蝸牛月刊 第27.75号 1998年4月28日発行

4月30日・追加更新

 いつまで続くか仮更新.


アンドレイ・ラザルチュークのオンライン・インタビュー

 ロシアを代表するSF作家にしてターボリアリズムの推進者アンドレイ・ラザルチュークのオンライン・インタビューが4月30日午後8:00(日本時間)より2時間半にわたって開催されました。インタビューのログはロシア語テキストで1200行におよぶ長大なものなので翻訳・掲載はしまぜんが、興味のある方は大野まで請求してください。
 右にアクセス画面を示します。クリックすると実際のサイズで見ることができます。
(大野典宏)


新刊情報

ロマン T・U  本書の原著は「蝸牛月刊 第7号 1996年4月27日発行」で紹介を行っているので,参照していただきたい.ただし,詳しい内容は説明しておらず,紙面の凄さを紹介したのみである.
 今回,その「ロマン」の邦訳が出版された.まさか出るとは思わなかった.内容を簡単に言うと,以前の繰り返しになってしまうが「狂気・殺人モノ」である.何の特徴も無い田舎の生活が主人公によって血みどろの屠殺場へと変えられてゆく.もちろん,この作品に対する分析や評論はいくらでも可能だが,そういった分析を「だからどうした!」の一言でひっくり返してしまうような作品である.
 本書の異常さは,くどくて細かい,しかも繰り返しの多いスプラッター描写が改行無しで延々と続く点にある.表現・文章がそのまま紙面のデザインとなり,内容と一体化して読む者を圧倒する.
 Uのp.243以降は是非とも音読または朗読することをお勧めする.
(大野典宏)


クジラの消えた日

 著者は旧ソ連の少数民族チュクチ人初の専業作家であり、民族伝承のモチーフを用いた作品で知られているが、おそらく日本語に翻訳されたのは今回が初めてではないだろうか。本書の原著は1977年らしい。ちなみに、ルィトヘウはベーリング海峡横断橋をテーマにしたSF的長編小説『大陸間架橋 未来の伝説』(1989、未訳)も書いていると手元の資料に記載がある。
 さて、本作は太古にクジラが変身した若者と結婚した女性のエピソードにはじまり、年老いた彼女を狂言回しに用いつつ、クジラを祖先と信じる北方民族の興亡を綴る連作物語だ。説教めいた訳文の臭さはあるが、素直に読むべき秀作と言えよう。もっとも、ドイツ語訳から重訳したらしい(明言されてはいないが、標題紙裏の著作権表示はドイツ語表記である)訳者の誤読?ぶりにはかなりのものがあるようで、帯に記された訳者あとがきからの引用を見て、くだらない安直エコロジー本だと思って買う気を無くす者も多いに違いあるまい。これは作品にとっても不運な話である。
(大山博)


DVDソフト情報

世界のベストアニメーション vol.2 スクリーン・プレイ  数年前からアニドウが配給権を取得し、自主上映してきた作品が2枚のDVDソフトとして発売された。うち、vol.2には、ドストエフスキイの短編をアレクサンドル・ペトローフが映像化した『おかしな人間の夢』(1992)が収録されている。残念ながら、評者はまだDVDプレイヤーを持っていないため、改めて観ることができないでいるのだが、油絵調の映像が信じられないくらいダイナミックな動きを見せる作品であったと記憶している。ペトローフは、新作『ルサールカ』もすでに昨年完成させており、今最も注目すべきロシア・アニメーション作家の一人である。
 なお、表題作『スクリーン・プレイ』は、『ウォレスとグルーミット』シリーズで知られるアードマン・コレクションの一連の作品上映に含まれていたシェークスピア劇『ネクスト』の監督による、実にあやしい日本調作品であり、これまたお薦めである。
(大山博)


パソコンソフト

コーレル ワードパーフェクト スイート
Corel WordPerfect Suite 8J

 かつて英文ワードプロセッサーの標準であったワードパーフェクトも、PC世界のWindows化の流れに乗り遅れ、日本では完全にマイナーな製品となっている。ワードパーフェクト社も今はなく、製品を買い取ったノベル社もその後はカナダのコーレル社にワードパーフェクト等のパーソナル製品を売り払い、ユーザーはひたすら将来の不安を感じたものだが、今のところはバージョンアップも続けられているのがせめてもである(そう言えば、Macintosh版はどうなったのだろう?)。この度、最新版の日本語化製品Corel WordPerfectSuite 8J(以下、「WP8J」という)が発売されたので簡単に紹介してみよう。
 ワードパーフェクトは、DOS版の時代から多言語対応を売り物の一つとしていた。残念ながら、DOSそのものの制約もあり、独自のコード体系を採用し、他製品とのデータ互換性がとぼしい問題があり、この問題はWindows版になっても引きずられていた。Windows 95がどうしても好きになれない評者としても、一応、日露混在文章がほぼ標準状態のみで作成できるようになる点だけは気にいっているのだが、今回の新しいWP8Jではどうなったのか? ざっと触っただけなのだが、相変わらず独自部分をひきずっているようだ。例えば、ワードパッドで作成したロシア語混じり文章をWP8Jの文章に貼りつけると、ロシア語部分が文字化けしてしまい、フォント選択でもともとの字体を選択することもできない。Windows 95のフォントは、同一名称でも()書きで、キリル、欧文、トルコ、バルトといった別が明記されているのだが、WP8Jからはその区別ができないみたいなのだ。
 逆に、WP8Jからワードパッドにコピーした場合には、ロシア語に見えるのだが、フォントメニューを見ると、WP8JのフォントであるWP CyrillicAが選択されていることがわかる。このフォントを、Windows 95に含まれる他のキリル文字フォントに置き換えると、見事に文字化けしてくれる。WP8Jのツールメニューには、変換機能設定の項目もあるので、うまく設定を行えば、他のアプリケーションとのデータ交換もできそうな気がするのだが、あいかわらずマニュアルの説明がわかりにくく、他言語機能についてはほとんど触れられていないことも難点だ。また、そもそもの導入時に、ヘルプのダイアログボックスが表示されても中身が文字どおり入っていなかったり、メニュー上は片仮名表記、ヘルプの中では日本語表記の場合や、誤字もあり、細かな詰めの甘さを感じなくもない。独自コードを維持することは過去のユーザー重視の観点もあるのだろうが、それならばせめて、もう少しわかりやすい文書変換機能を装備してほしい。せっかく、従来はオプション扱いだった言語モジュールを標準搭載しても(ロシア語は簡単なスペルチェッカーまでついているのだ!)、データ互換に難があっては、もったいない。Windows 95の文字コード体系が最良のものであるかはさておくとしても、WP8Jの過去を継承する手法が限界にきていることは言えるだろう。
(大山博)


ハードウェア情報

ロシア語対応の廉価版鍵盤

 秋葉原のT-ZONE ミナミの輸入製品売場で台湾製の各国語対応Windowsキー付き鍵盤が売られている。コネクタは、大手メーカー製品には少なくなったAT式のもので、また、透明カバーを被せられてあったため、キータッチが不明なのが最大の難点だが、値段が\2,980-と言うこともあり、興味のある人はのぞいて見てみてほしい。鍵盤配置は、ЙЦУКЕНГШ式だが、ёが無い。他のスラヴ系言語では、チェコ語のものがあった。
(大山博)