盛り上がらなかった三頭山から笹尾根

(2000/2/12、山梨県北都留郡上野原町)


2月もさなか、なんとなく雪があるだろうという事で奥多摩へ足を向けます。広大な奥多摩の中でも浅間尾根はまだ一度も歩いた事がありません。数馬から浅間嶺そして松生山まで、物静かで落ち着いた雰囲気という浅間尾根を雪を踏みながら歩くのも悪くないでしょう。

五日市駅から数馬行きのバスに揺られます。 数馬から北東に上がり浅間尾根に出ようという目論見です。ハイカーで満員のバスも元郷、沸沢の滝、上川乗、人里、笛吹、と停まるたびにだんだんと減っていきます。期待している雪は全く見えません。これで雪の浅間尾根歩きという楽しみは味わえるのだろうか・・。ところで後席の夫婦連れの会話が耳に届きます。数馬でバスを乗り換える・・云々。数馬でバスを乗り換える?都民の森に行く連絡バスの事?こんな冬のさなかに都民の森までの連絡バスが走っているのだろうか? もしそうとしたら・・浅間尾根どころか三頭山が手に届きそうです。果たして数馬につくとワンバックスのワゴン車が扉を開けて待っています。成程これのことか。雪の期待出来ない浅間尾根はどこへやら、いそいそと車中の人となります。標高1500mを超える三頭山なら雪も期待できそうです。電波の飛びの良さも経験すみ。文句無し。

快調に奥多摩周遊道路を走る車窓から雪の笹尾根が遠望できます。 都民の森はこんな時期にもかかわらず予想に反して一般車も多く駐車して盛況です。思わぬ拾い物をしたようでにわかには信じられませんが準備をして出発。森林公園ともいえる都民の森は縦横無尽に開発されているので正規の登山道がなかなか見つかりません。鞘口峠まで登りつくとようやく道がわかりやすくなります。北斜面と東斜面の混じる登山道は固い残雪と春のような眺めが交錯します。北斜面の雪は降ってからかなり経っているのかカチカチに固まっているかクラストしているかで注意しながら進みます。登山者も結構な数です。

鞘口峠から1時間ほどで三頭山の頂上へ。三頭山の三角点は北峰にありますがメインピークはお隣の中峰で、ここが県境でもあります。登りつくと正面に逆光の富士が大きい。振り返ると雲取山から鷹ノ巣山への石尾根が長大です。単眼鏡を取り出して覗いてみると南斜面ということもありますが雲取の肩にはわずかに雪がついているだけで石尾根も雪には無縁な眺めです。JK1RGA・河野さんと共にこの山頂でJF2HBH・堤さんと7K1CVP・鈴木さんとばったりアイボールしたのは何年前の話でしょう。

さて待望のアマチュア無線は6m(50MHzバンド)運用。山頂からの運用は1.5ケ月以上ぶりか。期待をもって無線機、電池、アンテナ、釣竿を次々と取り出しますが、あれっ、同軸ケーブルが有りません。ザックをひっくり返しても出てきません。しまった、忘れた。自宅のテーブルの上だ。昨日装備をあらためて全部ザックの中から出したのが災った!ガーン、大ショック。なんとかオンエア出来ぬかと装備を片っ端からみてみますが代用になるものは有りません。本当かよー。何のために片道2000円もかけてロケ抜群のこの山まで来たのだ!

怒りが込み上げてきますがなったものは仕方がない、そう思い直してハンディ機を取り出します。そういえばNIFTYの山・無線仲間の書き込みどおりであれば今日はJI1TLL・須崎さんが奥武蔵の棒ノ嶺にいるはずです。以前ご一緒した奥秩父山行では須崎さんは6mをオンエアしないときは430のメインをつけっぱなしにしていたのを思い出します。早速トライ。430でヤマランメンバーをコールすると、ヤッタ!3回目で須崎さんの声が返ってきました。空き周波数を探しますというと6mに行きませんか、とのお誘い。苦しい誘いだぁ。

同軸、忘れました!
エーッ、ハッハッハッ・・。今日は絶対6m日和ですよ。河野さんも堤さんも岩倉さんもみんなとつながりましたよ。
そんなに6mの話をしないでくださいよ・・。

(残雪の笹尾根をいく。
やわらかな陽射しは近づく春のさきがけ。)

とりあえず須崎さんと交信できた事で溜飲を下げます。でもとてもCQを出す気にもなりません。もう、いいや。さっさと片づけて笹尾根へ足を踏み出します。

数年前に河野さんと素晴らしい山の夜を過ごした堅牢な三頭山避難小屋を通り過ぎます。中は相変わらず清潔で、又泊ってみたいものです。尾根道は少し登っては高度を落としていきます。日当たりの悪い西斜面はまだ雪が多く残っており雪原から葉を落としたミズナラがニョキニョキと出ています。雪を踏みピークを超え東斜面に出れば雪もなく暖かい日差しに満ちた春山の眺めです。冬と春がせめぎあっている感じです。

しかしとちったなぁ。6mのない無線、いや山のなんと無味乾燥な事か。あぁノイズ混じりのあの変調、マナーの良い愛すべきバンド。多くの山岳移動の仲間たち・・・。空を見上げれば見えるわけのない6mの電波が縦横に飛びまわっているのが見えそう。あぁあれに飛び乗りたい。

悔しさと情けなさで淡々と笹尾根を歩き槙寄山。ここは無線未交信ポイントだったので1200MHzでCQ。手短で普通の会話は6mの世界に似てはいます。波長が短いせいか少しハンディトランシーバの位置をづらすだけで電波の了解度が大きく変わったりします。CQを出す事でかなり気を持ち直しましたが所詮は本望ではありません。

このまま歩いても無線を楽しめるわけでもない。数馬発3時45分のバスに乗ろうか、そう決めて西原峠から数馬へ下ります。北斜面の下山路は凍結した雪道が続きます。バスまでの時間が少なく急ぎたいところですが慌てると滑って転倒しそうなので軽アイゼンを履いて駆け下りました。ザックザックと凍った雪面に食い込むアイゼンの感覚が心地よい・・。

笹尾根を越える峠道は何処も似たような感じで急斜面もなく地形に逆らわぬ歩きやすいの道。かつては笹尾根を挟んだ北と南、秋川と鶴川の集落同士を結ぶ生活交易路だったという笹尾根越え。この歩きやすい道はやはりいにしえの峠道といった感じです。集落に下りていく感じもとても自然です。1時間のコースタイムを40分で駆け下りてバスの時間には余裕で数馬に到着。

雪の尾根道歩きはは面白かったけど無線は残念だったなぁ。今度は準備を万端にするぞー!


(都民の森10:40−鞘口峠10:55−三頭山11:55/12:35−槙寄山13:55/14:50−数馬バス停15:30、三頭山1531m、槙寄山1188m)


アマチュア無線運用の記録

槙寄山 1188m
山梨県北都留郡上野原町
1200MHzFM運用、4局交信、最長距離:埼玉県上尾市
スタンダードC710 (0.3W) +付属ホイップアンテナ
幾つかある笹尾根上の1ピーク。笹尾根は盟主・三頭山以外は地形図上には幾つかの山の名が乗るものの、どれも顕著な高まりではなくそれとなく通過してしまいそう。槙寄山もまさにそんなピークの一つ。

Copyright:7M3LKF,Y.Zushi,2000/2/13


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