雨の奥高尾を歩く−堂所山から景信山

(1999/6/27、東京都八王子市)


このまま山に行かなければ今月は「山無し月」になってしまう・・、そんな焦りを感じ6月最後の日曜日、早起きをしてみますがまさに梅雨のさなか、今朝も相変わらずの雨。面倒くさいなぁ、今日は止めるか・・、布団でゴロゴロしますが毎月継続していた山歩きを今月で止めるのはいかにもしゃくです。それならば雨を覚悟で山に行こう。どうせ雨なら行程の短い山。地図を物色すると奥高尾の堂所山731mが山頂での無線未交信です。それに堂所山は縦走路から少しはずれていることもあり今まで何度か歩いた奥高尾でもピークを踏んだ事がない・・。これはいい、奥高尾山稜なら手近です。コースは奥高尾縦走路とそのひとつ北側の北高尾山稜の間にあたる小下沢林道を車で関場峠直下までつめれば堂所山はすごそこ。手ごろそうな山です。

小仏峠に向け車を走らせ中央線のガードをくぐったところで右手に小下沢林道が分岐。雨の流れる林道には大きな水溜まりがあり注意して進みます。こんな道誰もいないだろうな、と思いながら車を進めると突如広場となりテント村が出現。テントといってもゴアライトでもエアライズでもない、ロッジ型の大型テント。こんな雨の中、オートキャンパーの一団です。こんな日にキャンプか・・よくやるなぁ・・、好きだなぁ・・。ここが地図にある小下沢の野営場のようです。この先まだ林道が続くのですがここでしっかりと頑丈なゲート。この先まで車で詰める予定が狂ってしまった・・。仕方ない関場峠まで1時間、林道も歩こう。タープの下のデッキチェアで本を読むオートキャンパーを横目にゴアの上着とスパッツ、傘を広げて歩きはじめます。林道は余り車が入らないのか所々轍が消えかけています。雨はますます激しくなり先行き不安。

林道終点から稜線を目指しますが、ここで関場峠の直下で荒れた沢の上部に迷い込み30分程度ロスってしまいました。(林道終点広場手前から紛らわしい沢沿いの枝林道が派生しておりこれを詰めてしまったのです。エアリアマップ上の林道歩き1時間とのコースタイムを信じていたからで、実際には40分で着いたこの広場が正しい終点でした。引き返し広場奥から登山道に入るもののこれまた先程の沢の更に奥部に導かれジ・エンド。荒れた沢にクモの巣、倒木、藪となり明らかなミスコース。倒木を跨ぎぐっしょりぬれた藪をくぐると雨粒がツーっと首筋に入ってきて廃道であることを思いっきり感じさせ、焦り・不安が心に広がりました。今日は撤退か・・? 諦めて元に戻って今度は広場から上がってすぐの細い踏み跡を踏んで稜線に上がればそこに関場峠の立派な看板がありようやく一息つけました。それにしても紛らわしい登山道でした。入り口からしばらくはとても立派な踏み跡で、一体何のためのものか・・?)
(傘をたたく雨音がリズミカルだ。
山々もけむり緑も匂いたつ。
雨の山歩きも悪くない。)

稜線に上がれば後はよく踏まれた縦走路。堂所山山頂あたりで雨足が猛烈なものとなり山頂ではとても50MHzのお店を広げる気にならずハンディ機を取り出して1200MHzで CQ。土砂降りの山頂、傘の中ハンディ機片手に突っ立たままCQを出す姿には自分ながら一体こんな雨の中何やっているんだろう、と思わずにはいられません。それでも地獄に仏とはこの事で絶え間無く呼ばれ満足。傘にあたる雨粒の音が良く聞こえますよとのレポートが・・。

最初はこのまま往路を戻るつもりでしたが、折角だからと奥高尾縦走路を景信山まで辿りそこから小下沢野営場に下りることにしました。ピストンではなく周回コースです。さすがにこんな雨だから誰もいるまい、と思っていたら突如人の声が聞こえ霧の奥からヌーッと2人づれが。こんな日にも来る変な(?)人がいるんだなぁ・・。思わず相手の顔をジロジロと眺めてしまいました・・。

山中の幹線道路、といった感のある立派な奥高尾主脈縦走路。雨のおかげが山々はけむり、木々もしっとりとして大げさですが幻想的でもあります。景信山への急登。さすがに茶店はクローズだろう、と思っているとこれ又人の声が・・。3人の登山者が茶店前のベンチでくつろいでいる・・。雨の山の愛好者、って結構居るのだろうか?(茶店はさすがに閉まっていた。)老夫婦。それに40歳代風の男性。老婦人にチョコレートをご馳走になります。老夫婦は昭和2年生まれ。陣馬高原下から歩きはじめ陣馬山を往復して景信山まで、70歳を越えているというのに雨をものともせずに登ってくるファイト、そして脚力がすごい。40歳台風の男性はいかにも山慣れしているという感じで口数も少なく行動もてきぱきしています。小仏バス停へ下山するという老夫婦、小仏峠へ向かう男性、そして小下沢野営地へ下りる私、とここでパッと別れました。一瞬の出会いですが雨の中登ってきたスキモノ同士、ホッとする一時でした。いつもはハイカーで賑わう景信山の山頂も振り返ればしーんとして静寂のさなか、なにかに取り残されたかのよう・・・。

先程の男性に野営地へ下りる道は人が余り歩かないから荒れ気味ですよ、というアドバイスを頂く。果たしてコース中のガレなどがやや目立ったがさほど案ずるまでもなかった。ホット一安心。それもよりも濡れた下草が奔放で横着してレインウェアを履かなかったズボンをタップリと濡らしてくれ不快の極みです。又時折背丈より低い枝が垂れ下がり、傘を閉じで潜ります。髪の毛もすっかり汗と雨で濡れていますが、もうすぐだから良しとしよう・・・。

相変わらずの雨の中、野営地に戻るとまだオートキャンパーはタープの下で読書のようです。何か時間が一瞬止まったかのようです。

車の中に戻りエアコンを効かせ服を着替えさっぱりしました。思わず湧きあがってくる充実感。最初からその気なら雨の中の山も悪くないな、などと考えましたが、これも何度も行った事があり又標高の低い奥高尾ならではだからでしょう・・。無事に戻れ、梅雨空の下、満喫の1日でした。

(コースと標高:小下沢野営地10:50−林道終点11:35−道に迷う−関場峠12:10−堂所山・アマチュア無線運用12:50/13:25−景信山14:05/14:20−小下沢野営地15:00、堂所山標高731m)


アマチュア無線運用の記録

堂所山 731m
東京都八王子市
交信局数4局 (1200MHz FM)
最長距離交信、埼玉県上尾市
無線機:C710(0.28W)+付属ホイップ
奥高尾主脈縦走路中の景信山と陣馬山のほぼ中間地点に位置する。関東平野の縁にあたる奥高尾山稜なので関東平野への電波の飛びは期待できる。

1200MHzは0.28Wに全長10cm程度の付属のホイップアンテナで交信したが貧弱ながら4局に立て続けに呼ばれた。50MHzが出来なかったのが残念。

Copyright:7M3LKF,1999/6/27