アイヌとお酒

清酒の原型は「日本書紀」にすでに記載されているそうです。古〜い嗜好品なんですねぇ。いや、祭祀用だったのかな?

 古い昔の酒つくりは、コクワ、サンザシ、コケモモ、ヒシなどの実を発酵させてつくりました。
 そのうちに、ヒエやアワを自分たちでつくるようになってから、ヒエやアワを煮たものを女たちが口のなかでよくかみくだき参照)、樽のなかで発酵させて、どぶろく(参照)をつくるようになりました。
『アイヌのむかし話』 四辻一朗著 国土社 p73
アイヌ民族が登場する児童書


  酒づくりは、まず、人肌にさました湯に麹(参照)をほぐしながら入れる。炊いた米に麹入りの湯を入れ、よく混ぜて粥状にし、シントコ(行器)に入れる。およそ三日後に漉して酒はできあがる。米のほかに、ヒエやトウモロコシでも酒はつくられる。

『アイヌ 海辺と水辺の民』 大塚和義著 新宿書房 p93
 静内: ・・・酒の材料はピヤパ(ひえ)がよい。・・・ひえと同じくらいの量のカムタチ(こうじ 参照)も買う参照)などして用意する。この酒つくりに参加できるのはカッケマッ(淑女)でなければならないが、あまり若いメノコやメノコタスム(月のもの)がある人はさける。
 阿寒: ・・・麦と馬鈴薯の酒もつくる。大麦5合、中ぐらいの馬鈴薯10個、水が約2升。それに米こうじが約6合とぬるま湯が8合である。酒つくりに参加できるのはすべて女である。とくに仕込みのときなどは、フチだけで、若い女は参加できない。使う道具類を洗ったりするのもすべてフチがする。
『聞き書き アイヌの食事』 農文協 p162-169
作り方の作法まで載っています。短く抜粋しました。
*古い時代から(少なくても1456年頃)、麹は和人との交易で入手したようです。(『古代蝦夷』 工藤雅樹 吉川弘文館 p125-「アイヌ社会と交易」)


<百科辞典より抜粋>
どぶろく
日本酒と同じく、米麹、蒸し米および水で仕込むが、発酵してできたもろみをろ過することなくそのまま飲む。米粒や麹、酵母がそのまま入っており、甘酸っぱい味で、腹もちもよく、庶民の酒として愛飲され、明治末年には、二万石近くの消費があったという。
米、麦、大豆などの穀物や、穀物精白の祭に生じた糠や?にコウジカビを繁殖させたものを一般に麹という。酒をつくる際、原料の穀類を口の中でかんで、容器に吐き出して、唾液アミラーゼで糖化したことから麹の古語「かむだち」が生まれ、「かむち」「かうぢ」と変化したといわれる。また、一説には「かび(カビ)たち」とも。
大豆は蒸し、ついて団子にして吊るし、自然にコウジカビを付着させる。こうじの種類、作り方、色などは何種類かある。