●南原宏治

 先日まで放映していた、栗塚旭さん主演の<風>で一番印象に残った敵役が、南原宏治さん演じる<のざらし主膳>だった。不気味で凄みがあって、滅法強い。それでいてちょっぴりファニー。死に際に血を吐きながら「おまえの顔を見たときから嫌な予感がしたんだ…」と微笑みさえ交え、新十郎にいう場面など秀逸だった。南原さんじゃなきゃできない役だな、これは
 なにせ、東大でミスター日本である。ちょっと濃いけど、確かにハンサムである。美男子なのだが、どこかただの二枚目と違う個性を持っていた。だからこそ、主役級のスターではなく、個性的な脇役として生きてこられたのであろう。絵を描いていて思ったが、目が素晴らしく素敵である
 映画からTVドラマ、時代劇、特撮まで幅広くご出演されていた。変わったところでは「マイティジャック」やパイロット版ミラーマンでは村上良三隊長役だったそうだ。南原さんの隊長役…素敵だ…観てみたかったな。立っているだけで絵になる恰好良いおじさんだったから、渋い隊長だったに違いない
 最近こういうタイプの顔の方はまずいない。世の中が平和なので、優しい顔の男性が多くなったようだ。それ自体はいいことだが、修羅場をくぐった男らしい顔がいなくなったように思える。女性の方がどこか男性的で、みんな宝塚の男役のように恰好良い。優しい男と、強い女…いまのニッポンはそんな感じか(2003.8.1)
名前 南原宏治(なんばら・こうじ)
生年月日 1927年6月7日・2001年、74歳で死去
主な出演作 <まぼろし怪盗団>(1955)、<少年探偵団>(1956)、<蘇る金狼>(1979)
<マルサの女>(1988)ほか
MEMO 東大中退後、1951年ミスター日本コンテストから大映入り。54年に東映に移籍