寒風に吹かれた赤面山スキー行 

 (2014/3/22 福島県西白河郡西郷村)


(今回のルート図。GPSデータをカシミール3Dにて付属の地形図上に展開)

バックカントリースキーのガイドブックの紹介ルートを参考にして、那須高原の赤面山を目指した。赤面山には廃業したスキー場がありその廃ゲレンデをシールでつめてトップから山頂を目指すというのがルート。事前にネットで調べるがそこそこポピュラーなコースのようだ。

このあたりの山スキーとしては、もう10年近く前に、羽鳥湖スキー場のトップから鎌房山の山頂を往復したことがある程度でまだまだ知らないエリア。那須一帯は冬の晴天率は高いのだが風が強い。そんな印象があった。果たしてネットで調べた事前情報も風が強烈だった言う記載も多い。さてどんなものか。

いつもどおりSさん(JI1TLL局)と早朝横浜を出発し車で那須へ。下界はずっと晴れた道だが東北道を下りて那須に近づくと 終始雪のちらつく天気へ。北面に睨む那須の山々は真っ黒い雲の中。うーん。

ガラガラのマウントジーンズスキー場をすぎて元は有料道路だったと言う那須甲子道路をすすむ。道が栃木・福島県境の沢を跨ぐとすぐにくだんの廃スキー場。路肩の駐車が2台。いずれもバックカントリースキーヤーだろう。ともかくスキーにシールを貼って登り始める。この廃スキー場、赤面山スキー場から白河高原スキー場へと名前は変えたようだがいずれにせよ廃業久しいのだろう、もう廃ゲレンデの中には勝手気ままな樹林がかなり成長しておりコンディションも当然良くない。リフト2本分を登りきるとそこがゲレンデトップで、ここからは地形図とにらめっこしてのルート取りとなる。雰囲気の良いブナ林がしばらく続くがこれを抜けるとはや潅木帯へ。そそこから猛烈な風の洗礼に遭遇する。

だましだまし登るが、まったく猛烈な風に立つことが出来ない。山頂直下の斜面は完全に凍 り付いておりシールはもちろんスキーのエッジも立たない。と前方から下山してくる単独行、なんとスキーを履かずにザックにつけてる。そんな彼の足元には12本爪アイゼン。「ここはシールでは無理、下山も安全を見るとこれしかない」ということ。地元の山で何度もここには登っている方とのことだがなるほど12本爪アイゼンがないと厳しい山だったのか。腰まで程度の高さになった潅木帯の枝には親指程度の太さの霧氷が凍りつきガラス細工の枝のようだ。時折指すサングラス越しの黒い太陽の光に氷の枝々が不気味な光を反射する。気分が負けそうだ。

Sさんはシールが不調なのか剥がれて困ったようでいつしかシートラーゲンのツボで一歩一歩先行していく。自分もここはひたすらこらえるしかない。確かにここにアイゼンの歯が食い込んだらいかにも快適に登れるだろう。が、こちらは押し流すように正対する風に身を縮めて登るだけ。気を抜くと風で押し戻されて転等、と凍りついた斜面を数メートルは転がるように下がってしまった。たまらない。必至に登ってようやく山頂の一角。一段低くなった風の通り道を避けて一休みしていると、Sさんのザックについたトランシーバが栃木茨城方面の低山に移動していた仲間(T氏。JH1QZW局)のCQを捕らえた。これは渡りに船とばかりこれに二人で応答。ヤマランポイントはOKだ。Tさんありがとうございました。

スキーとザックをデポして山頂まではそこから20mほど。この20mは自分には経験したことのない世界だった。ともかく風が強くて歩けない。風に正対して斜めに歩くしかない。顔は凍りつき、さらに意識が遠のく寒さと風。山頂標識はともかく立っていられるのが不思議なほどのとんでもない風。これが那須の冬の風か。海老の尻尾の山頂標識でなんとか証拠写真だけ取って下山。かじかむ手でスキーのシールを剥がすが指の感覚がない。慌ててズボンの下着の中に手を突っ込む。股間を握ると指の感覚がしばらくして戻ってきた。ここが一番温かい。スキーを履いて氷の斜面を滑るのは良い気持ちはしない。潅木の中を注意深く超低速スラロームしながら下る。

途中のブナ林まで戻ってホッと一息。ここで昼食を、と持参していたツェルトを張ると風はシャットダウンされ時折指す陽射しに中は温まってきた。 テルモスのお茶に一息つく。山スキーの休憩にツェルトを欠かすことは出来ない。

ここからの廃スキー場の滑走は自分にはつまらないものだった。なにせ何とか悪雪の中テレマークターンをしようとして大転倒が数回。最後はややよれよれで下りついた。

正味登り2時間半弱、 下りは1時間半程度のルート、那須湯元温泉で一風呂浴びる。温泉の脱衣場の鏡で改めて自分の顔を見て驚いた。頬がどす黒い。ネットの仲間の情報によるとこれは顔の表皮が凍結して死んだものとのらしく、毛細血管の多い頬にはありがちな軽い凍傷の一種らしい。いかにも寒風に苦しめられた一日だった。

帰りの東北道は栃木ICから羽生ICの間でいつもの渋滞。時間もかかりそうと途中で諦めて佐野でおりてラーメンを食べて帰った。帰宅は 22:30分。 走行距離も570kmと、いささかくたびれる山であった。

(山頂直下の潅木帯からはエッジの立たない
氷化した斜面が続く)
(風が強く立っていられない山頂。
海老の尻尾が全てを物語る)
(樹林帯に戻ってきてツェルトを張って
強風からも開放されほっと一安心)

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