セーヌ川の支流、マウルドレ川の谷を走るサイクリング 

(2010年1月31日、フランス、イル・ド・フランス地域圏)


(淡い冬の陽が静かな村を
か弱く照らしていた。)
(心地よい並木道が
続く)

思ったよりも、昨年よりもずっと寒い冬が続いている。昨年末に大雪が降ったパリだが年が明けても降雪の日が時折ある。こう寒いと積雪と凍結でそもそも自転車走行は危険だし、外に出る気もしない。とはいえ頑張って走ってみよう。1月末の日曜日、寒いながらも日差しには恵まれた日だ。なかば義務感に駆られ昼前に家を出る。

手にしたIGN(フランス国土地理院)発行のイル・ド・フランス地域のサイクリング地図には長いものから短いものまで100を超えるコースが書かれている。自宅から30分も車で走れば行き着くようなコースもあり、そんな中から75番のコースを選ぶ。セーヌ川のマンテ・ラ・ジョリーのやや上流から支流として分岐するマウルドレ川は、以前その沿線を走る鉄道に乗ったことがあり、豊かな田園風景に心引かれたこともあり、この川の谷を起点とするコースを選ぶ。

BEYNESという村が起点。SNCF(フランス国鉄)の駅へ続く道に駐車場があった。愛車をトランクから引っ張り出し地図を検討してコースを決める。地図上には75番のコースとして赤い線が引かれているが、なにもその通りでなくてもいいだろう。適当に走り出す。

選んだ道を地図で見れば等高線が行く手に向けて鋭く食い込んでいる。谷を詰めていく登り坂だ。そのとおりにフロントミドルに落としての登り坂が続く。裏地起毛の冬用レーサージャージを履いていても寒気が肌を刺すような気温だが、この登りはウォーミングアップにもってこいだ。上りきった路肩には水たまりに氷が張っており寒々しい。寒さでとげとげしたような林を左手に漕いでいくとMarcqという小さな村で、ここから少し南にハンドルを向ける。ちょうど鯨の背中のような尾根のてっぺんを行く道を西に向けてこいでゆく。眼下に広大な平地が広がり、寒いものの胸のすく光景が広がる。Thoiryという村からショートカットして起点に戻ることにする。寒いし、走っていて鼻水も止まらない。

広大な台地をひたすら走りマウルドレ川の谷に下りる。そこは並木道が美しく、谷の向かい側にも緩やかな丘陵が広がっており、以前列車の車窓から眺めたとおりの、のどかでおおらかな眺めだった。ゆっくりと谷間の道をペダルを踏んで、起点のBEYNESに戻った。

自宅からわずか45分の車の走行で、こんな素敵な田園が待っている。春になるのが待ち遠しくなるような、真冬の小さなサイクリングだった。

(走行20km)


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