上州・鹿俣山玉原高原スキーワンデリング 

(2012年4月15日、群馬県沼田市)


今日は山スキー仲間のSさん(JI1TLL局)と日帰りで群馬・玉原高原の鹿俣山までスキー山行を楽しんできました。

鹿俣山は上州武尊連峰の一角のピークですが玉原スキー場のリフトのトップからわずかの距離です。山頂はもちろん山行の目的でもありますがむしろ今回のメインは山頂から西にかけて広がる広大なブナの林の中を滑ることにあります。ルートファインディングが試されるルートでもあり、地形図・コンパス・高度計が活躍します。地形図にはあらかじめ磁北線を書き入れます。

早朝の横浜からは渋滞もなくノンストップで2時間強で沼田に到着。玉原高原へ高度を上げていきます。登りついたスキー場はまだたくさんのスキーヤー・ボーダーが訪れています。ゲレンデスキーには何の関心もない我々ですが、とはいえやはりそこは文明の利器、リフト2基を利用させてもらいます。(2本で800円) ゲレンデトップから 鹿俣山山頂まではシール山行です。コースの脇でシールを貼ります。

コースを外れるとそこはブナの林です。その中をシールを快適に利かせて上っていきます。あたり一面、古びたツボ足が一筋。スキーのトレースはありません。しばらく登ると目の前に急な壁が出現。その上が山頂のようです。この急な壁、北面に回りこんで見ますが木々の密度がやや濃くて斜面の様子が見通せません。思案しますがここは古びたツボ足に従い壁を直によじることにします。わずか数メートルですがスキーは無理。板を脱ぎザックにつけてキックステップで登ります。山頂は雪庇の発達が凄まじく怖 くて風下方向に立つことができません。どこまでが山頂でどこからが雪庇なのか。Sさんが雪面から顔を出している木の枝の密度を見て、この先は雪庇でしょう、と注意を促してくれました。

山頂でアマチュア無線・50MHz開局。FT690mkII単体に釣竿デルタループアンテナでのQRV。Sさんが懸命に山梨方面に移動していると言う「山と無線」の仲間を探してVFOをまわしますが見つかりません。諦めてCQに変更、11時過ぎにはQRTとします。

誰もいなかった山頂にはいつしか山スキーとテレマークの混合チーム4人組。太い板にヘルメットと、滑り重視派でしょうか。また別パーティで3人組のテレマーカー。こちらはウロコ細板のライトツーリング派のようです。さらにはスノーシューではなくワカンをはいた2人組が登ってくるなど、アプローチが短いせいかなかなか手ごろな山頂のようです。

下山はブナの木を縫うように滑り降ります。先ほどの壁はエッジを効かせた斜滑降とキックターンでしのぎます。壁の下、林の中はザラメ雪で重いですが、問題ないレベルです。一旦ルートファインディングを容易にするためにゲレンデを滑走しましたが地形図を読んで標高1450m付近からゲレンデを西へそれます。ここからが山頂西側一帯の広大なブナ林へのワンデリングの始まりです。

斜度は思ったよりもなくほぼ平坦と言っても差し支えありません。このブナの林、北面の藤原湖方面にさえ下りなければどう滑っても玉原ダムの周回道路に滑り下りるので一向に構わないのですが、ここはルートファインディングの勉強もかねてまずは地形図上の1323mピークを目指します。地形図の磁北線とコンパスをあわせ進行方向を確認します。ブナの林は何処を向いても似たような風景なので方向感覚を失いやすい。とにかく地図とコンパス。間違って北面の急斜面には進まないように。このルートファインディング、実に楽しい。二人で時折地形図をチェックしながら現在地と進むべき進路について協議します。ただでさえ癒されるブナ林のなか、地図をみながらパズル気分を味わいます。古びたスキーのトレースが一条。ただこれは自分達とは進路が違うようでやがて南に向けて分かれていきました。ブナの林は幹の周りの融雪が早く深い穴になって落ち込んでいます。うっかり余所見をしていたら穴に落ちそうになります。危ない、危ない。

やがて前方に想像していたとおり緩やかな高まりを見つけました。あれが1323m点でしょう。少し登っていきますとそこにはスノーシューの2人組。下から登ってきたら分からないうちにここに来た、といいます。現在地を地図で示して彼らと別れます。

彼らがつけたトレースを南に外して少し進みます。斜度もなく広大なブナの林です。このあたりがブナ平でしょうか。ここでスキーを脱いで昼食とします。ごろりと雪原に横たわると雪の冷たさが背中に伝わります。偏光サングラスを通じてみる空は青いと言うより黒く、ブナの大木が自分に向かって倒れこんできそうです。コッヘルでいれたコーヒーの美味しかったこと。今日は天候にも恵まれてルートファインディングの困難さもなくこれまで実に快適です。

ここからは1291m地点に向けて登り返すことも出来ますが、もう今日はこんなもんでいいでしょう、と意見が一致し谷筋に沿ってスキーを進めます。途中で溶け出した沢の流れに何度かルートを選びながら玉原ダムの周回路に降り立ちました。

帰路、川場の温泉で汗を流してから関越道にのりますが渋滞です。結局下道(17号)で帰ってきました。帰りの車の運転は疲れましたが、ブナ林の中のツアースキーは本当に都会生活の疲れを 癒してくれた、そんな会心の山でした。

(雪面に木々が絵を描いていた) (雪が割れ沢が顔を出していた) (ブナの模様は見飽きない) (今回のルート図。GPSデータ+カシミール3D利用)

(戻る) (ホーム)