トロイカの会
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"A Friend of the Deceased"の後半(ネタバレ)

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 自分の命こそは助かったが、暗殺者の影に脅え、ヴィーカ(娼婦)をぞんざいに扱ってしまっていたため、ヴィーカはアナトーリイの元を離れていってしまう。金持ちの相手を見つけ、海外へバカンスに行くのだという。
 自分が殺させてしまったコースチャ(暗殺者)のポケットから抜き取った財布を開けてみると、美しい妻と、生まれたばかりの赤ん坊の写真が出てきた。一度しか会ったことがない、しかもすぐに死んでしまったその男には、自暴自棄になっていた自分とは違い、守るものがあったのだ。
 アナトーリイは財布の金を抜き取ると、コースチャの自宅を訪ねる。そこには夫に死なれ途方に暮れる妻と赤ん坊がいた。自分はコースチャの友人だと名乗り、金を渡すと「困ったことがあったら呼んでくれ」と告げる。
 一方、ヴィーカが突然戻ってくる。見つけた相手には加虐趣味があり、逃げ出してきたのだ。「あんなヤツは殺してやりたい」とヴィーカが吐き捨てる。アナトーリイは、コースチャが殺人依頼を受けるために使っていた郵便局の私書箱番号と、依頼の方法を告げると、思い詰めた顔をしてヴィーカは出ていった。
 その間にも、アナトーリイの元にコースチャの妻から誘いの電話がかかってくる。行ってはみるのだが、自分が殺させてしまった男の妻である。寂しさや孤独感が理解できるだけ、余計に罪の意識に苛まれる。なぐさめたくとも、そうすることもできず、すぐに出てきてしまうのだった。
 コースチャの私書箱を覗いてみると、案の定、ヴィーカからの依頼が入っていた。その依頼は、コースチャを殺すために雇った暗殺者のもとに行き「仕事を頼みたい」言って渡した。殺人は実行されるだろう。そして、殺人が実行されれば、ヴィーカはもう戻ってこないだろう。
 私書箱には、もう一つの依頼が入っていた。アナトーリイは標的の元に行く。殺人を実行するかと思いきや、「実はあんたを狙っているヤツがいる」と告げる。そして標的となっていた男から金を受け取る。標的となった男には、依頼したと思しき人物がわかっているようだ。その後、何が起こるのか、それは知ったことではない。だが、依頼を全うしなかったばかりか、それをばらしてしまった殺し屋に、依頼が来ることはもうないだろう。コースチャの仕事はこれで終わった。
 コースチャの妻から夕食の誘いがくる。行ってみると、コースチャの妻は肌が露出した服を着て、挑発的な態度をとっている。夕食の後に何が起こるのか、目に見えている。コースチャの妻も必死なのだ。アナトーリイは、自分が完全に絡め取られてしまったことを理解する。もともとは自分が招いた事態なのだとはいえ。
 泣き出した赤ん坊の世話を頼まれ、ベビーベッドに近寄ると、アナトーリイの顔を見た赤ん坊が言う。「パパ」
 アナトーリイはこれから真相を隠し、罪悪感に苛まれながら、自分が殺させた男の妻と子の面倒をみてゆかなければならないのだ。死んだ男の友達として、そして新しい夫・父親として。

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