アマチュア無線家のお正月は山の上から−仏果山

(1999/1/2、神奈川県愛甲郡清川村)


お正月は僕たちアマチュア無線家にとっては年に一度の重要な時期だ。正月の2日、3日の両日は日本アマチュア無線連盟主催による「ニューイヤーパーティ」が開催され多くの無線家達が電波を通じて新年の挨拶を交わすのだ。一年の計は元旦にあり。まぁ元旦は譲っても、まさにアマチュア無線家達の一年はニューイヤーパーティで始まるのだ。そんなパーティには無論山の上から参加しよう。毎年の行事だ。

1999年のニューイヤーパーティはローカル局の7K3EUT塩田さんと手近な山に行こうという計画が数ヶ月前からあった。塩田さんは今は仕事で関西に転勤しており連休時にはこうして地元の横浜・鶴見に戻ってくる。そんな折にはのんびりと交遊を暖めたいもので、もちろん無線も楽しみたい。そんな訳で山は愛甲郡の仏果山。簡単でかつ電波の飛びもよい山だ。

* * * *

早朝塩田さんをピックアップし国道16号、246号を経由して厚木方面に走る。正月なのでさすがにガラガラだ。国道412号を津久井方面に折れ北上。「半原越え」と呼ばれる仏果山から経ケ岳を結ぶ稜線の鞍部を通過する。本当はここから更に手軽な経ケ岳に登ってもよいのだが、一度登っているし、南面が薄暗い杉林なので日当たりが悪く寒そうな気がする。パス。「半原越え」にはブルーの4輪駆動車が止まっている。川崎ナンバー。地元の人ではない・・・。もしかして同じくニューイヤーパーティ参加を目論むアマチュア無線家か?このエリアは手軽な事もあり山岳移動運用をしに来る人が多い。

「半原越え」から宮が瀬ダムへ行く県道におりて仏果山登山口の駐車場に車を停め歩きはじめる。ダムの水面はまだ予定の半分か、6割程度なのだろうか、水面に消え行く古い道路がダム完成の過程を物語っている・・。

しばらくは檜林の中の薄暗いつづら折れが続く。2人とも話しながら登るし山頂に早く着いて無線がしたい、という焦りで気がはやり、息があがりがちとなる。檜の植林帯を抜け出たところにテレビの自動中継局のような設備がありここで一服。左手高くに目指す山頂が見えた。

再び進み高取山と仏果山を結ぶ稜線に出る。ここからは稜線歩きで短いアップダウンの後短い急坂を登ると仏果山山頂747mだった。
(山頂にて。
7K3EUT塩田さん・左と。)

さすがに眺めが良い。関東平野がまさに一望。急いで無線のアンテナを設営。まずは塩田さんが50MHzを運用開始する。私は1200MHz。塩田さんが途端に猛パイルになりはじめたのが私にも聞こえてくる。さすがニューイヤーパーティ。夏場のハイシーズンでもない限り50メガでこんなパイルはそうはない。私の運用する1200MHzも途切れることなく呼ばれる。1200MHzも普段はガラガラなのに。時折塩田さんの声が耳に届く。猛パイルは相変わらずのようで塩田さんはやや面食らいながらも楽しんでいるようだった。

1時間。「30局もやりましたよ」と嬉しそうに塩田さんが言う。こちらも20局交信。ここで交替して今度は私が50に、塩田さんは430MHzにオンエア。さあ待望の50メガだ。なんたって一番思い込みのあるバンドなのだ。自作の無線機で運用。サイドからの混信の切れ、AGCの効き具合、など自作機はメーカー製の無線機に比べると劣るところもある。が、なにしろ自分で作ったものなのだ。これはまさに痛快。

こちらは猛パイルにはならぬものの途切れず呼ばれ2分で1局といった快調なペースで運用できる。いつも50メガがこうなら楽しいのだが・・。あっという間に更に一時間が経過。ノルマの20局どころかこちらも30局達成。

昼食をとりながら今度は知り合い・「山と無線」の仲間を探しにバンド内をスイープする。JR1NNL後藤さん/大月市・扇山をみつけ挨拶を交わす。JM1PRM・岡田さんは奥高尾の生藤山からのオンエア。

「いやー、堪能したなぁ・・」と塩田さん。全く、その通りだ。普段は山頂では1時間程度しか運用しないのだがたまにはこういう無線主体の山も悪くない。

心地よい満足感を感じながら日溜まりで暖かい山頂を後にする。長く感じた登り道も下りは早い。なにしろ無線の充足感で二人ともハイになっているのだ・・。仲間とワイワイと楽しむ山と無線。こういうのもいいなぁ・・。二人してああだ、こうだ言いながら歩いていくともう林間から近くに宮が瀬ダムの水面がきらきらと光るのが見えてきた。

アマチュア無線家の新年、無事に開けましておめでとう。今年一年も楽しみましょう・・。

* * * *

翌日50メガでJQ1TQP田中さんと交信する。聞けば同氏は昨日は経ケ岳へ移動していたという。さては・・。聞いてみると「半原越え」に止まっていた青の4駆はまさに田中さんのものと判明。全くの偶然ながらニアミスをしていたわけで会えなくて残念であった。今年もいろいろな出会いのある一年であってほしいものだ。

(終り)

(コースと標高:仏果山登山口8:50−仏果山山頂9:55/14:15−仏果山登山口15:00、仏果山標高747m)


仏果山 神奈川県愛甲郡清川村, 747m
無線運用記録 50MHz SSB : 33局交信、最長距離交信、栃木県日光市 JI1CBE/1
1200MHz FM : 20局交信、最長距離交信、埼玉県北葛飾郡 7N2FSD
無線設備 50MHz : 自作機(アイテック電子TRX602号キットをベースに4Wへ改造)、及びHT750。アンテナは自作軽量ヘンテナ
1200MHz : C710、アンテナは付属のホイップ
山頂 山頂は雑木でベンチが雛壇状に並んでいる。1200MHzのレピータが高さ10m近い展望台に設置されている。この展望台からの展望はまさに絶景で関東平野が一望出来る。もちろん展望台に上がらずとも展望は素晴らしい。西方面以外は無線も楽しめる。
ハイキング入門の山なのでハイカーは多い。


Copyright : 7M3LKF, Y.Zushi, 1999/1/4