近場のサウナで朝風呂・朝ビールを - 矢倉岳

(2001/7/21、神奈川県南足柄市)


(前方に盛り上がるげんこつの拳、矢倉岳を見る)

今年は梅雨明けが早かったせいもあろうが、やたらと暑い。毎年の事ながらこんなに暑いと都会生活も大変だ。自分が子供のころも同じ横浜に住んでいたがこんなに暑かっただろうか?1960年代から70年代前半、まだまだエアコンも一般家庭には普及せず、それでも毎年夏が楽しかったのだから多分暑さも今ほどでなかったのかもしれない。今や夏など暑いだけで、早く秋になれと思ってしまう。

さてそんな夏の唯一良い所は「夏山」に行けるという事か。稜線を渡る爽快な風、そしてパノラマ。なるほど登りは苦しいが、その果てにある非日常性はそれを補って余りある。中途半端な近郊の山では草いきれで暑いだけで、サウナに行くようなもんだ。がそんな夏山にも問題がある。パラダイスのような夏山は遠いのでなかなか行こうにもいけないのだ。休みの問題。体力不足(これは大きい!)・・・。

そんな訳で手じかに行けるのは相変わらずおよそ夏に不向きな低山。せめて早朝から登って陽が高くなる前には下山してしまおうと考えた。それに計画中の「本番」ともいえる夏山の足慣らしも兼ねられよう。結局足は「サウナ」に向かった。

箱根外輪山の北に位置する矢倉岳はげんこつの拳が地表がにょっきりと生えたような独特の形で遠めにもかなりユニークな山でいつか登ろうと登っていたが電波の飛びは余り良くないという。まあ電波は二の次で軽く登るのには手近だろう。

東名高速を大井松田でおりる。前方に今から登る矢倉岳が盛り上がっている。家からここまで1時間。まだ朝5時だ。さすがに早朝は時間がかからない。

矢倉沢の集落まで来て駐車スペースを探すがなかなか見つからない。小さな集落の中を行ったりきたりする。内川という小川沿いの細い道をわずかに進むと舗装が途切れるあたりにわずかな路肩をみつけたのでそこに駐車する。この道はちょうど下山時に使う予定なので駐車場所としてはちょうど良い。

やや戻り北に折れる小さな道に「矢倉岳へ」を示す道標がありそれにしたがう。すぐに左に折れ先ほどの車を停めた道路のやや上を逆戻りするように進む。民家が途切れ高度を稼いでいく。道幅3m程度の簡易舗装の農道だが道を横断するような堂々とした蜘蛛の巣が幾重も続く。顔や手に不快な粘糸が絡み早くも不快指数が上昇する。

廃屋と化した資材小屋で道が急角度で右に折れ曲がるとすぐに左手に「矢倉岳へ」の看板とともに急な舗装路が分岐していた。これを辿ると右手に茶畑を見ながらの急登となり一段落着いたところで道路は終わっていた。そこから鋭角的に左手に折れるように登山道が始まる。杉の林の中をしばらく辿るが下のほうは枝打ちされており思いのほか明るい山中だ。持参した2.5万分の1図「関本」では登山道がここからしばらくは山腹をトラバースするような感じで進むように示されているが、反して道は小刻みなつづら折れを繰り返して高度を稼いでいった。

しかし暑い。林の中は不快な湿気に満ち溢れていてそこに居るだけで体温が急激に上がってくるのを感じる。滴る汗はコントロールできずに垂れてくる。にじむ汗と垂れる汗では不快感が大きく違う。やはり夏の低山は「サウナ」だ。

(矢倉岳山頂から金時山と御殿場市街地を望む)

地形図では標高450mあたりから一気に標高差200mを稼ぐ鉄砲登りがあるように示されているが、どうやら実際の登山道は地形図とは違うところを辿っているようで急登はなく一定の斜度が続く。いつしか杉から雑木の中を歩くようになった。林相が低くなると再び蜘蛛の巣が増えてきた。しかし蜘蛛はどうやって巣を張るのだろう、登山道を横断するような1m、2mの幅の巣も珍しくない。蜘蛛の糸が体に絡むと後でとても痒くなってくる。あーやだやだ。そうこう言ううちに明瞭な尾根に乗って左手に明神ケ岳の大きな裾野が目線と同じ高さになった。

斜度が緩みしばらく進むとあっさりと芝生の原の山頂に飛び出た。箱根の最高峰・神山はガスの中に隠れていたが金時山へ続く稜線と明神ケ岳が大きい。御殿場の市街地と富士山の裾野が広大なパノラマをみせてくれてなかなか開放的だ。目を転じれば相模灘が朝の日を浴びている。陽射しは強いが微風も吹いている。「サウナ」だって登ってくればそれなりに心地よい。

ビールを開ける。朝7時からこんな気分でビールを飲むとはなかなか贅沢だ。50MHz運用をするがやはりロケが良くないという前評判は確かだったようだ。三重県や岩手県が地上波で聞こえてくるが応答しても取って貰えない。まぁいいか、とのんびりCQで地元の局と数局とのみ交信した。

人が来る気配の感じられない山頂を足柄峠に向け歩く。15分程度歩くと酒水の滝への分岐を右手に分けそこから左手に鋭角的に曲がりすぐに地蔵堂・矢倉沢方面と尾根なりの足柄峠への道を分けた。

地蔵堂・矢倉沢への道は2.5万分の1図「関本」には載っていないが明瞭な踏み後が続く。15分ほど下りると今日初めて登って来る登山者に出会った。さらに中年の夫婦連れ。やや登り送電線鉄塔の切り開きに出るといきなりパラパラと大粒な雨が降り始めた。見ると黒い雲が覆い被さっており、短い夕立のようなものだろう。道は杉の植林帯に飛び込んだのでさして濡れずにすむ。雨の山も悪くは無いな・・、などと思っているが雨足はますます強くなりたまらずにゴアのカッパのお世話になる。たちどころに蒸れを感じ、不快だ。これでは「サウナ」。10分も持たずにふたたびカッパを脱いで濡れるのもかまわず歩く。

随分と下り、地蔵堂への直進する道を分け矢倉沢への標識を見て左手に曲がった。平坦なやや荒れた道となる。雨上がり独特の藪の生臭い匂いが漂うが、この匂いはどうも苦手だ。たんたんと歩くと林道終点となり、じきに駐車しておいた車に戻った。

まだ朝10時前だ。湿気の山と雨上がりの山で「サウナ・朝風呂」に入り、山頂では「朝ビール」を味わった。こんなに早い時間帯で山歩きを終えるのは一日を有意義に使えるような気がする。バス停から矢倉岳を目指して登り始めた登山者とすれ違いながらハンドルを横浜に向けた。


コースタイム: 矢倉沢集落5:40−矢倉岳・アマチュア無線7:10/8:30-足柄峠への分岐8:42-地蔵堂・矢倉沢分岐9:17-矢倉沢集落9:50


アマチュア無線運用の記録

矢倉岳、神奈川県南足柄市 870m
50MHzSSB運用、FT690mkII+ダイポール、6局交信



Copyright:7M3LKFY.Zushi2001/7/27

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