残雪縫って富士二ツ塚への山スキー 

 (2013年3月10日、静岡県御殿場市)


昨日に予定していた福島・の安達太良山の山スキー行、東北地方低気圧で大荒れ、という天気予報に恐れをなしてとりやめ。その転戦先を上信越にもとめましたが天気予報はいずれも午後から雪ないし雨と冴えません。それでもどこかに行かないと気がすまない。となるとここは手近な富士山の衛星ピークである二ツ塚へ。ここはもう3回目の山にはなりますが何と言ってもここ横浜から一番近いバックカントリースキーエリアです。いつものSさん(JI1TLL局)は今回もご同行いただるとのこと、心強い山行です。

2年前にSさんとこのピークをスキーで登ったのは3月末だったのですが、今日はそのときより2週間以上早い山。ですがこの数日の暖かさですっかり雪も解け、駐車地点の太郎坊トンネル(1270m)の先の小広場にも全く雪がなく拍子抜け。ただ下界から見た限りの二ツ塚にはしっかり雪がつ いていたので、どこかで雪が現れるだろう、と、しばらくはザックにスキー板をくくりつけての登高となります。8:50、太郎坊トンネルを抜けゲー ト封鎖された御殿場登山口への車道を歩き始めます。すぐに林道を外れ林の中を切り分けにルートを取ります。久々のスキーをサイドにつけたザックの重さが肩に応えて早くも息が上がります。樹林帯の中を300m程度登るとようやく雪が現れたのでここぞとばかりスキーを下してシール登高開始。ただ雪は頻繁に切れており場所を選びながら登っていきます。

樹林帯を抜けると御殿場登山口の駐車場が右手に出てきますが過去2回と異なりここにもまったく雪がありません。前回はこの駐車場をスキーで横切り 大石茶屋を目指すコースで登ったのですが、今回は雪がなく苦戦しそうなので、辛うじて雪が続いていそうな左側の沢筋に登りをとります。このルートは初めてで何が出てくるか全く分かりません。

火山礫帯をスキーを脱いで横切り淡雪状の残雪の上で再びスキーを履きます。行く手に地形図上に標高表記のある1547mピークの尾根が出現しま す。この尾根の左右のどちらを登るかしばし悩みますが雪が多そう向かって左手の沢に進みます。すぐにすばしっこい水の流れが残雪の下に見え隠れします。雪崩など絶対おきそうもない傾斜の緩い沢なのですが何故かデブリがひどい。スキーの足場選びに悩みながらそれでも沢筋を登っていくと前方に目指す二ツ塚(妹山)が高い。未だあります。

やがて雪がつながっている場所があり右岸に上手く登れました。ここからは林の中の登高。130cmのショートスキーを操るSさんは板の短さもありこのようなうるさいブッシュには強く、的確なルートで登っていきます。雪は豊富になりましたが腐った雪でスキーがずぶずぶともぐります。帰りに これを滑るとなると自分の腕前(足前?)では難しそうです。気が重いですがまずは登るしかない。やがて樹林帯を抜け出して右手から一昨年に取った大石茶屋から上がってくるルートと合流します。案の定こちらのルートは雪がまだら。我々が今回取ったルートが正解のようです。

もうここまでくると目指す二ツ塚は目の前です。山名で二ツ塚というだけあり兄山(1929m)・妹山(1804m)のツインピークなのですが、いささか疲れてきたし兄山への登りは雪がついていません。一昨年と同様に妹山のみに登頂することになりました。

兄山と妹山の鞍部へ向けて最後のシール登高で踏ん張ります。息が荒い。ようやく雪の剥げた場所に登り付きスキーをデポ。妹山の山頂までは火山礫の中を上ります。この鞍部は風が無茶苦茶強くて歩いているだけなのに体が流されそうです。妹山山頂には鳥居とブロック塀があるので風が防げます。昼食のパンをかじりながらハンディ機を取り出して430MHzメインで「山ラン(アマチュア無線の山岳移動ランキング同好会)メンバー」をコールすると、一発で「JA1JCA」と強い変調が飛び込んできました。言うまでもない「山ラン」主催局のTさんです。全く期待していなかったメインでのメンバー向けのコールに対してのTさんの一発応答に思わずSさんと「えーっ」と声を出します。ここ御殿場市から東大宮と59-59。海抜1800m強とはいえこちらは5Wハンディ機にロッドアンテナホイップです。TさんのFBな設備にも救われているのでしょう。

Tさんとも交信できたし言うことはありません。あとは下りるだけです。シールを剥がしワックス塗り。この腐り雪で滑れるのか。滑り出すと板が潜るし殆どコントロール不能。それでもシュテムテレマークで強引にまわしますが後ろ足がとられてバランスを崩します。更に数ターン。なかなか上手く いきません。でも良いのです。山スキーは泥臭く下りれば、と自分を慰め、テレマークターン実践はこれで諦めて、ストック制動、キックターン主体の滑降に切り替えます。

登りに使った沢ルートで下りますが、デブリの多い沢の中を避けるべくできるだけ右岸のブッシュの中を滑るようにします。このあたりから昨日のものか、やや崩れた先行者のシュプールが林の中に伸びておりルート取りの参考にします。ところどころかなり密な林で目をはじかれぬよう両手でボクサーのように顔をガードしながら滑ります。しばらく滑るとガスが急に沸いてきてまだ13時過ぎと言うのにもう16時くらいの明るさになってきます。ブ ナに雑木の混じった密な林の中、急に心細くなり追われるように滑りますがなにせ雪が腐っており苦戦します。急斜面で横滑りが効けば良いのですがスキーがぐずぐず潜るだけで、階段下降しかできません。一旦御殿場登山口付近まで滑り降ります。このまま往路を辿っても良いのですが雪が少ないため、このまま右手に続く林の中に、先行者の古いシュプールを追います。

緩い林の中心地よい滑走が楽しめます。末端で5m程度の急な崖となりスキーを脱いで眼下の沢に下ります。小さな水流のあるV字谷から再びスキーを 滑らせます。もう雪はまだらで、縫うようにすすむと先行していたSさんが、「車道が見えます」。14:00分、無事下山。

大斜面を豪快に滑走するという山スキーの醍醐味とは全く違った、残雪を縫っての登高、悪雪に足をとられての滑降、ブッシュ帯の中の枝を払いながらの滑走、全般に求められるルートファインディング、と、これらも山スキーのもう一つの側面ですね、とSさんと語りながら充実した一日の山を終えました。

下山後には温泉。御殿場市営温泉会館(500円)がこのあたりでは一押しでしょう。山の汗を流してからさっぱりしてと帰浜。Sさん今日一日ありがとうございました。

(上り始めて10分、ようやく雪が現れた) (火山礫の中雪がまだらだった) (デブリの沢をつめる) (二ツ塚(妹山)山頂には雪がなかった)
(天気が急変しガスが流れてきた) (ブッシュ帯は枝を払い腰をかがめての滑走) (無事戻ってきて一安心) (ルート図。GPDトラックデータをカシミール3D地図に展開)

スキー装備 : Dynastar Agyl6 162cm + ロッテフェラー 赤チリ(20mmカーブ)、SCARPA T3


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