個別改善編その一

総合効率の把握-1
[総合効率は何のために把握するのか]
 ロスの構造を明確にする最初のステップは、工場全ラインの設備総合効率と作業総合効率の把握である。設備総合効率の詳細については「TPM展開プログラム」を参照していただく。作業総合効率については、手作業主体の加工や組立てラインの総合効率として筆者が整理し名付けたものであり「プラントエンジニヤ誌」1995年に掲載した。その要約は次ぎの章で述べる。
 ところでこれら総合効率をきっちり把握する狙いは、阻害ロスを明確にすることであるから、稼動停止の時間記録だけでなく、なんで停止したかをきっちり記録できる仕組みを作る事が重要である。ある工場の例で、設備総合効率は75%でその内訳は時間稼動率85%、性能稼動率90%、良品率99%とここまでの数値が分かるが、時間稼動率の阻害ロスが故障なのか、段取りなのか分からない、また性能稼動率の阻害ロスがサイクルタイムロスなのか、チョコ停なのか分からない。これではデーターを取り現状の実力値を把握する事が目的になってしまう。
 このような内容の無い総合効率把握のほとんどは、設備に付帯した稼動率計である。停止時間を自動記録しても停止要因を入力するシステムが不十分であり、オペレーターの手動入力に頼っているからである。オペレーターは何のために総合効率を測定するのか分かっていないから正確な入力ができない。
 また、手書き記録で測定する仕組みを展開すると、作業しながらとても記録出来ないと拒否反応がありなかなか定着しない。 そこでどちらの記録方法にしろ、オペレーターに総合効率の必要性と狙い、「阻害ロスを一つ一つテーマとして個別改善するために記録する」ということをきっちり教育してから展開すれば、より正確な総合効率の記録が可能になると筆者は信じている。
[時間当り出来高管理を併用せよ ]
 筆者は総合効率と平行して、時間当り出来高管理の併用を推奨している。総合効率管理はあくまでも測定期間の効率の平均値であり、生産ラインは一時間ごとにいろいろなロスにより出来高が刻々と変わる生き物である。この時間ごとの出来高のバラツキを見る事が、総合効率とは別にラインの実態を把握する見方となる。また時間当り出来高の平均値を併用すると、総合効率との関連も把握出来、さらにラインの投入人員で割れば一人当りの時間当り出来高となり、すなわち直労生産性の指標となる。
 時間当り出来高バラツキ管理面からの個別改善の視点は、時間当りの出来高のバラツキ要因を個別改善して、まずはバラツキのない安定した生産ラインにすることである。その次ぎに出来高の平均値を上げる個別改善を実施する

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