は往路を戻ったが、モッチョム岩峰を振り返ると、ガイドの牛島さんが教えてくれたように、 岩峰頂上の大岩が男性の性器のように見えたのでなかなか面白かった。
今度は正規のルートを順調に下ったが、ルート上には木の根がかなり露出しており、やや歩きにくい所もあるものの、 全体に良く踏まれているので見誤ることはないであろう。
また、途中で万代杉に出合うことができるが、間近に見る屋久島の大杉の迫力たるやものすごいものがあって、 そばに立つ者を完全に圧倒する。
聞けば樹齢 3,000年とのことだが、直径が 6m程もあるその杉は、我々が普段見ている杉とは明らかにその表皮、大きさ、高さなどにおいて次元、 格が違う代物であった。
あとは一気に駆け下りて登山口に戻ってみると、大型の観光バスが連なって登ってきており、千尋の滝の遊歩道方面は観光客で混雑していた。
展望台に登って本富岳を振り返ると、本峰は手前の山に隠れて見えず、モッチョム岩峰だけを見ることができたが、 帰りのバスの車窓からは冒頭の写真のように、モッチョム岩峰 (左端) と本富岳 (その右の高い所) を見ることができた。
予期せぬ冒険も楽しめ、大変印象に残る山となったのだった。


本 富 山 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ 登山日:1993.5.4 天候:曇り 宮之浦岳ツアー 前日泊
登山路:本富岳登山口−尾根−本富岳東コル −本富岳−モッチョム岩峰−本富岳東コル−万代杉−本富岳登山口
交通往路:安房()−(マイクロバス)−本富岳登山口。宮之浦岳の項参照
交通復路:本富岳−(マイクロバス)−安房−(マイクロバス)−屋久島空港− (飛行機)−鹿児島空港−(車)−宮崎
その他:宮之浦岳登山ツアーのオプションとして、本富岳登山実施。


百名山以外の山のページに戻る   ホームページに戻る