●小柳安五郎

「鬼平犯科帳」の中ですごく好きなキャラクターがいる。ドラマの中ではない。池波先生の原作の方にだ。名を<小柳安五郎>という。火付盗賊改方の同心で、非常に冷静。それでいて、盗賊を信じ、自らの命を懸けて解き放つ大胆さも持っている。彼の描かれたエピソードを読むと、その人間的な魅力に虜になってしまう
 小柳安五郎は、盗賊探索の最中、妻と子を同時に失っう。初産の妻が男の子を産み落とすと同時に親子供息絶えてしまったのだ。彼はそれ以降、役宅の長屋に住まいを移し、昼夜と言わず任務を遂行し、いのちをも惜しまなかった。元々、優しげな色男だったが、剣術に励むことにより精悍な男となる
 お薦めのエピソードを簡単に紹介しよう()内は単行本巻数
「あきれた奴」(8)鹿留の又八の妻子を助けた小柳が、又八を信じ、自らの命を懸けて逃がす。又八は小柳のため凶賊雨畑の紋三郎を捕らえて戻ってくる
「さむらい松吾郎」(14)ちょっとファニーな小柳同心。うさ忠こと木村忠吾との掛け合いが楽しい
「炎の色」(23)妻子亡き後、独身を貫いた小柳同心が、このエピソードで長谷川平蔵の腹違いの妹お園と結ばれる
 イラストはイメージ。ちょっと自作のキャラクターで恐縮だが海老原与力に似てしまった。こういうタイプ、好きなんだな…兎も角、ぜひ原作のご一読を。ほんと、素敵です(2002.9.17)