西武鉄道車両検修工場一般公開
検修場祭り見て歩記・・5
電車の心臓部とも言える主制御装置を拝見、複雑ですね。



電車に使われているモーターで今でも代表的な直流モーター、停止状態から回り出す時に一番電流が流れますが一番トルク(回転力)が強く出て、モーターの回転が上がっていくと流れる電流もどんどん減少しトルクも減少ていくと言う特性があります。
発車時にいきなり高い電圧をモーターへかけてしまうと力が出過ぎて空転したり電流が流れ過ぎてモーターを焼損させてしまうので何らかの方法でモーターへ流れ込む電流をコントロールする必要があります、その働きをするのが主抵抗器と主制御装置です。

デン!と展示してあるのは電車の心臓部でもある主制御装置(左画像)、2000系の物だと思われます、2000系はモーターの界磁電流を半導体によるチョッパ制御としているため制御器のステップ数は少な目に感じます。
中の画像はカムで開閉される接点部分、この接点の組み合わせでモーターと直列に繋がり電流を制限する抵抗器の数を調整します。
よく見ると閉じている接点、開いている接点が確認できますね、カムは”カムモーター”で運転手のマスコン操作に応じて間欠駆動されます。
電車が走り出し、モーターの回転が上がっていくと電流が減り回転力も落ちるので順次抵抗器を抜いて行きモーターへ流れる電流をほぼ一定になる様に保ち直線的な加速をします、60K位まで加速すると抵抗器は全て抜け、後はモーターの特性で加速を続けていきます。(界磁制御と言う事もしますがココでは省略〜・・)
西武の場合パンタグラフの付いた黄色い車両の真ん中辺りに乗ると床下で動作している主制御装置の音を聞くことが出来ます、駅を発車し30K位まで速度が上がる辺りまでが良く解り、床下より”カタ!・カタ!・カタ!・・”と言う音と共に微かに振動も伝わります、またその音に合わせて列車も僅かに加速の”ムラ”の様な振動を感じられます。
この制御のステップ数は細かい方が加速も滑らかで、モーターのトルク変動も小さくなるので乗り心地も良く雨の日でも空転しにくくなるのですが、あまり細かくすると抵抗の数が多くなったり制御装置が複雑になったりとその辺りのバランスが難しい所です。


左の画像は主制御装置の裏側・・結構半導体電子回路も詰まっています、緑色で縦に並んでいるのは抵抗器、この抵抗器はモーター用ではなく制御装置の回路用でしょう、ホーロー抵抗器と呼ばれ電気部品屋さんなどでも売っている物です。

右の画像は2000系等の界磁制御用チョッパ装置、半導体を用いモーターの界磁に流れる電流をコントロールします、ブレーキ時にモーターで発電した電力を架線に戻す”回生ブレーキ”の制御もこの装置で行います。
右側が大電流を扱うパワー部、左側はそのパワー部をコントロールする電子回路基板が多数並んでいます、ボード型マイコン基板も収まっている様です。



左の画像は主制御装置のカム軸です、茶色の板がカムでそれぞれ異なる形状をしています、これを一定角度ずつ回転させスイッチの開閉順序をコントロールします、このカム軸は一般の見学者が入れない所に置いて有ったため、係員にカメラをお渡しお願いして撮影して頂きました、有り難うございました。

右の画像は断流器(遮断器)の一種、大きなスイッチです・・制御装置やモーターなど走るための主回路の大元で数百アンペアと言う電流を入り切りする装置です。


こちらは主抵抗器(左画像)、モーターと直列に接続され上の制御装置との組み合わせでモーターへ流れる電流をコントロールします、ただ電流を熱に変えて消費するため効率が悪く最近では抵抗器の使わないインバーター制御の車両が増えてきました。
でも西武の車両はまだまだこれをぶら下げている車両が多いのですよね・・。
車両によってはファンで強制的に冷却するタイプも有りますが西武は自然通風冷却式です。
←の箱に入っているのはリボン抵抗器、こちらは何か補器類に使われている抵抗器で走行用モーターの抵抗ではありません。
西武の車両では101系、4000系、10000系等がこの抵抗器を床下にずらりぶら下げています、2000系にも付いていますが数は少な目・・実際に数えた事はありませんが・・。


