「二酸化炭素問題へのひとつの提案」

二酸化炭素(CO2)は非常に水に溶けやすく、気温が0℃のときに1気圧の水1ccに溶ける体積は1.17である。気温が40℃に上がれば、二酸化炭素が水に溶ける体積は0.53倍に下がる。

現在エアコンの住宅向け国内累計出荷台数は約7100万台で、貨物・乗用車・軽自動車に使用されるエアコン7500万台、衣類乾燥機等の除湿器まで含めれば、1億5000万台は超える。

エアコンが稼働しはじめると大気中の水蒸気を凝固して、1時間・1台当たり、2リットルもの水を排出する。室内に冷風を送り出す際にファンを回転させるから、エバボレータ表面上で冷たく凝固した水は、室内の空気にさらされて大量の二酸化炭素を溶かし込むことができる。

「二酸化炭素を回収すること自体にもエネルギーが必要になる」と識者は、回収の難しさが喧伝している。しかし、エアコンを動かすエネルギーが、同時に、二酸化炭素を捉えているのである。誰もそのことに気付かないだけである。二酸化炭素を回収するために、吸収液や吸着剤を使い、加熱したり圧力を下げたりするなどする余分なエネルギーは、必要ないのである。

試しにエアコンと除湿器が凝固した水のPHを計ってみたところ、機種によって、6.77から4.89まで、と若干のばらつきはあるものの、pH7.0が中性だから、採取した水はいずれも酸性に傾いていた。我が家の近くには国道が走っているので、自動車が排出した酸化窒素(NOx)等が紛れ込んで酸性になったとも考えられる。そこで、水道水で洗浄した500mlのペットボトルの中に採取した水を移し換えて、熱湯のなかに漬け込んでみた。二酸化炭素が捉えられていれば、熱湯で温められて水が手放した二酸化炭素が、必ず出てくるはずだ。ペットボトルの口にセンサーをかざしてみた結果が次の通りである。

実験直前の排出液pH4.89

排出液を加熱

室内の二酸化炭素ppm625

排出液から出た二酸化炭素ppm940

加熱後の排出液pH5.00

pH4.89であった排水が、熱湯処理をした後では、pH5.00へと、僅かだが中性の方向へ傾いて、ペットボトルの口にかざした二酸化炭素センサーは940ppmを示している。

エアコンが凝固した水には、やはり二酸化炭素が捉えられていたのである。

ところが上の写真のように、私たちはエアコンがとらえた折角の二酸化炭素を、そのまま屋外に棄てしまっている。しかも、室内からエアコンが奪った熱を吐き出す室外機の側に、排水を垂れ流すという最悪のやり方をとっているところが多い。排出された水は、室外機からの熱風さらされるばかりでなく、太陽熱で熱せられたコンクリートやアスファルト面から、二酸化炭素を手放しながら、再び水蒸気として大気中にもどっていく。カーエアコンからの排水も同様といえる。

そもそも、エアコンやカーエアコンから出る大量な二酸化炭素を含んだ水を、コンクリートやアスファルト面に、無頓着に垂れ流しにしていること自体が問題なのである。

水蒸気も二酸化炭素も保温効果をもつから、大気はますます温かく感ぜられ、人々はエアコンをフル回転させることになる。消費電力が多くなればなるほど、エネルギーを生み出すために二酸化炭素が増加していく。省エネどころではなくなってしまう。

エアコンの温度設定を高くしたり、節電に役立つこまめにエアコン掃除するなどの省エネ対策ももちろん大切だが、これまで見過ごされてきたエアコンの排水にももっと注意を向ける必要がある。室外機やコンクリート、アスファルト面に垂れ流しをするのではなく、庭の日陰に掘った穴へ流し込んだり、カーエアコンなら、排水を蓄えておいて仕組みを考えて、一杯になったら下水や用水に流せばいい。そうすれば二酸化炭素を大量に抱えこんだ水は、地面の奥深くへと染みこんで地下水や覆水流となり、やがて川に流れ込んで大海原の中に蓄えられることになる。下水や用水に流した水も同様である。

何れにしても、1億5000万台のエアコンから排出された水の処理を違えるだけで、温暖化の原因といわれる二酸化炭素の問題を、私たちの手で幾分かは緩和することができるはずだ。もちろん、二酸化炭素の問題は、二酸化炭素だけを解決すればいいというものではない。炭素(原子量12g/mol)が燃焼して大気中に二酸化炭素(分子量44g/mol)が増えるということは、同時に酸素(分子量32g/mol)がそれだけ失われるということでもある。安定した二酸化炭素分子をどうにかして分解して、大気中に再び酸素を取り戻す技術を、早急に編み出さなければならない。

二酸化炭素を大地や下水や川に流したり、識者が主張するように海や大地の奥底に固定してみたところで、問題を先送りしたにすぎない。しかし、とにかく、私たちが手っ取り早く始められるところから始めよう。                  (終わり)

使用機材

CO2デテクタ(C2D−HO3) 株式会社ユー・ドム

PH Meter (PH5011A) 株式会社カスタム               

参考資料

環境省地球環境局「地球温暖化解説16二酸化炭素の固定」)http://www.env.go.jp/earth/cop3/kanren/kaisetu/16.html

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