西武鉄道車両検修工場一般公開
検修場祭り見て歩記・・4
モーターの整備作業場や、台車の整備を拝見。



こちらはモーター、主電動機の整備作業場、気噴(圧縮空気でゴミを吹き飛ばす)を終えたモーターが界磁部分と電機子に分解されそれぞれが点検整備されていきます。
”ヨーク”と書かれているのはモーターのケースと界磁コイル、少し黒っぽく見えているのが界磁コイルです、奥の方がカーボンブラシ側・・これから点検整備に入るのでしょう。
界磁部分もステーターとか固定子とか表示の様に”ヨーク”とか呼び方が色々出てきます。


ヨークから引き抜かれた電機子、これから整備がされるのでしょう。
手前は整流子、奥は冷却用の自己通風ファンと見られます、電車が走行時に耳にするモーターの音はこの通風ファンの音が大半を占めます、高速になるとちょっと騒々しい”ウワ〜ン”と言う音となります。
新型のインバーター制御車ではモーターが密閉に近いのでかなり低減されています、代わりに発車加速時と減速停止時にはインバーターのスイッチング動作により独特の音を発しますが・・。
しかしこの様に電機子単体で見ると実際に動力を生み出す磁気回路部分(真ん中の円筒部分)の幅は僅か幅300mm程度なのですね、整流子部分では動力を発生しないので・・最近の誘導電動機は整流子が無い分電機子の幅一杯まで動力を生み出す部分になります。


整備を終えて奇麗になった電機子、電機子も”回転子”とか”ローター””アーマチュア”等と呼び方が複数出てきます。
左は交換されたのかピカピカの整流子部分、直流モーターの特徴的な部分でも有りますがカーボンブラシと擦れ、スパークが飛ぶ所でも有るため定期的な点検と修正、交換が必要になり一番手間のかかる所でもあります。
右は電機子を正面から見た所、中心のシャフトに穴が開いていて向こう側が見えます、この穴の中に歯車箱の小歯車と繋がる撓み軸が通ります、狭軌の日本ならではの構造で中空軸平行カルダンと言われる構造になるのですが・・・この辺りは図がないと理屈がなかなか飲み込めない部分ですね。


主電動機と同じ様な形ですが・・床下機器の代表的な物の1つです。

上の3枚の画像は電動発電機(MG、Motor-Generator)と言う機器、床下にぶら下がっている物です、左がその外観、中はモーターと発電機の界磁部分を正面から、右はモーターと発電機の電機子で冷却用通風ファンも取り付けられています。
”電車に発電機?”とちょっと不思議かも知れませんが架線からの直流1500Vを直接車内で使うのは危険なので直流1500Vのモーターで直結された交流発電機を回し、その電力を照明や空調機器の駆動、制御回路の電源として使用するのです、特に冷房を搭載するようになってからは大型になりました。
直流モーターなのでやはり整流子とカーボンブラシが有り、メンテナンスが必要になる機器です、また架線電圧の変化や発電機の負荷の変化で発電電圧や周波数が変わらないように回路で工夫がされています。

この左画像も電動発電機ですが直流電動機側がブラシレスタイプのモーターになり整流子やブラシのメンテナンスがいらなくなった発電機です、整流子の役目を半導体が行い無接点ブラシレス化が出来ました。
床下機器では大きく重量もある物で、最近の電車では半導体を用いた”静止型インバーター”という機器に変わり架線からの電気を交流に変換し各機器へ供給しています。
電動発電機は床下で何時も一定の回転数で回っていて”キーン”と甲高い音を出しています、インバーターは四角い箱に収まり動く部分が無いので静か、機器の側で耳を澄ますと微かにスイッチング音で”チー・・”と言う音を聞くこが出来る程度です。
ただこのインバーターにもちょっと弱い部分があります、それは瞬間停電・・ちょっとでも給電が止まると出力側も止まってしまいます、パンタグラフの瞬間的な離線で発生しますが実際には複数のパンタグラフが有りますので頻度は少ないと思います、その点電動発電機は機械的に回っているので一瞬停電しても勢いで回り続けます。



