TPM指導会の上手な受け方10箇条

1.工場長,部課長,係長は必ず同席する事。
2.事前準備を必ず実施して指導を受ける事。
3. データを取らず、感じで物を言わない事
4.指導を受けたい事を整理して置く事。。
5. 悪さ加減をかくさない事。 
6.言い訳と反発をせず素直に指導を受ける事。  
7.発表でなく、説明する事。  
8.問題解決策を求めない事。
9.指導された事を必ず期日までに実行する事。
10.水平展開を必ず実施する事。

[解説]

第1条・工場長以下、部課長, は必ず同席する事 

指導会で最も重要な条件は、工場長以下, 管理者である部課長が同席することです。 さらに時間の許せる限り時々社長、生産担当役員も参加する事が指導会の効果をより一層高めます。なぜならば、直接指導を受ける職場は、工場長以下管理者が同席している事により、コンサルタントからの指導内容と次回迄に実施する課題の約束は工場長に対しても約束することになるからであります。 
さらに工場長以下管理者はコンサルタントの指導内容を、自分の立場で何を行うべきか考えなければならないからでもあります。まして社長や生産担当役員の同席では、指導会の重要性を感じ効果はさらに大きくなります。 
また、後日の社長トップ診断を実施する場合には、コンサルタントの指導内容を受けたトップ診断が実施出来るからであります。

第2条・事前準備を必ず実施して指導を受ける事

推進事務局は毎月の指導会に、何を指導受けるかをきっちり準備する必要があります。   
 全体の推進方法の指導、分科会の指導、各職場の指導はどの職場に自主保全の指導か個別改善の指導か等を予め半年ごとの計画を立てて置くと良い。
 そして各職場では指導会前に、自主保全ならば今まで進めてきた経過と今後の進める計画、そして現在困っている事など、そして個別改善では指導を受ける改善テーマの内容、現状把握状況や解析状況を分かる様にきっちり活動板に整理しておきます。
 継続指導を受けているテーマについては、前回までの活動経過と指導内容、その後指導内容にそって実施した事を整理しておきます。
 コンサルタントは連日各社の職場と問題の指導を行っているので、継続テーマと言えども前回迄の経過を簡単に説明すれば思い出して頂けるからです。 
 
第3条 ・データを取らず、感じで物を言わない事 
  
 せっかく指導を受けるテーマの準備されても、現状把握で不具合の発生データが無かったり、バラツキ度合いのデータが無かったりでは、指導を受ける資格がありません。
「時々発生します」とか「ほとんど発生しません」といった感じで物を言うことは禁句です。 
特に現状把握のデータでは、筆者は4W1H1F1Tのキーワードでデータをとる事を推奨しています。

What ------------ 何が、何の種類
Where ---------- どの部位、場所で
Who -------------- 誰が、(どの設備が)
When ------------ どんな時
HowMuch------- どんな量、大きさで
Frequency -- どんな頻度で
Trend ---------- どんな傾向で 

 とくにWhen(どんな時)が非常に重要である。一般的などんな時の分類は・連続運転中・段取り換え時・朝の立ち上げ時・昼休み後・勤務交替時・工具交換時・チョコ停止時・その他に分類されますが、問題は連続運転中のさらに「どんな時」のデータを細かく取る必要があります。
例えば朝の立ち上げから一日の連続加工の中でどう変化しているかは、連続データーを取らないと分からないからです。     
 この調査方法は「一直連続測定方法」と称しています。さらに月曜日から週末の一週間でどのような変化があるのか調査する「一週間連続測定方法」、さらに季節による不具合の発生調査も必要な場合があります。いづれにしてもこれらの測定は単に不具合の結果測定だけでなく、設備の温度や作動油、加工液の温度、工場内の温度、湿度の測定と合わせてデータを取ることが重要であります。
     
第4条・指導を受けたい事を整理して置く事 

 それぞれの分科会や、職場で指導を受ける準備が整ったら、コンサルタントの先生に何を指導受けるか整理しておきます。 例えば自主保全ならば、そのステップに於ける活動の進め方が良いのか?不具合のエフ付けに洩れは無いか?エフ取り改善方法はよいか?
 個別改善では、改善の手順や現状把握の仕方は良いのか?不具合の発生メカニズムと原理原則の見方は良いか?分析方法は良いか?改善の視点は良いか?歯止め維持管理方法は良いか?などを整理しておきます。

