ヤーマチカ通信 No.36
(* HTML編集者注:今回は非常に苦しい。4面中2面が「ナウカ」に載せられたオクジャワの記事の転載、1面がオクジャワの曲紹介です。素晴らしいオクジャワの詩ですが、涙をのんで、HTMLにするのは1面のみとします。 *)
9月6日に黒沢明監督が亡くなられました。ロシアの各メディアもトップ扱いで悼んだことでしょう。ロシアで一番有名な日本の映画監督は黒沢明さん、俳優は三船敏郎さんで、去年三船さんが亡くなられた時は、国内の大スターにも劣らぬ共感のこもった哀悼ぶりでした。
それにしてもどうして「死んでから国民栄誉賞」なの? 日本人は感動や愛に対してケチだね。「評価されてるから」讃える。「有名だから」観たり、聴いたりしに行く…みたい。ちなみにロシアの芝居やコンサートには解説付のパンフレットなんか用意されてなくて、出演者とスタッフ名の一覧表だけ。そのために私などは大いに困るのだけれども、理解も、感動も、自分の感性だけが頼りなのです。「徳とは楽しむことのできる能力のこと」(中島敦)だとすれば、芸術や自然に対する感応力は、ロシア人の方が数枚ウワテのような気がしてなりません。
去年、吟遊詩人オクジャワ(6/12)と、ピアニストのリヒテル(8/1)が亡くなった前後の様子をつい比較して思い出してしまいました。リヒテルは巨匠ぶらず、どんなヘンピな所へも調律師と二人で赴いて演奏し、自宅で練習する時は窓を開け放って、通りや中庭に聞きに来る人に存分に聞かせた…人々にとても親しまれ敬愛されていたことに驚かされました。オクジャワの歌は、私も難局か歌っていますが、「ロシア民謡なんてダサイ」と言う若い学生さんたちが「オクジャワの歌は好きだ」と、予想外の反応をして、びっくりでしたが嬉しかった。
10月8日から来年2月20日まで約4ヶ月半、またモスクワへ行って来ます。では次号は、モスクワから!
日本とロシアはなーんて似ているんだろう!
この言葉は、旧ソ連と関わり合うようになった二十年以上前から、たびたび心に浮かんでいたものですが、「悪い上段も極まれり」の感が強くなったロシアと日本の昨今、ますます「兄弟のように似てる」と思えてしまう。
いくつか挙げましょうか?
- 見つからなければ、または捕まらなければ罪じゃない」と思ってる。そして捕まっても裁判で平気で嘘をつく…つまり自分自身の中に正義や罪の尺度がない。これは欧米との大きな違い。
- 「民主主義=主権在民」がおよそ根づかない。為政者たちは富や権力を私物化して平気のヘーザ。日本では中間層も「みんながやっているから」と相似形で同じようにふるまう恥知らず。ロシアの庶民は慣れっこになってあきらめている。
- 以前は「ホンネとタテマエの使い分け」が共通していた。ただし、ロシア人のタテマエは権力者に対してであって、個々人の間にはない。日本では友人・家族の間にすらやっかいな使い分けがある。だからソ連崩壊後は日本の専売特許。
- 「指図や管理が好きな国民性」
ソ連型社会主義はまさにこれで成り立っていた。ソ連崩壊後、抜け出すかに見えたが、裸の王様エリツィンがこれだけ延命したのも、「号令」を心地よく感じる国民性の残滓があったから。
日本のそれには、ちょっと違う趣も加味されていて、むしろその方が重態。「箱庭文化」は文化だけれど、道路にも、川にも、樹木にも、公園にも、手をかけずにいられないのはもはや病的。子供たちまで逃がさず盆栽のように刈り込もうとする。髪やスカートの長さがどうだって言うの! ルーズソックス、結構じゃないの! どうせそのうち飽きる。子供社会にも流行があるのは不思議じゃないし、その体験も有益なのでは? ところでソ連時代、「日本の方が整然とした社会主義国」と言う人もいたわね? 国鉄、塩、たばこ、保険…戦後、何十年も実質的に国営だった。ロシアでは7年前から一挙にそれを崩して、コケてしまったわけだけど…
ロシアの経済危機と市民の暮らしぶりに関する日本の報道には、腑に落ちない点がいくつかあるのですけど、具体的には、モスクワから改めて、お伝えしますネ。
夏から秋へのヤーマチカ日誌(前号でふれなかったものを中心に)
- 8月15日(土)
- 毎日放送(ラジオ)の朝番組「おはよう川村龍一です」(6:00-8:00)のゲストに呼ばれ、40分の生放送トークをしてきました。
歯に衣(きぬ)着せぬ川村さんと、「国内ニュース偏重の日本の地上波テレビは、ご町内の有線放送みたい」とか、ズケズケ言い合って痛快でした。私は民放ニュース番組のゲーム感覚もとても気になります。アナウンサーたちに実感がない。物事に対する不感症を加速させているようで心配。日本語の乱れもひどくなった。相手の同意を求める必要のないことにまで「…ですよねえ」の連発は止めてもらいたい! 自分の発言にくらい責任を持て! そんな中で感心するのはNHK「スタジオパーク」司会の堀尾正明アナと高見知佳さんの話術。NHK連ドラ「天うらら」には、両親を看取った折に痛感したバリアフリー(段差のない住居)の大切さや老人問題が、描かれていて、とても共感しました。
- 9月5日(土)
- 日本・ロシア協会(東京)で講演と、「カチューシャ」歌唱指導。来春モスクワから戻ったら続演する約束もしました。
- 9月9日(水)〜11日(金)
- 天理大学ロシア学科3年生23人を相手に、「ロシア・コミュニケーション論」90分×6回の連続授業。少人数なので、体験談を交えながら対話形式でなんとか重責をクリアー。来春以降も続くことになりました。
- 9月19日(土)・26日(土)
- 早稲田大学「総合講座I」(一文・二文共通)で、「文化交流の現場で」と題し、異文化交流について90分授業を2回担当。最新設備完備の大ホールで400人の学生さんを前に!
無伴奏でオクジャワの歌を2曲歌ったら、好評だったの…。ただでも営業品目が多くて、とやかくいわれることもあるのに、これでさらに大学非常勤講師というのが加わってしまった。でも軟硬合わせ技での若者達との出会いは私にとっても、新鮮です。
滞在理由・Москваでの連絡先
10月14日モスクワ芸術座創立百周年、12月30日ユーラの一周忌がペテルブルクで、来年2月10日メイエルホリドの生誕125周年。74才になった孫娘のマルヤさんが自分で手がけられる最後のイベントかも知れません。そばにいてあげたいので。3回の飛行機代を払うよりは滞在しようと決めたわけです。
今回は4ヶ月半だけ(一年未満)の滞在なので、ラジオ局のアパートには入れませんから、どこか下宿を探しますが、連絡は、身元引受先でもあるラジオ局宛が確実です。
VOICE OF RUSSIA, JAPANESE SECTION, Moscow, 113326, RUSSIA
ラジオ局には火・木・金出勤します
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Original by Shigemi Yamanouchi, (C) 1998
Last Update : 24, Oct., 1998
by The Creative CAT, 1996-