こちらも床下機器の空気圧縮機(コンプレッサー)です、ドアの開閉、ブレーキの動力源となる圧縮空気を作り出します、乗る車両にもよりますが床下で”ダダダダ・・”と一番目立つ音を発するのはこれ、それでも最近のコンプレッサーは静かになりました。
左は西武で使われている数が一番多いと思われるHB-2000型、1分間に2000リットルの吐き出し量の性能です、丁度分解整備の途中らしくシリンダーヘッドが外してありますが低圧シリンダー(径の大きい方)と高圧シリンダー(径の小さい方)の2段で圧縮します、同じシリンダーが反対側にもありエンジンで言うなら水平対向4気筒の様な構造をしています。
右は新しいタイプでHS20X型、吐き出し容量や構造は同じですがより静かに動作します、またコンプレッサーユニットの下にアフタークーラーという冷却装置を備え圧縮にて熱を帯び膨張した空気を冷却しドレーン(凝縮水、圧縮することで空気中の水分が水になる)の排出も効率よく行えるようになっています。
西武では展示はされていませんでしたが”AK-3型”という旧式のコンプレッサーも存在します、これは茶色い”国電”時代に作られた物で動作音も大きく吐き出し容量も小さい物です、そのため2両編成の2401系初期型にリサイクルで搭載されました動作音も低速で”ドコドコドコドコ・・”とか”モゴモゴモゴ・・”と言った具合に動きます、どのコンプレッサーも直流1500Vのモーターで駆動されますが最近では交流誘導電動機で駆動される物もありモーターのメンテナンスフリー化が進められています。


乗り心地や走行性能安定性の要、台車


モーターや歯車箱が収まる台車、乗り心地や走行性能に一番関係する部分です、左は西武で使い慣れた台車で101系を始め2000系、3000系、4000系等に一番多く使われている台車です、空気バネは台車側に付いています。(空気バネ部分は台車と分離出来、車体に付けたまま台車を外すことも出来ます。)
また軸受け部分は走行時に軸の上下に合わせて摺動する部分がありメンテナンスが多く必要な台車でもあります。
右は6000系に使われている台車で空気バネは車体側に着いているため受け皿のみが見えています、こちらは軸受けの支持はゴムブロックを用いた摺動部分が無い物となりモーターと合わせてメンテナンスに手が掛からないタイプとなっています。
最新の20000系ではさらに軽量化された台車になっています。


左上の台車のモーターと歯車箱を結ぶ部分のアップ、殆ど隙間が無くモーターの軸を中空にしてその中に撓み軸を通す構造の”中空軸平行カルダン”と言う駆動方法を用います、線路幅の狭い日本独特の駆動機構といえるでしょう。
右は同じく右上の台車の駆動機構です、こちらは交流モーターを使用する分ブラシの部分が無いためモーターがコンパクトになり継ぎ手も余裕で入ります、この継ぎ手はWN型(少し斜めになった円筒型の物)と呼ばれ内部は歯車を組み合わせた様な構造になっています。
共にモーターは台車に固定され、歯車箱を含めて車輪はサスペンションの動きにより上下するため何らかの可動継ぎ手が必要になるわけです。


左の画は車体側のセンターピン(右画像の真ん中)が収まる穴・・この穴を中心にして台車はカーブに合わせ首を振ります。(6000系の台車例)
横方向(枕木方向)には可動出来横揺れを吸収するようになっていますが縦方向(線路方向)には殆ど動かず台車の駆動力を車体にしっかり伝えます。
またこの台車は車体の荷重を両脇の空気バネ受けで担うためセンターピン部分には車体の重量はかからず駆動力のみを伝達する構造になっています。
旧型車ではセンターピン部分が芯皿となり車体重量の殆どを担う構造の台車もあります。
電車の台車も色々な構造の物が有りますが西武の場合住友製の台車が多く使われています、電動車のFS-372や付随車用のFS-072等が代表的な台車、最近の新型車両では軽量化されたボルスタレスタイプの台車も増えてきました。

西武鉄道は機器のリサイクルが得意で廃車になった車両の台車や機器は改良して再利用をしています、10000系ニューレッドアローには廃車となった通勤型101系の台車を改造、メンテナンスフリー化(軸箱部分をゴム支持にし摺動部分を無くしました)し再利用、その為電動機は直流のままで制御装置も流用しています。
変わった所では同じく直流モーターの付けられていた101系のFS-372と言う台車に3相交流モーターを組み込み、新装増備した10000系ニューレッドアローに使ったり・・こちらは軸箱支持の改造は行われずそのまま利用・・まだまだ直流モーターを使用した車両が多いですが少しずつインバーター制御の列車が増えてきました。


最後のページ、主制御装置の展示風景です。

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