紅葉せまる苗場山へ 

(2013年9月22日、新潟県中魚沼郡津南町、南魚沼郡湯沢町)


秋の3連休の中日、好日の予報でしたので上越国境の苗場山を目指します。苗場山は群馬の山に登ると長い背中ですぐにそれとわかる山でいつかの登頂を、と思っていましたが、反面スキー場の中を登る、というメインの登山ルートに余り興味が持てずにこれまで先送りでした。

(神楽峰の鞍部付近から見あげる苗場山)

横浜の自宅を朝3時に出てガラガラの都内を抜けこれまたガラガラの関越道を通り越後湯沢経由で朝6時40分には登山口の和田小屋の下の駐車場に着 くことが出来ました。自宅から230km程度なので空いていればあっという間です。

6:55、歩き始めます。駐車場(ただの広場)から和田小屋までは約20分、かぐらみつまたスキー場のゲレンデの中を上ります。和田小屋宿泊客は 小屋まで車で上がれるとのことです。ここからゲレンデの中を歩くのか、と思いきや登山道は右横の樹林帯の中に伸びています。これが樹林帯の中ゴロタの滑りやすい登山道で歩きづらい。ただ平成22年度、23年度、24年度、そして今年と集中的に登山道の改修をしたのか設置年を示す真新しい年号バッチをつ けた木道と階段も随所についています。登山道の階段などはえてして歩幅や段差が足にあわず決して歩きやすいものではないのですが、今回はさすがにゴロタ石よりはずっと歩きやすく感じます。

登山道はずっと樹林の中で、ゲレンデのリフト構築物が一切見えない。お陰でゲレンデの開かれた山を歩くという感じがしなくて幸いです。(一箇所だ けリフト塔が見える箇所がありました)下 の芝、中の芝、上の芝、とわかりやすい木で整備された休憩箇所をこなしていきます。中の芝手前でダケカンバの林となりじきに森林限界を抜けました。潅木に草紅葉が混じるようになりました。もう紅葉が早くもせまっています。さきほどからしきりにヘリコプターが飛来しますが苗場山山頂の山小屋への資材搬入でしょうか。上の芝を抜けるとはやくも神楽峰の一角のようで道はほぼ水平移動となりました。もう10年近く前、テレマークスキーでゲレンデトップから神楽峰までは登って歩いたのでなんとなく土地勘がある事を期待しました がまったくわかりません。逆に言うとこれだけの潅木も埋めてしまうほどこのあたりの積雪は凄いのでしょう。

神楽峰で初めて前方に苗場山を望みました。とても立派な山です。以前のスキー山行では曇天だったので苗場山は見えませんでした。しかし 地図を見て分かっていたもの苗場山まではここから鞍部までがくんと下がってから一気に突き上げるのですね・・。いささか気がめいりますがとにかく 下がりきるとまさに苗場山が絶壁のように立っています。とりつくしまもなさそうですが、あにはやからんや道はよく整備されぐいぐい高度が上がります。一箇所大きな一枚岩を登るのにザイルがブラさがっていたのでそれを用いました。その岩を越すとすぐに広大な山頂湿原の一角に躍り出ました。天気がよかったので湿原の広がりが良く分かりますが、果てが見えぬほどの広さです。。

再び下からヘリが飛んできます。ホバリングに移るとザーッと高層湿原の草と水面が波立ちます。吊り上げていたのはなんと登山道改修で取り外した資材でした。真新しいこの木道はこうして定期的に改修されている、そんなことがわかります。

山頂三角点広場の手前のベンチでアマチュア無線。50メガの運用です。ピコ6に釣竿ダイポールと言うミニマム装備、CQをだしますが1エリアからは声がかかりません。苗場山は谷川岳や平標山などとは違いやや関東平野から奥まっている、その影響もあるのか、いややはり少し非力の設備なのか。せめてヘンテナは必須か。しばらく粘るとなんと聞きなれた声が無線機から飛び込んできました。新潟市のJA0LTH局です。LTH局・Sさんとは先月夏のハムフェアで「山と無線」ブースでお会いしてビール片手に山と無線談義したばかりです。Sさんのコールに思わず笑みが漏れました。Sさんにとってはここは地元の山、苗場山には秋山村がわから2度ほど登っているとのことでした。

山頂には確か山小屋が2軒あるはずと思っていましたが、どうやら一軒は廃業したようで建物は山頂から3分ほど離れたところに一軒のみでした。中を覗くと食事つき8500円とありましたので北アルプス並みでしょう。ここでトイレを借ります。(100円。水洗バイオトイレ。紙は流さずゴミ捨てに入れる仕組み) 昔ながらの大部屋がありなかなか良い雰囲気の小屋でした。

湿原を少し散歩します。天気がやや崩れてきたのか、ガスが下から上がってきました。まるで生き物のようなガスの流れの速さ。黄色の混じる緑の湿原に乳白色のヴェールがかかります。はっと思う間もなく池塘が薄い霧に呑まれていきます。何もかもが見えるよりも、却ってこの位のほうが高層湿原の美しさが際立つように感じます。

気分の良い場所で長居したいところですが帰りも長いのです。踏ん切りをつけて下山の途に。神楽峰との鞍部の上り返しはさほどおもったよりも大変ではなかったですが、そこから先、樹林帯の下りはゴロタ の滑りやすい道に難儀しました。もういい加減疲れきった頃和田小屋に出てほっとします。

登りは朝6時55分出発で苗場山到着が10:25分、戻りは12時に苗場山を出て15時40分に和田小屋下の駐車場。なんと下りの所要時間のほうが長かったと言うルートでした。行きは結構気合が入っていたので休憩もそこそこに飛ばしましたが下りはへろへろで休憩も何度もとったこともあります。 標高差も駐車場から神楽峰まで807m、神楽峰・苗場山の鞍部から苗場山まで271m、そして鞍部から神楽峰までの登り返しが155m、合計1230mあり、やはり疲れました。

帰りの関越道はお約束の大渋滞。前橋までの小規模渋滞に続き上里からは延々とつながります。たまらず途中のPAで仮眠をしてから少し収まった渋滞の中、帰着は23時。運転には疲れましたが紅葉せまる苗場山を満喫した一日でした。

(登るにつれ草紅葉となった) (苗場山山頂は広大な高層湿原が広がる) (山頂標識と三角点はシラビソの切り開きの中)

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