一口メモ

 「特許出願としては簡単なアイデアなので、実用新案登録出願にしたい」と仰る方がよくいらっしゃいます。しかし、現在の実用新案制度は昔のそれとは根本的に違うものになっていますので、実用新案登録出願の有効性は非常に疑問です。

 昔は、特許と実用新案は根本的には大きな相違はなく、特許は大発明を保護し、実用新案は小発明を保護すると言われており、日本全体としても、特許出願の出願数より実用新案登録出願の出願数の方が多い時代が長く続きました。しかし、ある時期から特許庁が、特許も実用新案も同じレベルで審査する(実用新案登録出願だから簡単なアイデアでも登録するということはなく、特許出願で出された場合と同じレベルで審査する)というように運用を変えました。これに伴い、1980年代初頭から特許出願の方が実用新案登録出願より出願数が多くなるようになりました。

 そして、さらに平成6年(1989年)からは実用新案制度が根本的に変わり、実用新案登録出願の方は無審査で登録される(出された出願は、審査されることなく、どんなアイデアであってもすべて登録される)ようになりました。すべて登録されるということは良いように思われるかも知れませんが、現実には、登録はされても、誰か他の人が真似をして実施した場合にそれを抑えることは非常に難しいと思われる制度になってしまいました(詳しい理由を書いていると、専門的になって長くなってしまいますので、ここではその理由は省きます)。

このように実用新案制度が改定された結果、現在では実用新案登録出願の出願数は激減しています。最盛期は実用新案登録出願の出願数は20万件/年を超えていたと思われますが、特許庁ホームページの統計欄によれば、2004年の出願数は僅か7,983件です。ちなみに、特許出願の出願数は423,081件です。

 このような事情から、現状では、実用新案登録出願はお薦めしません。よほど特殊な事情がない限り、特許出願にすべきです。

実用新案制度…昔とは全く違ったものになっています

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