品質保全編
不良、手直しについて考える
 品質保全の展開の前に、不良や手直しについて整理してみよう。
 工程内で発生する加工不良や手直しは、設備総合効率を阻害する率から見ると僅かであるが、工程能力の低いラインでは不良を出さないために頻繁な抜取り検査や、寸法調整など品質管理のために多くのムダな工数を掛けているのが実態である。さらに始末の悪いことには、不良の手直しは廃却不良とならないため不良率の指標に現れず潜在化している。その上で多くの手直し工数を掛けている。特に突発的な不良は、その対策も迅速に取られるが、慢性的に発生している不良や手直しは対策もいろいろ行ったが良く成らないと諦められている事が多い。
 また工程内で発生する加工不良や手直しはいつかは次工程に流出し、納入不良と成り、それらの選別に多大な工数損失や、重大クレームとして膨大な損失を被る事になる。
 不良、手直しの品質改善は管理面の改善(結果の管理)と固有技術面の改善(要因の管理)が車の両輪として実施されてこそ改善の効果が現れる。さらにそれらを維持することが出来る。ここでは固有技術面の具体的な改善方策について記す。
1) 製造段階での不良の分類 
 造段階での不良をその発生頻度から分類すると以下のようになる。
@突発的発生不良 
 通常は安定した品質を維持しているが、突然不良が発生するもの、特に人の作業に関わる加工や組立てで発生する場合が多い。
A慢性的バラツキ不良 
 工程能力がCpK=1.67以下のバラツキの加工で慢性的に不良が発生しているもの、設備、工具の機能低下により発生している場合に多い
2) 不良を発生させる要因の分類。 
@設備、型工具が不良を作る
 設備、型工具の劣化による機能低下が要因で発生する不良。
A人の作業やシステムが不良を作る
 人の組立、検査、記入、梱包、ラベル貼付け作業方法の習熟不足や標準作業を守らない作業や、ポカミスから発生する不良。また生産を指示するシステムへの入力ミスなどからも仕様違いや、設計変更指示ミスなど生産仕様情報から発生する不良。
B設備と人の作業接点で不良を作る 
 設備や型工具の段取り、交換、調整作業で発生する不良。
C材料が不良を作る 
 原材料や購入部品のバラツキや不良が、当工程の不良を発生させる不良 
D工場環境、運搬、物流が不良を作る
 粉塵、ゴミの侵入、錆の発生、傷、打痕など環境や運搬物流過程で発生する不良。
3)不良、手直し改善取組みニーズの分類 
 不良、手直しの改善は一般的に次のようなニーズから取組されている。
@次工程への不良流出や納入不良の発生を無くしたい。(お客さまニーズ) 
A不良の廃却損失金額や手直し工数が大きいため無くしたい。(生産性コストニーズ) 
BTQCやTPMの活動として品質の目標を達成したい。(目標達成ニーズ)
 いずれも品質向上の直接的必要性から発せられるニーズであるが、品質のレベルが物造りの総合力(製品設計〜工程設計〜生産)を計る尺度の一つであり不良、手直しをゼロにして品質向上を計る事が、この物造りの総合レベルを向上させるという認識をもち、そのために改善を行うというニーズを持つ事が重要である。
4)不良、手直し改善のアプローチ。
 上記のニーズから改善のアプローチは次のように分類される
@現実に発生している不良流出や納入不良、または工程内不良の最も発生頻度の大きい工程から取組む。(スポット改善型または品質個別改善型)
A現実に発生しているいないに関わらず、その製品の初工程から完成までの全ての工程の品質特性を総点検して、全ての工程の不良を無くし、再発防止の仕組みを作る取組み。(じゅうたん爆撃型または品質保全型) 
 TPMの活動では個別改善として@項の取組であり、品質保全としてA項の取組みとなるが、両方の改善が併用される。改善の基本手法については両方共同じである。
5)改善の方策分類は次のようになる
@製品の品質管理や仕組みの結果系の改善 
 製品の要求品質から、製造各工程での品質特性とその管理基準を設定し(QA表)、設定された頻度で製品を検査し、管理図を用いて所定の品質特性に維持されているかを、またバラツキが許容値の中に入っているかを管理する(工程能力の測定管理)。以上の仕組みと日常管理をきっちり実施するために改善を行う。
A設備、型工具による要因系の改善 
 設備によって加工、組立てされている工程では、設備や型工具の機能低下が品質不良を起こす要因になっているため、品質特性と設備、型工具の機能部分の相関を掴み、(QM表)その機能部分の管理基準を設定し機能の劣化部位の復元を実施し、それらを維持管理する仕組みを造る改善を行う。
B人の作業による要因系の改善 
 人の作業で加工、組立てされている工程では、作業の方法やポカミスが品質不良を起こす要因になっているため、品質特性と作業方法の相関を掴み、作業方法の改善とポカヨケの仕組みを造る改善を行う。          
 
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