第5条・問題解決の答えを求めない事 

 指導を受けたい事は、第4条のように問題解決のプロセスであって、決して解決の答えを求めてはいけません。
 筆者の体験する例では、コンサルタントは何でも知っているはずだからと、直接問題の解決策を求める質問がある。筆者はそんな質問に対して「問題の解決策はあなたが考えなさい、それよりこの問題の現状把握の仕方はよいのか?不具合の発生しているメカニズム原理原則は?解析の方法と手順はよいのか?改善の視点は良いのか?歯止めの仕方は良いのか?等の質問をしてほしい」と答えています。
 なぜならば、例え解決策が分かっていて、それを直接指導して、その通り問題が解決した場合はそれだけで終わってしまうからです。決して次の問題解決の力になりません。問題解決のプロセスを指導で学んでほしいからです。

第6条・悪さ加減をかくさない事

 コンサルタントの先生にこんな事を言ったら馬鹿にされる、恥ずかしいと言って悪さ加減を隠したくなりますが、決して悪さ加減を隠してはいけません。
 悪さ加減を隠しては、その悪さの改善指導を受けられないからです。悪さを良くする活動を行っているわけですから、一時の恥を忍んで指導を受けましょう。 

第7条・言い訳や反発をせず素直に指導を受ける事

 コンサルタントからの指導に対して、ついつい出来ない言い訳や反発をしたくなる場面や、さらに出来ない理由をとうとうと述べてコンサルタントを説得するような場面があると思いますが、言い訳や反発、説得をしても決して問題の解決にはなりません。
 素直に指導を受ける姿勢が重要です。そして出来ない理由を分析して、出来るように改善しなければなりません。
 しかし、素直に指導を受けると言っても、馬の耳に念仏では困ります。きっちり指導内容を理解して欲しい、もし指導内容を理解出来なければしつこく理解できる迄質問して下さい。決して中途半端な理解をしない事が重要です。
 筆者の体験でも、素直に指導を受ける職場は指導内容を理解する迄しつこく質問の矢が飛んできます。そして改善のスピードも早く、活動が活性化している職場です。 ところが言い訳ばかり言っている職場と、何を指導しても黙って聞いているだけで反応のない職場は、改善が進まず元気がなく、活動の進捗が大巾に遅れている場合が多いようです。

第8条・発表でなく、説明する事 

 指導を受けるテーマについて、事前準備した内容をコンサルタントに説明する時に「それでは−−−−について発表します」と言う例が多い。筆者はすかさず「指導会は発表会ではない、今までやってきた事を説明して下さい」とお願いしています。
 発表は社内でまたは外部の発表会で行う。よって改善事例も解決した内容になります。ところが指導会は未解決のテーマについて改善のプロセスの指導を受ける場ですから、現状把握や改善経過の説明となるわけです。
 活動板には指導を受けるテーマの内容を説明するために判りやすく整理してあれば良い。発表会のような手間をかけた飾り付けはまったく必要ありません。

第9条・指導された事を必ず期日までに実行する事

 各職場での指導会テーマは、多くの改善テーマの代表(モデルテーマ)であるから、指導された事をきっちり期日迄に実行出来なければ当然他のテーマの改善も進みません。
  継続指導テーマでは、次回の指導会迄にこれとこれをやる事と宿題が出されますが、翌月になっても極一部しか出来なかったとなると、翌月の指導会では次ぎにやるべき事の指導が受けられなくなります。これでは活動のスピードは上がりません。

第10条・水平展開を必ず実施する事

 指導された内容は、指導テーマだけの指導ではありません。指導テーマが代表して指導を受けているのですから、指導内容を下記のようにきっちり層別して、それぞれ水平展開します。
@活動全般に共通する指導項目
・活動の考え方・活動の進め方・現状把握の  仕方・解析の手順・改善の視点・歯止め
A固有の指導項目
・固有技術・改善の事例・固有の解析手法
B世間相場の指導
・他社の事例と改善レベル
 活動全般に共通した指導内容は、工場全職場への水平展開であり、固有の指導内容は、類似設備や類似問題を抱えている職場へ水平展開します。世間相場の指導は、自社レベルとの比較であり、改善目標へのターゲットとなります。
  そのためには推進事務局は指導会での詳細な層別した記事録を作成して、全職場に水平展開しなければなりません。
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