メチシリン耐性黄色ブドウ球菌について

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌Methicilin-Resistant-Staphylococcus aureusの頭文字をとってMRSAと略称されます。1928年、フレミングによって発見されたペニシリンは、肺炎球菌、溶血レンサ球菌、ブドウ球菌、炭疽菌、などのグラム陽性菌に強い抗菌力を示しました。しかしその後、ペニシリンを不活性化する酵素ペニシリナーゼを産生するブドウ球菌(S.aureus)株が出現しました。しかも、ほかの抗生物質にも耐性を生じるいわゆる多剤耐性化がおこったのです。これに対し、ペニシリナーゼに安定な新しい半合成ペニシリンの開発が試みられ、1960年にメチシリン、オキサシリン、クロキサシリンなどの抗生物質が次々と開発され、ブドウ球菌(S.aureus)に対する治療上の問題は一応解決しました。ところが、1961年イギリスで早くもメチシリンに耐性を示すブドウ球菌株が発見されました。その後1960〜1970年代のはじめにかけて、欧米ではMRSAが急速に拡大し、病院内での免疫機能の低下した患者に感染が拡大しました(この耐性菌にはバンコマイシンを使用)。日本では、そのころ、セフェム系抗生物質を使用していたので、MRSAの出現は1982以降急速に拡大して、MRSAによる院内感染が医療現場で深刻な問題となっています。

 
 2001年4月、平松啓一・順天堂大学教授ら国内共同研究グループがMRSAのゲノム解読に成功しました。MRSAのゲノムは約280万塩基対で、遺伝子の数は約2700個。バンコマイシンに耐性を持つタイプはそのうち96%までが共通だったそうです。



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