タイトル 仕掛人・藤枝梅安
放映年 1982〜83年
放映話数 全7作・長編
ご存知、池波正太郎原作の名作。本作品の梅安は小林桂樹。「梅安蟻地獄」「梅安流れ星」「梅安迷い箸」「梅安晦日蕎麦」「梅安針供養」「梅安岐れ道」「梅安乱れ雲」

共演:田村高廣、柴俊夫、中村又五郎、加原夏子、神崎愛ほか

美しい面ざしの田村三兄弟の長男。どんな役でも上品だ

 藤枝梅安の名を知らなくても、仕掛人は知っている。必殺シリーズのヒットにより、世の中に<仕掛人>は広く認知されたが、そのベースが<仕掛人・藤枝梅安>である。本作品は時代劇スペシャルとして2時間枠で7本制作された人気シリーズだ
 小林桂樹さんの梅安は、少し原作より歳を取りすぎている印象だが(原作では30代である)逆に老獪でクセのある梅安を演じている。小杉十五郎役の柴俊夫さんも(目の大きい元気のいい浪人さん)風でなかなかよい。(ちょっと大柄だが…)
 中でも心魅かれたキャストは彦次郎役の田村高廣さんと音羽の半衛門役の中村又五郎さんである。彦次郎役の田村さんはひたすら美しい。目に色気がある。楊枝職人にしては品がよすぎるが、仕掛けの時の面ざしが非常に艶っぽい。田村兄弟の中でも一番父(言わずとしれた坂東妻三郎)の面影を引き継ぐ高廣さんは、ふっとした仕草が絵になる。彦次郎が、吹き矢を吹いて、さっと暗がりから滑り出てくる姿を見るだけで、思わずくらくらしてしまった
 音羽の半衛門役の中村又五郎さんも、また原作のイメージそのものである。小柄で、ちょこちょこと歩く姿、それでいて威厳と気品がある彼が演じることで、香具師の元締めの半衛門の、その大物ぶりが際立つ。又五郎さんをイメージして、池波正太郎さんは<剣客商売>の秋山小兵衛を書いた。池波さんと同じように<剣客商売>を読むときは、わたしの頭の中は小兵衛=又五郎さんなのだ。原作があるものを映像化するときは、それぞれ頭に描いたキャストと実際のキャストのギャップがどうしてもできる。非常に難しいものであるが、この作品は、わたしにとって納得できるものだった(2002.8.4)