2001年も相変わらず・・正月早々丹沢前衛・南山へ

(2001/1/2、神奈川県津久井郡津久井町)


2001年の山初め、無線初め。そう、アマチュア無線家の年始廻りとは1月2日、3日のニューイヤーパーティ(NYP)の事だ。電波で新年の挨拶を交わすのだ。毎年の如くローカル局の7K3EUT・塩田さんと一緒に今年も神奈川県の低山に登りオンエアだ。

神奈川県の山岳といえば丹沢だが核心部に至らずともその周りや前衛には手ごろな500,600mクラスの山が多い。無線が目的でもあるので、関東平野から余り遠ざかっては苦戦を強いられる。昨年のニューイヤーパーティは神奈川県中部の曽我丘陵に行ってみたが、無線のロケという意味ではなかなかキツイ場所だった。なにしろこの両日でオンエアする局数が圧倒的に多いので中途半端な場所からのオンエアでは電波がより強い電波の局に負けて(?)しまいなかなか拾ってもらえない。また混信にも悩まされる。

簡単に登れてかつ呼ばれそうな場所というとやはり丹沢前衛の仏果山の付近ということになろうか。どうせならまだ踏んでいないピークがいい。宮ケ瀬ダムの北側にある南山(544m)は兼ねてからNYP用に目をつけていたピークだ。昭文社のエアリアマップ「丹沢」には紹介されておらず、さながら山歩きの対象から外されているような寂峰のイメージがある。好ましい。

* * * *

(送電線鉄塔台地からは眺めが良かった。ゴルフ場の奥にこんもりと
津久井城山。その右手前は小倉山。)

早朝、近くのコンビニエンスストアで塩田さんと合流する。正月2日の道路はさすがに空いている。塩田さんは自分が開局した頃からの付き合いで一時は毎晩のようにラグチュ-(無線上での世間話)をしていたものだ。残念ながら数年前に転勤で横浜を離れ電波の上でも直接でも会う機会は激減したが、休みのシーズンには横浜・鶴見に戻って来るのでこうして楽しめる。時間の隔たりを感じさせない世間話をしながら走ると目的地まではあっという間だ。

愛川町半原から国道412号をわずかに北上すると服部牧場に入る道が左手に分岐する。すぐに小広い牧場に出て、一瞬北海道のような眺めに驚いた。神奈川県にこのような場所があったとは、知らなかった。牧場を抜けて右手に入るとゲート封鎖されており、ここで車を停めた。

身づくろいをしてゲートを抜けて歩き出すと家庭菜園のような農地が左手にあり、車で乗りつけた人が一人、手入れをしている。つけっぱなしの車のラジオからは箱根駅伝の中継が流れており、正月らしい。

そのすぐ先に立派な指導標があり、登山道に入った。2万5千分の1図「青野原」では登山道はもう少し北側から始まるように書かれているが、地形図の書き換えの頻度から見れば現実の登山道の表記と違っていても何の不思議も無い。

しばらくは植林の中で一汗かくころ稜線に出た。年末から正月に至るまで「飲む・食べる・(キーボードを)叩く・見る・寝る」の王侯貴族のごとき生活をしていたのでなかなか苦しい登りだ。塩田さんの息も乱れており、お互い、辛い。

送電線の立つ鉄塔台地まで登ると振り返る関東平野はなかなか広く、電波の飛びも当然期待できる。眼下にゴルフ場があり目を凝らすと一組プレイしているようだ。彼らも「山初め・無線初め」ならぬ「打ち初め」であろう。いづれにせよ正月早々遊ぶ事が好きな似たもの同士だ。お互い、ご苦労様。ゴルフをたしなむ塩田さんが羨ましそうな声を出す。数年前の桜の季節に登った津久井城山(375m)が目前にあり、その右手にはまだ登ったことの無い小倉山(327m)が見える。いずれも今の自分の場所よりは低い。偉くなったような気がする。南を見ると一昨年塩田さんと登った仏果山(747m)が見える。うーん、あそこよりは低い。負けてしまった・・。

岩場ではないが急坂がありそこにどうしたものか鎖が垂れていた。落ち葉に隠された斜面は登りづらい。小ピークに立つと山頂はまさに指呼の間で、少し下りて登り返すと南山の山頂544mだった。予想に反して植林に囲まれた寒々しいピークは長居をする気がわかない。明るい雑木林の先ほどの小ピークに戻る。山頂ではないがこちらのほうが数倍気持ちよい。

無線設備をセットして、さて2001年最初のCQを出す。塩田さんは50MHzSSBで、自分は1200MHzのFM。出力0.3Wに小さなホイップアンテナの1200MHzはパイルにはならないが途切れなく呼ばれる。塩田さんも適度なパイルを浴びているようだ。一段落着いてストーブで温かいコーヒーを入れて、自分も50MHzを運用する。SSBの音はノイズ交じりでFMのような明瞭さが無いがそのぶんかえって無線らしい。このノイズ交じりの音には中学生のころ短波ラジオで外国の放送局を追いかけた、遠い日の感動がある。今では自分が、小さな無線局だ。

(塩田さん・左と)

何局か重なって呼んでくれるパイル状態はまさに嬉しい。CQを出してのパイルアップはNYPの最大の醍醐味だろう。アンテナの向きを東南東から北東に変えて更に運用を続ける。2時間以上連続運用している12V、1.5アンペアのシール電池はへたる様子もない。なかなか使える。しばらくしてお互いに満足して、無線はおしまいとした。塩田さんも20局以上、自分も1200MHzと50MHzあわせて35局と交信したのだから良い「無線初め」と言えるだろう。

缶ビールと缶チューハイを取り出して、焼き鳥缶詰を肴に祝杯をあげる。ラーメンを茹でていると突然バイクの音がして、なんとぶったまげたことに山頂から2台のオフロードバイクがやってきた。登山道をモトクロスコースと勘違いしているのか、頭に来る連中だが・・。自分も腕はないにせよオフロードバイクが好きでかつては林道走行が好きだった事もあり、気持ち的には充分わかるが・・。彼らも「走り初め」という訳か。あの鎖場をどうやって下りるのか、転倒でもしてくれたら面白いな、などと不遜な事を考えながら彼らを見送った。まぁ自分達にせよ山頂でうるさい無線などに興じているのだから、それをしない人から見れば許しがたいかもしれないし。

温かいラーメンは美味しい。時折吹いていた北風が強くなり始めたのを機に撤収をして下山にかかる。

生憎と(?)彼ら二人のライディング技術は卓越しているようで、転倒の跡どころかゆるぎないライン選びで下りていったようだ。滑らかなタイヤの跡のみが乾いた土に残っていた。タイヤ跡を追いながら下りていくとあっという間だった。

車道に出て、車に戻る。こうして21世紀の「山初め・無線初め」も無事終了。なかなか幸先の良いスタートではないか・・。あとは横浜に戻るまでの数時間、塩田さんとの楽しい車中でのラグチュ-が待っているのだった。そう2001年も相変わらず山と無線。相変わらず楽しむのだ・・。

(終わり)

アマチュア無線の記録

南山 544m
神奈川県津久井郡津久井町
50MHzSSB YAESU FT690mkII単体(2.5W)+デルタループアンテナ 22局交信 
1200MHzFM STANDARD C710(0.3W) + ホイップアンテナ 13局交信
宮ケ瀬湖のすぐ北にあるピーク。
寂峰の感あるも、登山道は充分整備されていた。

Copyright 7M3LKF, Y.Zushi 2001/1/7


(戻る) (ホーム)