菜畑山から朝日山。秋の道志村

(1997/11/2,山梨県南都留郡)


秋の好日を乾徳山で過ごす予定だった。が起きてみるともう遅い。しまった!寝坊だ。どうも最近緊張感がなくなったのか山行の朝に寝坊することが多い。独り歩きは気楽だが朝に関しては連れと会う約束がある方が緊張感があるだろう・・。念のために考えておいた第二案の山に急遽行き先変更。遠くの山へ行く時はやはり前夜発のほうがいいな、と痛感しながら朝の道志街道を走る。行く手に大室山がとても立派だ。道志の山は歩きづらいという印象がある。人が少なく踏み跡も薄いような・・。さてどんなものか。

(菜畑山へ。雑木と青い空。秋だ。)

和出村バス停前に駐車場があり車を停める。登山口がわかりづらくバス停前の酒屋としばらく上がった民家で路を聞く。丁寧に道を教わる。杉林の中の荒れた沢沿いの登山道を歩く。薄暗く余り良くない道。山腹にあるテレビの中継塔の為に付けられた車道に合流し、そのどんずまりから再び登山道へ。

滑りやすい急な角度の尾根をまっすぐに登っていく。靴のフリクションが悪く気を抜くとズルッと滑ってしまう。どうもこのナイロンのトレッキングシューズは地面のグリップ感がイマイチだ。軽いのはいいのだが。

空は真っ青で葉を落とした雑木林が秋の低山らしさを感じさせる。菜畑の山頂につく。富士山のシルエットが大きい。ここからブドウ岩の頭まではかなり一旦下がり又その分登りかえしていく。これでもか、というほど一度高度を下げるので登りはこれまた苦しい。その先も何度も何度もアップダウンが連続し、これは結構こたえる道だ。いくつ下りて登ったか、いい加減考えるのも嫌になる。励みにしようと稜線沿いにゴールの朝日山はどれかと目をこらすが良く分からない。

岩戸の峰に行き着くあたりから笹藪がかなり濃くなり登山道を覆い被さり難儀する。足元の道は見えない。ザァザァと腰までの笹薮を体で分けながら進む。歩みを止めても風が吹くと笹がなびきザァザァという。ブドウ岩の頭で反対から来た親子3人パーティと行き違ってからは誰にも会わず、笹薮を前にして少しだけ寂しさとまだかな、という不安感が心に浮かんだ。独りの山歩きは、気楽さと、少しの寂しさと、不安さ、その要素が絡み合った雰囲気。それを歩きながらまるでスルメを噛むようにずっと考え、感じ続ける・・。

しばらく藪っぽい道を進むと朝日山山頂に着いてようやくほっとして大切に持ってきた缶ビールを一息に飲み干す。あとは下山だけ、という安心感も手伝ってとても美味い。道志村役場への下山路は植林帯に下りるまでがかなりの角度の滑りやすいまっすぐな道で、乾いた白土が見るからに滑りやすそうだ。手がかり、足がかりの少ないひたむきな急坂は必要以上に足に力が入ってしまう。何個所かロープがあり、植林帯に入り道の角度が緩くなるとようやく息が抜けた。落ちた杉の葉が柔らかいムシロのように地面に覆い被さりフカフカととても歩きやすい。先程までの砂っぽい急坂に比べ何と快適な事か。

林間から下の国道を走る車の音が漂ってきて下界はすぐそこだ。林道に飛び出し、生活感の漂う畑に出た。畑の間をショートカットして農家の軒下を歩いて下りる。この山から里に戻っていく感覚がごく自然で、それが低山の親しみやすさにつながっているのだろう・・。

道志村役場の前から車を停めた和出村バス停まで戻る。国道歩きはたいして距離もないのだが長く感じる。ブドウ岩の頭ですれ違った親子3人組みとここで又すれ違う。「やぁ、疲れましたねぇ」、とお互いごく自然に挨拶がもれる。「山の上で車の鍵を交換しとけば楽だったね!」と言われる。役場の駐車場に車を置いた彼らとは丁度逆周りに歩いていたのでどこかで又すれ違うはずだったのだ。

車に戻り、酒屋でジュースを買い菜畑への道を教えてくれたお礼を言う。菜畑は結構遠足などで村の人達も行く事は多いらしい。稜線で感じた寂しさももう忘れ靴紐を解くと満足感を覚えた。山あいがほの暗くなってくる。闇に包まれた国道を東に戻った。秋の道志村の一日だった。

(終り)

(コースと標高:和出村バス停9:15−テレビ中継基地10:25−菜畑山・アマ無線10:55/12:25−ブドウ岩の頭13:05−岩戸の峰13:40−朝日山・アマ無線14:20/15:00−道志村役場16:00−和出村バス停16:20、菜畑山1283m、朝日山1299m)


アマチュア無線運用の記録

菜畑山

山梨県南都留郡秋山村・道志村、1283m
1997/11/2 移動者:7M3LKF
PICO6+自作
軽量リニア(8W)
釣竿ヘンテナ
16局交信(50MHzSSB)
最長距離交信:石川県羽咋郡、JH9OSX/9
山頂はやや小ぶりだが展望は優れている。小さなパラソル型の東屋があるが屋根が小さいので風雨をしのぐわけにもいかない。雑木ごしに富士山がとても大きく見えた。

無線のロケは東も西もそこそこだろう。9エリア(石川県羽咋郡)が強力に入感度していたがさすがに1Wで呼んでも取ってもらえずに8Wにして交信。

山頂のすぐ下のテレビ中継所設備まで車で来れば(駐車スペースはある)山頂までは約30分。ただし鉄砲登りではあるが。

(枯葉を踏んであがった山頂は秋の素晴らしい気配に満ちていた。)

朝日山

山梨県南都留郡秋山村・道志村、1299m
1997/11/2 移動者:7M3LKF
PICO6(1W)
ワイヤーダイポール
5局交信(50MHzSSB)
最長距離交信: 群馬県沼田市、JR1NNL/1
静かな雑木に囲まれた山頂は眺めにもあまり恵まれていない。ただし空は広く開いているのでアンテナ設営は問題なさそう。

私は時間の都合上ワイヤーダイポールを関東平野方面に向け木の枝に絡ませて設営するという簡単設備で済ませてしまったので余り交信出来なかった。本来は菜畑山と大差無いロケと思う。

(山頂には赤鞍ケ岳の標識があり混乱しやすい)

Copyright:7M3LKF,1998/5/21