大室山 - 梅雨入り前のしっとりとした山 

(1996/6/3、神奈川県足柄上郡)


単独行。日帰り。西丹沢・用木沢出合まで車利用。西丹沢は約1年3ケ月ぶりとなる。

小広い用木沢の河原を歩く。河原歩きは丸い石がごろごろしており道を見失わないように注意する。天気はどんよりとしており、ザーッという沢水の音しか聞こえない。前回ここを歩いたのは檜洞丸からの下山時で、真夏の日、このあたりで沢水をゴクゴク飲んだ事を思い出した。

枝沢に入り短く雷光型に切られた登山道で高度を稼いでいく。笹がちになり犬越路峠に上がる頃から霧が漂いはじめた。稜線に上がったがここから先もまだまだ頂上は遠く標高差もあり、ふーっと一服する。避難小屋は相変わらず堅牢な造りだ。

(緑色の空気の中を歩く。梅雨も間近な山の一日)

歩き始めるが登れど登れど霧の合間からのぞく大室山の山頂はまだ遠い。以前からその大きさと立派さが気になっていた山だけの事はある。石老山から、陣馬山から、道志街道から、どこからも大きさと形の素晴らしさで圧倒的な存在感を示していた山だったのだ。

登るにつれ霧はますます深くなり、粒子の質感が感じられるような気分。そんな中、まるで道標のようにトウゴクミツバツツジの深紫色が霧の中から浮かび上がってきたのは幻想的だ。

更に進み、ようやく登りついた山頂はあの立派な山には不似合いな、あっさりとした、飾り気の無い、樹木に囲まれた静かな広場だった。しばらくアマチュア無線運用をしていたが、余り人気のない山なのだろうか、何人かが訪れた以外はいたって静かなピークである。

大室山から加入道山への尾根道は見事なブナ林とバイケイソウの中を歩く。霧にけぶる新緑は周りの空気までをもペパーミント色に染めるかのような美しさで清涼感すら漂わす。そんな中思い出したように浮かび上がるトウゴクミツバが風景を引き締める。

破風口の鞍部まで高度を下げ、又登りかえしていく。更に歩いた加入道山も静かな樹林の中のピークだった。周囲に人影はなく、霧のみ。下山にかかれば湿った重たい風に吹かれる。この調子なら梅雨入りももう時間の問題だろう。白石峠から少し下りて白石沢の冷たい源水に咽をうるおす。霧は最後までとうとうはれなかったが六月ならではのこんなしっとりとした山行も悪くない。入梅間近な静かな一日。加入道山の避難小屋では単独行者が宿泊準備をしていたが居心地の良さそうな小屋だった。

(終り)


(コースと標高:用木沢出合 8:00−犬越路峠 9:00/9:15−大室山・アマ無線 10:45/14:00−加入道山・アマ無線 15:00/15:35−白石峠 15:45−用木沢出合 17:00、標高:大室山 1587.6m、加入道山 1418.4m)


アマチュア無線運用の記録

大室山 1587.6m神奈川県津久井郡
無線機: PICO6(1w) アンテナ:自作2el八木 27局交信(50MHzSSB) 最長距離交信:福島県伊達郡、JH7ALG/7
(樹木の多い山頂)

西丹沢にそびえる大きな峰。陣馬山あたりから西を見ると富士山の隣に、富士山と一歩もひけをとらない大きさで立派な姿を見せる。山頂は樹林が多く、展望はきかない。大きなアンテナは無理だろう。

電波の飛びは北方面は良いと思うが、東にはどうだろうか?丹沢もここまで来るとかなり奥まった感があり飛ばす工夫が必要かもしれない。

私がこの山で使ったアンテナは2elの八木。ダイポールの後ろにロッドアンテナによる反射エレメントを加えただけのものでどの程度効果があったのかは不明。反射器のロッドアンテナは後日ダイポールに改造してしまったので、もう試しようがない。

加入道山 1418.4m神奈川県足柄上郡
無線機: PICO6(1W) アンテナ:ワイヤーダイポール 2局交信(50MHzSSB) 最長距離交信: 茨城県西茨城郡、JQ1JNY
(霧の漂う静かな山頂)

大室山の西に立つ雑木林の静かな山頂。冬枯れの夕暮れ時などは雰囲気があるに違いない。

電波の飛びは真東に大室山が200m近い標高差で立っているので関東平野には余り良くないと思う。時間の関係でここではわずか2局しか交信していないのでこれ以上は分からない。

山頂の避難小屋はやや古いが立派な造りで是非とも一泊して無線を堪能してみたい。ただし水場はないので下の白石沢で汲んでいかなくてはいけない。


Copyright : 7M3LKF,1998/2/11