スキーで登る山中湖北岸の山 − 大平山 

 (2014/2/23、山梨県南都留郡山中湖村)


二週連続で週末の関東を襲った雪。特に先週の雪は記録的で、山梨県でものきなみ1mを越えたと言います。それであればまだ山にはたくさん雪が残っているだろう、とSさん(JI1TLL局)とともに山スキーでピークにアプローチすることを視野に入れて山中湖北岸の山を目指しました。

目指すは北岸の大平山の稜線、この雪でなくてはスキーで歩く機会も無かろう、とはSさんの提案。例年ならこの季節には富士山の二ツ塚へ山スキーに出かけるのですが、確かにこのような豪雪のチャンスを活かさないと、山中湖周辺の山で山スキーを楽しもうと言う機会はまずないでしょう。遊びと 言えば遊び。でも大げさですが多少なりともアドベンチャー的な要素もあって、一も二も無く賛成です。

ホテルマウント富士の駐車場から稜線を大平山までピストンすることにしますが、ホテルの駐車場にとめて様子見をしていると、向こうから山姿の二人組みが現れました。聞いてみると自分達と同じく大平山を目指したようですが「雪が深くて1mも進めなかった。腰まで潜る」と、撤退途上でした。この二人、確かに足元にはワカンもスノーシューも無く、スパッツにナイロン軽登山靴のみ。これではきつかろう、と想像できます。ただ彼らからは車道を使っての登山口までのもう少し良いアプローチを教えてくれました。それに従 い一旦山中湖まで戻ってもうひとつ東側の林道に入りなおすとおもったより奥まで除雪が進んでおり、そのどんずまりの除雪スペースで車をどう停めようかと思案していたところパジェロが一台上がってきました。底先の私有地ゲートの奥にあるログハウスの主のようです。我々を見て「お、スキーにシール か、楽しそうだね。自分も若いときは良くやったよ」と話し、この除雪スペースへの駐車を快諾してくれました。1m近い雪壁の奥に広がる林を見るとそこに雪に埋もれた指導標が顔を出していました。大平山へのハイキングコースです。

ここでスキーにシールをつけて出発です。Sさんは130mショート板にジルブレッタの山スキー、自分は140cm板に3ピンテレマーク。ハイキングルートはV字型にえぐれた樋状で、雪の吹き溜まりかスキーでもズブズブと潜ります。登り初めから苦戦します。少し歩くと雪に慣れてある程度の 速度で登れるようになります。が、何せ雪が多かったせいかルート上の木々が大きく倒れ掛かっておりこれがしきりに顔や体の行く手をふさぐのには辟 易します。枝で目をつつかれぬように注意します。おっと、毛糸の帽子が枝に持っていかれます。シールの登りで息があれますが、そんな中枝の絡みを強行突破するのはなかなか辛いものです。やや登ると傾斜が緩んで向かって右手の少し広い斜面に逃れます。とこちらは雪が更に深く、スキーとはいえ 頻繁に30cm程度潜ってしまいます。なかなか楽をさせてくれません。

しばらく頑張るとやがて傾斜が緩んでアンテナが疎林から見えました。近づくとNTTドコモの基地局です。背後に富士山が立派です。山中湖は半分が 氷結しています。この基地局のメンテ用の林道が上がってきているようでここからは林道の切り開きを滑ることができます。さきほどの枝薮地獄からは 開放されて一安心。下りは短くその先にまた登りが見えているのでシールを外すことなくそのまま滑り降ります。下りきって林道は北面に逃げているようですが、我々は目の前に広がるカヤトの原に積もった雪の丘を登ることにします。

今後は薮からは開放されましたが、カヤトに積もった雪らしく頻繁にズブズブ踏み抜くようになりました。スキーでこれだとしたらスノーシューも歯が 立たないでしょう。当然入山してからの先行とレースは皆無。我々が大雪後の最初の入山者です。ぱっと見は同じ雪面ですが潜る箇所と潜らない箇所が あります。全く見分けがつきません。

苦労しながら更に高度を稼ぎます。小ピークに登りつきますがこの先は急な壁のような下りです。シールを貼ったままだましだまし滑る下りると目の前に目指す大平山が立っています。ここから標高差は150m程度のようです。先ほどの林道が左手から合流しています。ズブズブの雪はさすがに堪りません。こちらのほうが登りやすいだ ろう、と林道に逃れますがこれが正解でした。こちらも吹き溜まりなどで樋状になってはいますが幅が広く、倒木や枝薮も少ない。思ったよりも距離が 伸びて山頂直下まで登ります。防火帯の切り開きに合流して登りやすそうなので再び稜線を登ります。やや苦労しましたが無事大平山山頂1296mに到着。スキーでの登頂、ご苦労様でした。

東屋が半分雪に埋もれていますがベンチに座ることが出来ます。テルモスに入れた紅茶を飲みながら昼食。風が思ったよりも強くじっとしていると寒く なってきます。430MHzでSさんが千葉県流山市移動の局を呼びます。それなりに距離があるはずですが無事交信。自分は奥の手でしのぎます。

さて下山です。ここから往路を戻るのみ。シールを剥がしてワックスを塗ると流石に板が良く滑ります。しばらくは林道を利用させてもらいましょう。 滑り始めた林道、幅は1.5mもないでしょう。谷スキーで制動をかけながら山スキーはフォールラインに向けて滑ると多少は足が楽です。樋状がきつ くなると今度は横滑りで斜めに下って行きます。グズグズの雪ですがこんな技術で下ることが出来るとは意外でした。林道がやや登りになりますが、今 度は上手い具合に杉の枯葉などが雪面に散乱しており上手い具合にブレーキングがかかりシール貼らずとも登ることができます。なんとかNTTの基地 局にもどりホッと一安心。さてここからは先ほどの密薮を下っていかなくてはいけません。雪が溶けてきたのか頻繁にスキーが潜ります。横滑りと片足 制動、それにボーゲンを交え下っていきますが頻繁に現れる枝の前に頻繁に停止します。薮くぐりに疲れ果てた頃ようや
く入山地点に戻りました。

雪の大平山に無事スキーで登頂。下りも何とか戻って来れました。スキーで山中湖北岸の山に登頂した記録は多分無いのではないでしょうか。もちろ 快適な山スキーではなく、下りも回転を一回もしませんでした。これを山スキーと言うのか?それにこんな山にスキーで登ろうと言う物好きも居ないでしょう。それでも充実感に溢れた今日の山。大雪を逆手にした、旬な登山にとても痛快な気分を覚えました。企画していただいたSさん、ありがとう ございました。

(コース: 大平山入り口 09:20−1178m峰10:08-大平山11:40/12:40−大平山登山口14:00)

(登り始めは薮が煩い悪雪の樋状小径だった) (富士山をバックにカヤトの雪原を登る) (大平山直下の切り開き) (雪没した大平山山頂標識と氷結した山中湖)
(荒れた林道は横滑りで誤魔化した) (林道の除雪終端地に駐車できた) (GPSによるルート図。カシミール3D使用)

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