ヤーマチカ通信 No.38

(* HTML作者註:裏面は朝日新聞夕刊1998年11月19日、1999年2月18日、劇団昴「三人姉妹」公演('98年10/16-11/3東京)パンフ「混迷ロシアの元気な演劇」からの引用なのでここでは重引を避けます *)

4ヶ月も間が空いたと思ったら、こんどは10日後。メチャクチャでござりますがな、ヤーマチカ通信 …1999年3月2日号

日本へ帰国した3日後にこれを書いています。「メチャクチャでござりますがなロシア経済」の詳細をお伝えいたしたく…

帰国したら、No.37に対する反響FAXをいくつかいただいていました。サンキュー! スパシーバ!

その中に、「東京でのライヴが書いてないけど、活動を関西へ移すのですか?」と。

ウーム。悲しいことに銀座の「音楽館」が1月で閉店してしまったのです。結局、私がモスクワへ出かけていた足掛け2年9ヶ月の間に、中野「浪漫倶楽部」と銀座「音楽館」が閉店。所属プロダクション「ドリーム・コーポレーション」が業務停止で行方知れず。経済危機の波間に消えました。他にもいくつかのライヴハウスが閉店に追いこまれているようです。

山之内の今後? 拠点は東京のまま、できる形でのマイペース。関東でのライヴは少し先ですが

今から予定に入れておいてネ。ライヴハウスの灯を消さぬよう、応援して下さい!


ソ連崩壊後のロシアの風物詩(?)
−物乞い昨今−
99年マクドナルド店内のドキッとする風景

貧富の差がどんどん広がるといわれながら、'96年〜'98年夏までのモスクワには、なにやらバブル気分が漂っていて、種々の物乞いにもゲーム感覚の牧歌的な風情がありました。アチコチの地下鉄構内でよく会うバイオリンやバヤンのおなじみストリート・ミュージシャン。堂々とした態度でお金を集めて回る地下鉄車内のイザリや車椅子、松葉杖の傷病兵。赤ん坊をおぶった少年とボロを来た妹の三人連れはよくあるパターンで、決まって「お父さん戦争で死んだ、お母さん病気」と切なく訴える。チョコレートをあげたら、次にまた出くわした時、逆にキャンデーをくれて、ウィンクを交わした少年もいた。元締め、マニュアル、小銭を貯めているんだろうな…と連想できるブレヒト作「三文オペラ」を地で行くモスクワでした。

去年秋からは、そうしたおなじみさんたちが姿を消し、数は少なくなったけれど、「アッこの人は本当に困っている人に違いない」とドキッとさせられる物乞いを見かけます。さらにショッキングな光景をたてつづけに目にしました。現在ではモスクワ市内のマクドナルド店は30店に増え、どこも150席以上のゆったり、清潔、てきぱき、の、ちょっとおしゃれな社交サロンになっていて小ぎれいに装った子供たちの遊戯コーナーまであります。

ふと、不似合いな、裾のすり切れたセーターや上着の4才〜13才位の少年少女が通路を行き来しているのに気がつきました。去った客の盆をさりげなく片づけながら、飲み残しのコーラを飲み、食べかけのハンバーガーをこっそりほおばっているのです。店のスタッフたちが、この子たちを追い出さず何気ないふりで働いているのもいかにもロシアです。こういう点、女の子は上手い。5才位の男の子は、じかに客にねだり出して、おまわりさんに連れ出され、家へ連れ帰られました。


モスクワの物価 高いと見るか安いと見るか

ルーブル(рубль)の数字で見ると、公務員や年金生活者の収入は変わらず、物価は国産品ジワジワ、輸入品3〜5倍の値上がり。これを円やドルの外貨換算するとベラボーな値下がり。私しゃあ今回は旅行者感覚で行きましたので、この二つの間で心は引き裂かれ頭はクラクラ、何とも落ち着かない気分でした。去年夏ルーブル切下げの前と後との価格対照表

収入の部

種類'98年前半(1$=6р=130円)'99年1月(1$=23р=120円)
国営ラジオ局の月給約1300р(28000円)変わらず(6800円)
国営テレビ局制作職員の月給約3700р(80000円)10000р(52000円)
国営テレビ局運転手の月給約2300р(50000円)6000р(31000円)
公立病院の医師の月給約500р(10800円)変わらず(2600円)
学校教師の月給約400р(8700円)変わらず(2100円)
年金1ヶ月約340р(7400円)変わらず(1800円)

民間企業の職員は、危機前、30才位でも10万円位貰ってました。たくさん倒産(という名の、経営者による持ち逃げ)しましたが、存続している所では数万円の月給は出ているでしょう。白タクはあらゆる職業の人がやっていますが、うまく稼げは一日に数百ルーブル〜千ルーブルにもなるそうです。その白タクに、今回は私、かなり頻繁に乗りました。だって、ルーブルでは3〜5割値上がりした結果でも、私にとっては自宅から駅までのバス停3つ分が15р(78円)、職場や都心まで30分乗っても40р(210円)という申し訳ないような安さ(円で)なのですから。

物価など支出の部

項目'98年前半(1$=6р=130円)'99年1月(1$=23р=120円)
1DK40平米の住居費(市内電話、ガス、光熱、暖房費込み)230р(4800円)'99年1月から320р(1680円)
1ヶ月の市内交通定期(タクシー以外は乗り放題)180р(3900円)'99年1月から240р(1260円)
地下鉄一回乗り2р(43円)'99年1月から4р(21円)
バトン(パン)…5-6食分アル2.5р(54円)3р(16円)
ジャガイモ1kg2.5р(54円)4р(21円)
にんじん1kg3р(65円)5р(26円)
玉ねぎ1kg5р(108円)7р(36円)
トマト1kg10р(215円)30р(160円)
リンゴ1kg10р(215円)20-30р(105-160円)
ハム1kg34р(737円)80р(420円)(*1)
チーズ1kg27р(585円)70р(365円)(*1)
レモン1コ3р(65円)5р(26円)
卵10コ6р(130円)12р(63円)
100%ジュース1litre6.5р(141円)19.5р(102円)
片手鍋(18cm)30(650円)160р(835円)(*2)
フジフィルムASA400 36枚27р(585円)84р(438円)
新聞0.8р(17円)1р(5円)

(*1)中程度のもの。高いのも安いのもある。
(*2)同じ物ではない、外国製。


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Original by Shigemi Yamanouchi, (C) 1999
Last Update : 31, Aug, 1999
by The Creative CAT, 1996-