こちらは空圧機器の整備部署の展示品、普段は人目に触れることのない小さな空気圧制御の部品を整備している所です。
圧縮空気の逆流を防ぐ逆止弁や電気的に圧力をコントロールする電磁弁など小さく目立たない部品ですが空気ブレーキの作用に大事な部品・・小さいと言っても机の上に並べるとゴツイものです。
左は101系や4000系、10000系等に使われているブレーキ制御弁、実際に圧縮空気を扱うのは下半分で上は電気ブレーキをコントロールするカムスイッチが収まっています。
2000系以降の車両は全て電気的にブレーキを制御するため空圧部分は無くブレーキ弁とは言わず”ブレーキ設定器”と呼ばれています、大きなロータリースイッチの様な構造になるでしょうか?。

置くところがあれば1台欲しいです・・しかしこれだけでも重量は想像ですが100Kg程度になると思います。


同じく空圧機器の整備部署に有ったのがこれ、整備後の慣らし運転と思われ一定時間間隔で動作を繰り返していましたがドアを開閉する”ドアエンジン”と呼ばれる物、左の物は2000系の物と見られ空気圧によって動くピストンの動きをラックギアにて回転運動に変え、アームを動かしてドアを開閉させる構造です。
画像で丸く見えるのがそのギア部分、アームは付いていませんがシャフト部分が回転していました、動作速度は全て同じに調整されドアの開閉速度に差が出ない様になっています。
←はギアを用いない直動型のドアエンジン、20000系辺りのドア用では・・ドアの上に組み込まれているタイプと思われます。


また車両工場へ戻りました、全般検査中の2000系・・ドアもシートも冷房装置のカバーまで取り外されています。
慣らし運転をしていたドアエンジンはこの編成、車体の物と見られます、意外だったのは車内の広告類はそのまま付いていたこと。
このイベントの時は全般検査に入っていたこの2000系が各所で使われていました、塗装ブースの実演、台車抜き、台車入れの実演など・・。


見学順路通りには歩きませんでしたがのんびり一回りをしてお土産コーナーへ・・検修場ならではの物も多数販売、係員の手づくり品も有りました・・小遣いに余裕が有れば欲しい物も沢山・・記念に西武の車両がシールになった物と2000系のチョロQを購入。
置くところが有れば欲しかったのは10000系特急の2人がけリクライニングシート・・何と1000円!、ただし自分で運搬することになります。
結局閉場時間までブラブラし、また飯能まで運転される臨時列車の最終列車へ・・臨時の改札口でカードに入場処理をしてもらいます、やはり東飯能から乗車した扱いになります、切符を買った人は何と硬券・・下車駅で乗り越し清算をする扱いですが記念にもらえたのかなぁ・・。
臨時列車は来るときに所沢から乗ってきた9000系、今度はピット横の通路を案内され乗車口へ移動、線路より低いところを歩きます・・画像2枚はその9000系の下回り・・展示されていたコンプレッサーや台車が目の前に有ります、この様な所も普段は歩けません、最後まで楽しませてもらいました。
臨時列車は予定通り15時にゆっくりと発車、検修場の係員、臨時の駅員皆さんがてを振って見送ってくれました、何となく嬉しい気分に・・、来る時と同じように列車は何回も停車をして安全確認を行いながら運転されます、振り向くと既に検修場のシャッターは全て下ろされ人の姿は見えません。
来るときにも感じたのですが車掌さんの車内放送で検修場への引き込み線上では一時停止後”間もなく電車が動きます・・”と何度も案内していました、でも飯能駅を出るときには”電車が発車します・・”と放送、帰りも引き込み線ではずっと”動きます・・”だったのが営業路線に入り一旦停車後は”おまちどうさまでした、電車が発車します・・”う〜ん、営業線と通常は営業列車が走らない引き込み線で言葉を使い分けていたのかなぁ・・。(^^;)
臨時電車は一気に加速、東飯能駅を通過し何と飯能駅の特急専用ホームへ乗り入れ・・なるほどここなら定期列車に影響を与えません、乗っていた人は全て検修場からのお客と解っているので特急改札は開けたまま通過しでそのまま乗り替えへ・・想像していたよりもしっかり楽しむことが出来た一日でした、安全を第1に考え普段は見たり触ったり出来ない所を工場にある物を上手く利用し楽しませてもらえました、また来年も時間に都合を付けて見に来ようと思います。


ご乗車有り難うございました。
トップページへ折り返します。