遙かなり?華厳山

(2001/7/1、神奈川県愛甲郡)


(上荻野から華厳山・高取山に連なる山を望む。ここまでは
何の問題もなかったのだが・・。)

前回の山行からもう1ヶ月近く経ってしまった。ひさびさ晴天に恵まれそうだと言うので前夜にザックのパッキングをして早起きをする。半日で戻れそうな簡単な場所として丹沢前衛の華厳山・高取山に目をつけていた。仏果山、経ケ岳と連なる山塊の南端のピークである。ちょうどバイクで往復すれば手頃な半日ツーリング、山も簡単、バイクも満喫、と言うわけだ。

華厳山・高取山へはどう行くのが良いのだろう?仏果山・経ケ岳はハイキングのメッカだがその南の華厳山・高取山はそんな対象からもはずれもっぱら好事家のみが訪れるピーク、という感がある。それでもまだ良く聞くのは北の経ケ岳から南下してピストンするというものだが、それではあまり面白そうではない。それに経ケ岳と華厳山の間は結構落差もあって、下から登るというよりは上から下りていく、という感じで山に登るという感じはしない。やはり下から攻めていこう。

2.5万分の1図「厚木」によると山麓の上荻野あたりから登山道表記がある。地形図の登山道は信用できないが、なに、所詮標高差数百メートルだ。なんとかなるだろう、とバイクを駆って厚木を目指した。

梅雨は一体何処に行ったのだろう、というような猛烈な好天だ。ヘルメットの中が蒸れてはやくもクラクラしてくる。

上荻野につく。地形図によると肝心の登山道はどうやらゴルフ場の中からはじまっている。里道を走り、それらしき道に踏み込んでいく。舗装が途切れ更にアクセルを握ると又舗装されている。とすぐ横を無音で何かが通りすぎた。えっ、と見れば電動カートだ。それに乗ったゴルファーが4人、コイツは何だ、という顔でこちらを見ている。いつしかゴルフ場に不法侵入したようだ。アクセルを開き更に道を登っていくと再び舗装が途切れ、今度は明らかな廃道となり広場となり道が終わっていた。

登山道がこの辺から始まっているはずだが・・。あたりはムンムンとするような草いきれでこの中からコースを見出して登るのは大変な労力のように思われた。どこから取りつこうにもただ猛烈な草藪が広がっているだけで、真夏の陽射しが照りつけるそこは人の立ち入りを全く拒絶していた。

失敗した・・。まずは案内板の一つでも期待していたのは甘かったとしても踏跡くらいはあると思っていた。藪を突破するのなら秋から春にかけてでないと・・。しかもじっとしていると汗が滴るような灼熱で藪漕ぎの戦意がみるみる萎えていった。

戦法を変えよう。高取山のほぼ真南に採石場があり、そのあたりからアプローチ出来ぬか・・。バイクの軽快さで早速上飯山温泉の方に向かう。小鮎川を渡る橋を抜け登るとなるほど採石場はあるが部外者立ち入り禁止のゲートがある。駄目か・・。かくなる上は定石通り経ケ岳から尾根を南下するのみか。気が進まぬがまずは経ケ岳へのアプローチの半原越へ。

法論堂林道に入り高度を稼ぐ。半原越が近ずいたころハイカーを一人追い抜いた。下からご苦労さまだ。半原越にバイクを止めて経ケ岳へ登り始める。こんな時期のこんな山に登る人もそうは居ないのだろう、草いきれと湿度、それに蜘蛛の糸が凄くたちどころに汗がしたたってきた。

20分で経ケ岳山頂。ここはすでに無線の運用もすませてあり、何の興味ももてない山頂なので素通りする。数十メートル進むと東へ折れる田代への道があり華厳山への尾根はここから南に延びている。踏み込んで高度を下げるとすぐに有刺鉄線に囲まれたフェンスが現れ、明瞭な尾根の分岐となった。生憎とこのあたりをカバーする2.5万分の1図「上溝」は持って来ていない。あるのは昭文社のエアリアマップ「丹沢」のみ。エアリアマップを見て、向かって右手の尾根が南に行くのでそちらに踏み出した。赤テープもなるほどある。この季節、ここにも藪が覆い重なり歩きづらい。かなり高度を下げていく。道はあっているはずだが・・。

樹林が濃くて見通しが利かないが目を凝らすと前方に高まりが見えた。ああ、あれが華厳山だ。しかしずいぶん下りて登り返すのだな。なにか、ぱっとしない。こんな時期にこんな藪の中で一体自分は何をやっているのだろう・・。それに又ここまで登り返すのも馬鹿馬鹿しい。もともとこのアプローチは望んでいたものではないし、下から登ってみたかったのだ・・。

そう思うと加速度的に興ざめがしてきた。やめよう、又秋から冬にかけて、再挑戦すれば良いさ。

くるりときびすを返して、経ケ岳に戻った。山頂にはさっき林道で追い越した単独のハイカーが汗をぬぐっていた。簡単にあいさつをし、せっかくだから、と持ってきた50MHzの無線機を取り出してみる。Eスポが出ており、バンドは大賑わいだった。こりゃ、駄目だ・・。数度CQを出してから諦めて撤収をした。

無線も山も、冴えない。惨めな気分だ。

半原越に戻り着替えてバイクにまたがった。と、先ほどのハイカーが下りてきて、そのまま反対側の仏果山への登山道に取り付いていった。この暑いさなか、経ヶ岳と仏果山の縦走だろう。あぁ、あんなにすごい山への熱意が今日の自分にはない。

情けない思いと、なに登る時期を間違えただけさ、という取り繕いの気持ちが混じる中、半原越を後にした。時間切れで戻るのなら、道が分からずに戻るのならともかくも、今回は時間もあり道も分かった。それでも目標の山頂を諦めたのは一体何なのだろう・・。心の中に重たい気持ちが大きかった。

単気筒の振動を体に感じながら横浜に向かう。照りつける陽はもう真夏のものだった。結局近いのに遠い山となってしまった山。遥かなり、華厳山。もう一度リターンマッチをいつか・・・。



Copyright:7M3LKF、Y.Zushi 2001/7/2

(戻る) (ホーム)