再び富士山・双子山へスキー行 (二ツ塚) 

 (2011/3/25 静岡県御殿場市 )


Sさん(JI1TLL局)と上越は玉原山・尼ケ禿山への山スキーを計画していたが、予報によると天候が良くない。急遽行き先を晴天が期待できる関東近郊に変更。幸い数日前に降雪があったので富士山・双子山なら大丈夫だろうとハンドルを御殿場へ向ける。

太郎坊トンネルに駐車。ゴウゴウと風の音がする。見上げる樹林の枝も大きく揺れている。天気は良いのだが。アレー、今日はきついかな。ともあれまずは、行ってみますか。

とっつきの樹林帯の登り。この前日の数日間で降雪があったためか周辺は3週間前と変わらぬ雪の様子だ。Sさんは山スキー歴を感じさせる使い込まれた山スキー板で、自分はステップソールのテレマーク板で。シールがよく効き樹林の中は静かで快適だ。が、それを抜けると遮蔽物がなく、富士山山頂から吹いてくる猛烈な風に遭遇した。天気は申し分ないのだが、この風はたまらない。あまつさえその風と富士山山頂が作り出した雲から雪が吹きつけはじめ、ブリザードの様子。風と雪の暴力はすさまじい。あたり一面快晴なのに進行方向である富士山山頂から自分たちのいる場所のみが吹雪いているという状況下で、たまらず富士急小屋に退避。閉鎖されている小屋の影で様子見。

ここでSさんが430MHzFMで山ランメンバーをコールすると即座に三鷹のGさんからコールバック。山での仲間との交信は嬉しいものだ。自分たちの苦戦を伝えるとGさんはその場で天気図を調べてくれる。

風とブリザードはまだまだ強く、このままだったら山頂はやめようか、と話していると、そんな中、山慣れたオジサンに引率されたスノーシューの熟女集団が到着。彼らはがんばって先を行くようだ。我々も更に10分ほど粘ってからこの上の大石茶屋まで行ってみよう、と再び歩き出す。ツララの垂れた大石茶屋の軒先で再び停滞。とあれほど凄まじかった風はいつしか収まっているではないか。『よし!』とばかり再び上り始める。

富士山頂どころか宝永山まですっかり雲に隠れているのだが、風も雪もなく、快適に高度を稼いでゆく。双子山(二ツ塚)は1929mの兄山と1804mの妹山の二峰から成り、今月はじめに登ったのは高いほうの兄山。今回は妹山を目指そうと、兄山と妹山の鞍部に向けシール登高を続けていくと先ほどの熟女集団に追いついた。鞍部から妹山にわずかに登ると、風が強い為か雪付きが悪くブッシュが出始める。仕方なくスキーをデポして妹山山頂到着。

すばらしい山岳展望が待っていた。山中湖の奥に杓子山、石割山。やや右に御正体山、そして高指山から菰釣山に至る相甲国境稜線が視界の奥へ続いている。三国山から不老山に至る稜線の置くには丹沢の主峰群が屏風のように並んでいる。更に右手に目を向けていくと手前の愛鷹連峰の奥には伊豆半島が連なっており、遠笠山、万二郎・万三郎岳が横並びになっている。なによりもその天城連峰の左右には相模湾と遠州灘が広がっており、あぁ、地図どおり。まるで鳥になって日本地図を見ているような、そんな気がする。

(双子山を前方に見て登る) (シュカブラにスキーを進める) (妹山の山頂から山中湖を望む) (妹山から。兄山、宝永山、富士山頂)

雪は間違えなく山の見栄えを数段アップしてくれるのだろうか、すばらしい山岳展望に二人とも大満足だ。熟女集団も同様なのだろうか、富士を背景に子供のようなポーズを取って写真を撮り合っている。山はいつでもどんな年齢の人でも童心に返してくれるのだろう。

ここで昼食。熟女集団からミカンの甘砂糖漬けなどのおすそ分けをもらう。再びGさんと430でつながり、あとは下山のみだ。

鞍部に戻り板からシールをはがしワックスを塗る。さぁ期待の一瞬。ヨロコビの始まりだ。鞍部は吹き溜まりなのか雪が深くそれなりに進み始めるが大斜面に出るとやはり簡単には済ませてくれない。深雪に板をとられてしまう。踏み込むとあたり一面が割れていくシュカブラ斜面では板をずらす事が出来ず。アイスバーンではエッジも立たず・・・。テレマークターンは相変わらず上手くいかないし、そもそも何にしても回せない。

何度も雪だるまになりながらも先を行く。前回渡るのに苦労した宝永山からの「大崩れ」はそれに気づくこともなく通り過ぎる。滑走箇所がいくらかずれているだけなのだろう。その先も緩斜面でゆっくりとターンしていく。が時折引っかかり転倒する。なんとか大石茶屋へ。「春の山スキーは悪雪の教科書のようなもんです」とSさん。本当に、そうですね!

富士急小屋から先は前回同様十分積雪のある林道をたどっていく。このあたりまでくると雪は「おとなしく」なり、リラックスして車に戻る。ここでおんぼろのカローラIIに乗ったアメリカ人が車を停めて入山準備をしている。話しかけてみると横須賀の基地勤務とのことです。これから富士山頂を目指すとのこと。テントは持っておらずどこかでシュラフに包まって寝るとの由。70リットルを超えているような巨大なザックの両端にテレマーク板を刺して、元気に登っていく姿を二人してみて、うーん、やはりアメリカ人は違うなー、と話す。

帰路御殿場市印野の胎内温泉に立ち寄り、さっぱりしてから横浜に戻る。

今回のスキー行では、「待つ」事の重要さを学んだような気がする。一人だったら気がせいて悪条件下でも登っていったかもしれない。今回はしばらく小屋で停滞して風雪の収まった良いコンディションを見て山頂へ上ることが出来た。山もスキーも、人と歩くと学ぶことが多い。Sさん、山スキーにおつきあい頂き、色々教えていただき、ありがとうございました。

(今回のルート図。ハンディGPSでのログをカシミール3D付属の5万分の1図に展開したもの。
双子山(二ツ塚は兄山1929m、妹山1804mから成る。)

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