二酸化炭素の増加量が、経済学でいうところの「収穫逓減の法則」に似た動きをする理由
(図)
大気中に僅か0.037%の二酸化炭素を捉えようとすることは、大海に落ちた数滴のインクを、正に再びかき集めようとするようなもので、そんな難しことが化学にど素人の私などに出来るはずもない。
取り急ぎ教科書の必要なところをチェックし、亡父の居間であった和室(六畳)に閉じ籠もった。自分が吐き出している二酸化炭素の量を計ってみようと考えたのである。
人間が呼吸することで吐き出す二酸化炭素量は1人1時間当り0.02m3。 2リットルのペットボトルで換算すれば約10本分である。
私が閉じ籠もった和室は、南側の仏間との境は障子、北側の隣室との境は襖、東側は押し入れだから当然襖、西側の隣室とは和壁で仕切られた四方を閉ざされた空間だから、二酸化炭素の濃度は、私が呼吸をする度に一様に増加し続けるだろう、と考えた。
ところが何度試みても、図の「平成18年6月2日」のグラフのような、経済学でいうところの、「収穫逓減の法則」に似た曲線を描くのであった。
どうしてだろう? センサーに原因があるとは思えない。解らないままに10日ばかりが過ぎた。
平成18年6月12日は、16歳の若さで亡くなった、母方の、祖父の姉、の祥月命日であった。仏間で線香を焚いて合掌してから、障子を閉じて二酸化炭素濃度の実験に入った。
それが図の「平成18年6月12日」のグラフである。
70分が経過すれば少なくとも500ppm以上は増加するはずの二酸化炭素が、その日は何とたったの4ppmしか増加しなかったのである。
その日に限ってどうしてこんな低い数値になったのか。
原因が掴めたとき、二酸化炭素が「収穫逓減の法則」に似た曲線を描く理由が解ったのである。
私はその日、線香の煙をはき出すために仏間の換気扇をつけた。だがスイッチを切り忘れて、そのまま実験に入ってしまった。
障子や襖なんかでいくら部屋を閉め切ったところで、二酸化炭素は非常に小さい物質だから、紙で出来た仕切りなんかは平気で通過してしまうのである。
もちろん、屋外を強風が吹き荒れる日なども、我が家のような木造家屋の室内は、当然外気の影響を受ける。
二酸化炭素はそうやって、大海に落ちた数滴のインクではないけれど、障子や襖などの紙で出来た仕切りなんかは通過して、濃度の高い方から低い方へと、絶えず移動し続けていくのである。
「収穫逓減の法則」に似た曲線を描いていたのもそれが原因で、もしも完璧に閉ざされた室内であったなら、逃げ場を失った二酸化炭素は、右上がりの直線で一様に濃度を上げ続けていくはずである。
この事実を教えてくれた御先祖様には、心から感謝している。(合掌)
使用機材
CO2デテクタ(C2D−HO3) 株式会社ユー・ドム