スノートレッキングを満喫! 高川山は銀世界 

 (1998/1/31、山梨県大月市・都留市)


この山行記は山岳移動同人誌「山と無線」の仲間JO1FFY・小林勝義さんへのEメイルとして書かれたものです。


小林さん こんにちは。ROM専門ですがPATIOは時々覗いています。

PATIOでの先日の高川山山行記は楽しく拝見しました。実はあの週は私も密かに高川山を計画していて結局所要で取りやめたのですが、あの時行っていれば山頂でのアイボールも可能だったんだな、と残念に思いました。結局1週づれましたが私も1月31日、高川山へ登ってきましたのでその様子を報告したいと思います。。初めて行ったのですが、雪の様子やコースの詳細など小林さんの書き込みをプリントアウトしたものを持参していったので大助かりでした。特に雪の状況が事前情報としてわかったので装備に無駄が無くてすみました。 

* * * *

30分以上も寝坊したので、結局私も7:40頃の東神奈川発となりました。小林さんも書かれていましたが中央線下り列車も時間をのがすと皆大月止まりなんですね。普段大月から先へ行く時はきちんとダイヤを調べていたのですが、近場だと思って事前の注意が不足していました。

結局小林さんと全く同じ列車の乗り継ぎで初狩駅か、と思いきや、先行列車が猿橋駅の先で架線事故とやらで鳥沢駅で列車が停止してしまいました。40分以上も待ったのですが復旧の目処なしとの事なので、いらいらするし、扇山でも登るか、とやけっぱちになっていたところ大月までタクシー相乗りをおばさん連れから誘われ、そのまま大月へ。JRの対応の悪さに立腹して、結局下車駅で精算しようと思っていた運賃は未払いのまま(!)鳥沢の改札を出ました。

途中架線事故を起こした列車が立ち往生しているのが見えます。もちろん乗客は缶詰・・。タクシーは横目に通り抜け、幸い大月からはすぐに甲府行き普通列車に乗れました。
(登り始めて50分、
男坂・女坂分岐にて)

10:50、歩き始めてすぐ自徳寺に出ます。小林さんも書かれていたカラフルな旗に囲まれたお墓があります。青や紫、黄の絹製とおぼしき旗。これがこの地方の埋葬に欠かせぬ色なのか・・、里道歩きは発見が多いものです。

墓地横から雪道となり、スパッツを履きます。いよいよ、雪か。二週間前の大雪がどうなっているか、スノートレッキングが楽しみでわくわくします。

積雪50センチの林道を数回ヘアピンすれば積雪ではっきりしませんが林道から登山道の分岐に出ました。11:30、ここが小林さんの書かれていたたまご石分岐のようです。左手に踏み跡をたどります。雪は固くしまっており少し滑りやすく、こんな雪で頂上まで、無事登れるかな・・、少し不安がよぎります。出発が遅れたせいか、前後に人けはまったくありません。こんな時が独りでいることを意識する一瞬です。大きく息を吐き出して首をぐるぐる回します。

男坂・女坂分岐が現れますが私の持参した地図(エアリアマップ、高尾陣馬1993年版)には男坂・女坂とは記載されていません。失敗、どうやら地図が古くなっているようです。地図は数年おきに変えた方がいいようですね。

さてここの分岐は小林さんの記事の通り男坂のほうが踏み跡がしかっりしており、急坂ですがそのまま男坂を進みます。雪は相変わらず締まっており、表面は氷の粒がザラリとしています。ステップの跡、踏み抜きの跡が固まっています。固いステップの跡を忠実にたどれば、歩きやすいし滑ることもなさそうで、先達者に感謝します。持ってきた軽アイゼンもストックも、今のところ出番はなさそうです。急坂だけあって標高はぐんぐん稼げ、ふと振り返ると滝子山から笹子雁ケ腹摺山方面の大展望が飛び込み、びっくりします。気づけばここまで高度を稼いでいる・・、遅々とした歩みと思っていたのですが・・。人間の足とは何てスゴイのでしょう。

途中小林さんも書かれているとおりロープのある急な坂があり、岩角は雪が溶けて嫌な感じ。ゆっくり、慎重に。つづらおれが終れば尾根上にとりつきあとは緩い林間から疎林へと、雪原を登ります。前方の高まりの上には真っ青な空しかなく、どうやらあれが山頂のようです。空は青いというより黒いというべきで凄みすら漂わせています。

ほどなくピークから人のざわめきがこぼれてきて、12:30、ついに到着。山頂には人けのなかった登山道からは想像も出来ないほどの人でざっと30人。皆ストーブでおでんを煮たり鍋焼きうどんをしたり餅を焼いたり、といい匂いで腹がなります。この匂い、昔、スキー場で一滑りした後入った食堂に漂っていた匂いと同じ・・。最近のファッショナブルなスキー場ではなく、古臭い小さなスキー場の食堂に漂っていた匂いです。

湯気と酒でか山頂の人々は皆赤ら顔でえびすさんのようです。笑い声と湯気と、なによりも四周の大迫力の展望。しかし高川山は数年前のガイドブックには隠れた穴場と紹介されていたはずですが・・。ガイドブックに紹介された後の穴場の行く末です。

