清涼の山・展望の山・蓼科山へ

(2002/6/9、長野県北佐久郡立科町)


(蓼科山山頂から八ケ岳主峰を望む。右手には南ア北部のピークも勢揃い。)

ここ数日間の横浜は入梅もせずに真夏のような暑さが数日続いており、こう暑いのはたまらないと涼を求めて少し高い山に行こうと考えた。アプローチが容易で高い山は無いだろうか?たまたま前日にJITLL須崎さんとEスポの谷間を縫ってラグチューをし、日光白根の話をしたのだが、確かに日光白根あたりは標高もあり如何にも涼しそうで食指が動いた。がやはり横浜からは気楽にいける距離ではない。沼田までも遠いし、その先もまだまだある。

結局八ケ岳の編笠山へ行こうと考え、深夜に家を出る。標高もあるし、まぁ無線も楽しめよう。もっともEスポが出れば北巨摩郡でも相手にはされないだろうが。ガラ空きの中央道を走り、笹子トンネルを越えて釈迦堂PAで仮眠をする。好天を期待して眠りに着く。AM2:00だ。眠い。

やや寝坊してAM6:30、出発する。毎度の事ながら朝の甲府盆地に眺めは胸踊るものがある。北岳も素敵だし、甲斐駒の驚愕すべき量感も素晴らしい。また、そんなジャイアンツばかりではなく特徴のある烏帽子の曲岳やその右に盛り上がる黒富士、また茅ケ岳・金ケ岳なども自分で踏んだ山頂だけあってひときわ懐かしい。

さて編笠山がここで目の前に登高意欲をそそるが不意にもっと有名な山に登りたいという気持ちが突発的に盛り上がってきた。蓼科山だ。せっかくここまで来たし編笠もいいけど年に一度くらいは100名山に登っても良いのではないか、と思った。そのまま予定の小淵沢ICを通り過ぎて諏訪IC経由でビーナスラインへ進む。われながらいい加減な計画にあきれるが、これも独りの気楽さだろう。

シーズン前の女神湖・白樺牧場は閑散としており、スキー場の音楽のみがうら寂しく流れている。さて蓼科山は立科町のピークとは分かっていたが、何郡かわからない。暇そうなコンビニ兼土産屋に立ち寄り住所を聞くと北佐久郡という。そうか、小県郡あたりかと思っていた。聞いて正解だ。店内のカップラーメンもスナック菓子も割れんばかりに膨れ上がっている。なるほど既に海抜1500mはあるのだ。気圧が薄いのだろう。

夢の平林道を林道を進み7合目駐車場で車をとめる。目の前に蓼科山が素晴らしい円錐形で聳えている。谷筋に一条の残雪がある。2530mのピークだ。車を出ると身震いするような凛とした空気で、半袖ではきつそうだ。鳥居をくぐり如何にも北八ケ岳っぽい黒い樹林帯の中に足を踏み入れた。シンとして冷気が強いが歩き始めると体が中から火照ってきて切れ、冷味あふれる空気が心地よい。黒木の笹が混じる道を辿ると徐々に登山道の石が大きくなりやがて急な一本調子の登りとなった。3人連れのパーティを途中で追い越すが更に5,6人連れのパーティもいる。さすがに100名山、人は多い。振り返ると北アルプスが純白の屏風のように右から左へづらりと並んでいる。登ったことが無い山々なので山名が分からない。唯一、槍ケ岳がわかる。

再び登る。上空を走る風が強いのが分かる。木々の上部が吹流しのように大きく揺れる。風音が近くなってくるとやがて空が広がりぽっかりと開けて蓼科山荘があり将軍平だ。まさに蓼科山が倒れ掛かってくるような迫力で目の上に迫っている。よくみると累々とした岩屑にへばりつく蟻のように登山者が登っている。あれをいくのだ。

ザックを背負いなおし、林に分け入るとすぐに岩がゴロゴロする急な斜面となった。足場を選びながらぐいぐい標高を稼いでいく。と見る間に将軍平が眼下に小さくなっていく。爽快この上ない。樹相は潅木帯となりそれもまばらで、はや岩だけの世界となった。と同時に先ほどまで音が強かった西からの風が猛烈に襲い掛かってくる。まっすぐに歩けないほどの風で、手足で踏ん張りながら登っていく。再び振り返るともはや遮るもののない浅間山から志賀方面までの展望がひたすらわが手にある。これはすごい。

傾斜が緩みやや回り込んで山頂の山小屋があった。小屋の風力計が狂ったように唸りを上げて回っている。風は吹くというよりも叩き付けるようで、それに当たるとたまったものではない。なんとか三角点までたどり着き写真をとり岩陰に下りて50MHzの運用をする。目の前には北八の漆黒の森を庭園のように従えて八が岳が眼前と居並んでいる。右にはおなじみの惚れ惚れとする山々たち・・・仙丈、甲斐駒、北岳、間ノ岳、鳳凰、さらに塩見岳まで南アルプスのスターが勢ぞろいしていた。

50メガはEスポも開いていないようだった。JS1MLQが目の前の北ハの八柱山に居た。川田さんはこの3日間で北ア・船窪新道で稜線往復、翌日は美しが原周辺の山、そして昨晩に美濃戸まで入ったと言う。相変わらず、鉄人だ。ハムフェアでの再会を期してあと数局と交信。風でダイポールがくるくる回る中での運用はキツかった。

QRTしてお握りを一つ食べる。山頂の反対側まで行ってみる。岩がゴロゴロする山頂はガスが出ると方向が読めなくなるだろう。北アがすばらしい。いつか行ってみたい山々。あの山々の名前が一つ一つわかるようになりたい・・。

下山はあっけなかった。この展望台を去るのはもったいない。将軍平でそのまま前進して前掛山から夢の平ら林道におりるコースを進むが歩かれていないのか踏み跡が希薄でツガの幼木で藪っぽい。こんなところでヤブコギも冴えないので将軍平に戻り、往路をとって下山した。

日が高いにもかかわらず蓼科山は朝見たときと同じように黒いばかりの青空をバックに立っている。歩程が短くややその点では物足りなかったけど、久々に高山の雰囲気、冷涼な大気、透明な空気、そして果てしない展望を味わった。あの山頂にさっきまで居たのだと、嬉しい。それだけで言う事はもう何もなかった。

(青黒い空のもと蓼科山のピークが高い。) (山頂は岩が累々と続く。異様な眺め) (将軍平から望む蓼科山山頂)


(コースタイム:7合目駐車場9:00-天狗の露地9:38-将軍平10:00/10:10-蓼科山10:35/11:55-将軍平12:20/25-前掛山付近-将軍平に戻る12:53-天狗の路地13:08-七合目駐車場13:35)


アマチュア無線運用の記録

蓼科山 2530m 長野県北佐久郡立科町
50MHzSSB運用 自作4WSSB/CW機+ダイポール、6局交信


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