私たち人間は1日にどれだけの酸素を消費して、どれだけの二酸化炭素を吐き出しているのでしょうか?
ここで、二つばかり化学の約束ごと。
@いかなる種類の物質も、その1mol(1グラム分子)は(6.02×10^23)個の分子を含みます。
例えば、酸素分子O2は、酸素原子2原子から成るから、その分子量(分子の重さ)は32(16×2)で、これを1molといって(6.02×10^23)個の分子を含んでいることになります。
Aすべての物質の1molは同数(6.02×10^23)の分子からできていて、それが気体であれば、どの気体でも0℃、1気圧でほぼ22.4l を占めています。
この二つの約束に基づいて、早速、私たちが1日に呼吸することで消費している酸素量と、吐き出している二酸化炭素量を計算してみましょう。それが下の表になります。この実験は90分間にわたって行い、締め切った私の部屋(6畳)てデータをとった値を基に計算しています。
21840gの部屋の中に427ppmの二酸化炭素が存在するということは、1ppmは0.000001%(これを百分率に換算すれば0.0001%)ですから、私の部屋の二酸化炭素量をg算出するには、部屋の大気量21840gに0.000427を乗すればいいですから、二酸化炭素量は9.3gということになります。…外気の二酸化炭素濃度は370ppmですから、それに較べて部屋の中はちょっと高いようですが、その高い二酸化炭素濃度が90分後には799.5ppmまで上がっています。この二酸化炭素濃度は、恐竜時代の大気の状態にだいぶ近づいたことになりますね。
約束ごとのAから、この二酸化炭素量をmol計算すれば、すべての物質は、それが気体であれば22.4gですから、9.3÷22.4から0.4molということになります。
また約束ごとの@から二酸化炭素のグラム数を出そうとすれば、すべての物質の1molは同数の分子からできているのですから、二酸化炭素の分子は、炭素(12g)ひとつと酸素分子(16g×2)の結合ですので、44gということになります。それが室内に0.4molあったのですから、44×0.4から18.3gと計算されるわけです。
炭素量も酸素量も同様に計算します。
それにしても二酸化炭素量18.3g増えるということは、大気中から酸素13.3gが同時に失われていくということです。
本題からは脇道に逸れてしまいますが、温暖化対策として、増えすぎた二酸化炭素を海の底や地中に埋めてしまえという説が有力になっていますが、それでは同時に酸素もそれだけ失っているのだ、ということが無視されています。
酸素量は現在大気中の20%を占めます。そして15%になったら、火もつかなくなるといわれていますから、埋めてしまえでは何の解決にもなりませんね。
人間が生み出した二酸化炭素は、人間の自己責任で、いくら費用がかかろうと分解して酸素を取り出し、大気に戻さなければなりません。臭い物にフタでは解決したことにはならないのです。
人間も産業も、酸素がタダで得られるものですから、ついうっかり、簡単に消費してしまうことになる。なにしろ、タダで手に入れられる(酸素)を何の頓着もなく消費したり、入らなくなったものはタダで棄てる(廃棄物による野や川や海の汚染)方が、経済の合理性にかなっています。
繰り返しになりますが、経済の合理性からいえば、かかる費用は少なければ少ないほどいいわけで、タダで手に入るならそれにこしたことはない。
この考え方の象徴となる記事「めざせマッハ4 次世代エンジン」が、2006年3月31日A新聞朝刊の総合2頁に掲載されていた。
「従来の液体燃料ロケットの多くは、重量の約7割を液体酸素が占めているが、この代わりに空気を使うため、大幅に軽量化できる」。
大気中の酸素を何の頓着もなく消費し、また不必要になったもの(ここでは二酸化炭素と読み替えてください)は、費用をかけて回収することもしないで自然に棄て、そして先ほどの新聞記事のように、そのことを少しも疑問に思わない。
経済社会が金科玉条としてきた経済の合理性にも、やはり陰の部分が有ったというわけです。
地球が人間のためだけのものだというのは、人間の大いなる勘違いであり、単なる思いこみに過ぎないのです。
ちょっと余談が過ぎました。本題に戻りましょう。
室内の二酸化炭素量(g)計算式表 | 炭酸ガス濃度(前) | 炭酸ガス濃度(後) | 炭酸ガス濃度(90分間の増加量) | ||
部屋の大気量(m^3) | 21.84 | 0.000427 | 0.0007995 | 0.0003725 | |
高(m) | 2.4 | ||||
長(m) | 3.5 | ||||
幅(m) | 2.6 | ||||
g換算 | 21,840 | ||||
室内の二酸化炭素量(g) | 9.3 | 17.5 | 8.1 | ||
mol | 0.4 | 0.8 | 0.4 | ||
二酸化炭素量(g) | 18.3 | 34.3 | 16.0 | ||
炭素量(g) | 5.0 | 9.4 | 4.4 | ||
酸素量(g) | 13.3 | 24.9 | 11.6 | ||
1日換算 | 二酸化炭素量(g) | 207.7 | |||
炭素量(g) | 69.7 | ||||
酸素量(g) | 186.0 | ||||
CO2 | C | O2 | 発熱量 | ||
1mol | 44.0 | 12 | 32 | ||
0.4 | 0.4 | 0.4 | |||
比熱(J/Kg・K) | 1.236 | 0.71 | 0.92 | 0.394 | |
実験値(J) | 0.449 | 0.258 | 0.334 | 0.143 | |
栄養学cal換算値 | 1,000 | ||||
90分間kcal | 143 | ||||
1日換算kcal値 | 2,290 |
上の表でお解りの通り、私の部屋の大気量は21,840gになります。
この大気中における炭酸ガス濃度は実験開始前には427ppm、それが90分後には799.5ppmまで上昇しています。
差引しますと372.5ppmだけ、90分間に炭酸ガスを吐き出したことになります。
1人の人間が1時間に輩出する炭酸ガスの量は20gといわれています。上表では90分間で8.1g増えた計算になっているのは、 測定時、静呼吸のみで身動きをほとんどしなかったせいと考えられます。
以下は付録です。
このことから、約束ごとの@とAから、大気中から取り入れた11.6グラムの酸素をつかって、食事で体内に取り入れた炭素4.4グラムを燃焼させ、その結果炭酸ガス16グラムを大気中に吐き出したということになります。
炭素4.4グラムを酸素11.6グラムで完全燃焼すると、炭酸ガス16グラムと同時に394J(ジュール)の熱量が出てまいります。下の表がそれです。
この熱量が私たちの生きている証です。
394Jをcalに直して千倍すれば栄養学上のkcalですので、1日に2,290kcalということになります。
しかし、これは20代男子の1日の必要カロリーです。
61歳の私には少し多すぎる数値ですが、まあ、概算ということで大目に見てください。
この項は以上です。
使用機材
CO2デテクタ(C2D−HO3) 株式会社ユー・ドム