ともかくまずはビール。登頂おめでとう! 喉を通る快感!全くビールが世にないとこれほど登山ハイキングがブームにはなっていたであろうか・・、と思います。労働の後に待つ最高のご褒美かもしれません。

さて、こちらの山頂での楽しみは業務です。業務といってもアマチュア業務。アマチュア業務とは言わずもながのアマチュア無線。今回は自作の1wの50MHzSSB機にヘンテナ。スイッチを入れるといきなりローカルの声が飛び込んできます。JK1RGAポータブル三浦郡、二子山移動・・?。”あぁやってる、やってる。相変わらず好きだなぁ・・”、 笑みがもれます。JK1RGA・河野さんは同じくローカルの7M1XPR・青木さんとの移動です。二人と交信後、調布市から声が掛かったあとはそれまで。CQは空振りばかりですが今日は山がとても楽しいし、無線はこれでいいか・・、QRTしよう。
(快適な稜線歩き)

昼食はカップ麺とお握り。小林さんが冬は鍋物だ、と書かれていたので急遽出発前にザックに放り込んできたストーブが生きます。皆にまけず私も精一杯良い匂いをまきちらしてカップ麺をすすります。たかがカップ麺ですが美味です。しかしビール欲、無線欲と食欲、そしてなによりもすばらしい達成感を味わえるとは、山とはなんと素晴らしいのでしょう・・。

14:15、下山は富士急の壬生を目指します。下山路は適度に柔らかい雪がなんとも快適。踵から踏み込んで下り坂を気持ちよく歩きます。と踏み跡に軽アイゼンの跡がついているのを発見。そうだ、せっかく私も持ってきたんだし装着するか。四本爪が足につくと、なるほど、確信を持ってステップが踏めるような気がしますが、この緩い雪では意味がありそうにありません。経験の浅い私にはアイゼン装着のタイミング、雪道の歩行法、など分からない事が多くあります。

道はやがて狭いV字型の沢沿いになりますが、降雪時に相当吹き溜まったのか雪が結構深く時々踏み抜いてしまいます。硬そうな場所を選んで大股でザックザック・・。ここをスキーで行けば良い気分だろうなぁ・・。

林道に出てしばらく歩き15:15、民家前にて雪がなくなり、アイゼンとスパッツを外しました。ここからは除雪がされています。しばらくの里道歩きで壬生駅へ。徐々に民家が増え、生活感が濃くなります。山から里への雰囲気がごく自然です。西に傾いた太陽の斜光線が民家の合間から差し込み、そこに数十センチ積もった民家の屋根の雪から解け落ちた滴がきらめき青空に光を放ちます。今日も無事終ったようです。

壬生駅から来し方を振り返りましたが中央高速のガードが思いのほか高くどれが高川山かわかりません。でも見えなくても自分が歩いてきた事は確実で、愛着を持って西の方を眺めます。無事に雪の付いた山を歩き切った、スノートレッキングを楽しんだ、という充足感がわいてきました。何かをやりとげたという心地よさは小躍りしたくなるような気分です。

電車までしばらくあるようです。ザックを下ろし靴紐を緩めます。ベンチに座って独り今日の行程をかみしめます・・。チン・チン・チン、おもちゃのような踏み切りの音がなりはじめどうやら電車が来たようです。「一日ご苦労様」と自分にねぎらいをかけ車中の人となりました。

(追記:帰りの中央線車中で「東京から見える山を歩く」の著者、横山厚夫さんご夫婦をみかけました。)

* * * *

本当はもっと手短に書くつもりだったのですが、書き始めると長々とした山行記となってしまいまして申し訳ありませんでした。この山を歩くにあたっては小林さんの記事がとても参考になり、どうもありがとうございます。

通常は自分の山行記などを「です・ます調」で書く事はないので、今回これを書いているとかなりしっくりしないものがあり、やはり不慣れなものは無理ですね。

小林さんとはどこかの山でお会い出来るかと、楽しみにしております。

それでは又、失礼します。

7M3LKF/図子

(終り)
(コースと標高:初狩駅10:50、たまご石分岐11:30、男坂・女坂分岐11:45、高川山山頂12:30/14:15、田野倉方面分岐14:20、林道出合い15:00、壬生駅15:50、高川山標高975.7m)

アマチュア無線運用の記録

高川山

山梨県都留市・大月市
1998/1/31 移動者:7M3LKF
自作SSBトランシーバ(1W)
釣竿ヘンテナ
3局交信(50MHzSSB)
最長距離交信:神奈川県三浦郡、JK1RGA/1、7M1XPR/1
独立峰なので山頂からはぐるりと眺めが良い。がこの辺りの山の中では決して高い山ではないので電波の飛びは余りよくないように思えた。

ハイキング案内書には必ず載る山なのでハイカーはとても多い。狭い山頂は鈴なりの人になる。こぼれ落ちそうになるほど。

(独立峰の高川山。展望は四周妨げるものがない)



Copyright : 7M3LKF, 1998/2/11