西武鉄道車両検修工場一般公開
検修場祭り見て歩記・・3
検査に入っていた地下鉄乗り入れ用車両6000系を拝見
普段は見られない車輪単体や走行用モーターなどもゴロゴロ・・。

高所作業車とは別に高所作業通路を利用して検査に入っている車両(左、6000系)の天井を紹介するコーナー、普段は係員しか歩かない所ですが安全柵を設けて一般の方も安全に通れるようにしてあります。
屋根上機器をこの様に身近な所から見ることは普段出来ません、これは電車のクーラーユニット、家庭用で言うと室内機と室外機が1つになった”窓用クーラー”と同じ様な構造でその物ズバリのユニットクーラーと呼ばれています。
内部には2組のコンプレッサーが組み込まれ温度により運転される台数を切り換えています、冷房能力は最大で42000Kcal/h・・家庭で使われているエアコンの約20台分の能力になります、以前はとにかく冷やすだけ・・これぞ冷房車と言う具合に冷えましたが最近の新型では外気温、室内温度に乗車率もセンサーで調べ、冷房能力を調整しているそうです。
画像のファンは丁度室外機の放熱ファンに当たる物です。


こちらは先ほども出てきたパンタグラフ、電気の取り入れ口になります、手前の画像は”避雷器”と呼ばれる部品で通常は横に置いてある円筒形のカバーがされています。
架線やパンタグラフに落雷などが発生し異常な高電圧になった時に動作して、車体の機器類を守る働きをします。
避雷器内部には一定の間隔にセットされた電極が有り、異常な高電圧が加わるとその間で放電し余分な電気をレール・・地面に逃がします。


これはパンタグラフと各機器の間にあるヒューズです、家庭のブレーカーと同じ働きをし機器の故障などで過電流となったときに溶断し事故を防ぎます。
比較する物が無いので大きさが掴みづらいかと思いますが直径が10cm程有ります、奥の主回路ヒューズはこの車両に付けられた機器への配線に有り、手前の母線回路ヒューズは他の電動車へ送られる配線に有ります。
共に3本有りますが1本は予備のヒューズの様です、この部品もこの様な時以外は私達の目に触れることは無い物です。




屋根上を拝見した後は床下・・同じ6000系の足回りですが本来の台車は台車の整備作業場へ回されているため現在付いているのは移動用の仮台車と言われる物。
黒くタイヤのチューブの様に見えるのが空気バネです、乗り心地に一番関係する部分でダイヤフラムタイプと呼ばれ車体に直接取り付けられています、右の画像で空気バネの真ん中に黒く見える棒ははセンターピン、台車の真ん中にある穴と勘合し牽引力を車体に伝えると共にこのピンを中心にして台車は線路のカーブに合わせ首を振ります。
こんな所もこういう機会がないと見られない所ですね。

床下機器の代表的な物・・制御装置、6000系はインバーター制御車(この辺りのお話は別コーナーを作る予定)なのでその心臓部とも言える機器です。
左はモーターへ流れる電流をコントロールするVVVFインバーター装置、右は電流を入り切りする遮断機(大きなスイッチ)になります。
このインバーターでパンタグラフから取り入れた直流電流を3相の交流に変換し各モーターに流し、その回転をコントロールすると共にブレーキ時にはその電気ブレーキ(回生ブレーキ)力もコントロールします。

左の画像の箱には安全の要、ATSとATCの機器が収まっています。
ATS(自動列車停止装置)は西武線内で使われる物ですがこの車両は地下鉄に乗り入れる車両なので地下鉄側の保安装置であるATC(自動列車制御装置)も搭載されています。
ATCは車上信号式とも言われ運転席のパネルに75K・・など制限速度信号が表示される様になっています。
右は空気タンク色々・・コンプレッサーで圧縮された空気は一旦”元空気ダメ”に溜められますがその後に各々の機器用に分けられ、専用の空気ダメ・・タンクに込められます。
見えているのは空気バネ用と扉の開閉用空気ダメです。

その他にも電車の床下には色々な機器が所狭しとぶら下がっています、普段はホームや踏切などからしか見られませんが間近に見るとどれも想像より大きな物ばかりです。

普段は見られない車輪単体や走行用モーターなどがゴロゴロ
  

次に展示してあったのは電車の動力源であるモーター・・主電動機と呼ばれます、上の画像3点は電車用モーターでは代表的な物・・直流モーターですが界磁コイル(モーターの外側に有るコイル)と電機子コイル(中で回転するコイル)の繋ぎ方でその特性も変わります、西武鉄道では制御方式の違いで界磁コイルと電機子コイルを直列に配線する”直巻”(101系、4000系等の抵抗制御)と別々に配線する”分巻”(2000系、3000系等の界磁チョッパ制御)とが有ります。
電機子の整流子部分が見えるようにフタが開けてあるモーター、右はその整流子部分のアップ・・電機子に電流を与えるカーボンブラシと言う部品があり使用により摩耗するため定期的な交換が必要で直流モーターの手間がかかる部分でもあります。
左の画像で四角く見える物は小歯車と結ぶシャフトの撓み板継ぎ手です。
(この辺りの詳しい構造は別コーナーを作る予定です・・何時になることやら(^_^;) )

こちらのモーターは6000系等に使われているカゴ型誘導電動機と言う物で3相の交流で回転します、半導体の発達で小形のインバーター(直流を交流に変換する装置)が作られるようになりそのインバーターで架線からの直流電流を3相の交流に変換しこのモーターを回転させます。
上の方で紹介しました床下機器でVVVFインバーターと言うのがそれです、電圧と交流の周波数を自由に変えて出力しモーターの回転数や力加減をコントロールします。
何と言っても直流モーターのネックでもある摩耗するカーボンブラシが必要ないのでメンテナンスフリーとなるのが良いところでしょう、軸には歯車箱への継ぎ手の一部が付いています。
後のページにて分解されたモーターも紹介いてします。



こちらは台車や車輪などの検修コーナー、左の装置は歯車箱内の潤滑油を交換、内部の洗浄、検査用潤滑油の充填を自動で行い、充填後は2000回転/分で回し軸受けベアリングの状態まで自動的に測定すると言う機械、分解整備された車輪の場合は内部は奇麗なので新しい潤滑油を充填し測定するそうです。
右は電動車用の車輪で大歯車が見えます、歯車箱を外すとこの様なギアが入っているのです。
車輪は新品の様で踏面(レールの上を転がる面)も塗料が付いたままですね、車輪の直径は踏面で860mmあります。


こちらは主電動機(走行用モーター)側に付く小歯車、歯車箱内で上の車輪の大歯車とかみ合って駆動力を伝えます。
今では画像のようにねじれた”斜歯車”を用いているため歯車から発生する騒音は殆ど聞こえません、旧型の電車はこの歯車が平歯車だったので歯当たり音が発生し加速時に電車特有の”グォ〜ン・・”と言う音を出していました、モーターの音よりこの歯車から出る音の方が大きいのです。
小歯車はサスペンションにより上下する車輪に付いている歯車箱に有るため、直接モーター軸には取り付けられず何らかの撓み機構を設けて繋がれます。
右は歯車箱に取り付けられた状態、左は小歯車とテーパーローラーベアリングを組んだ状態です。


左の画、こちらは車輪の軸受けを分解した状態、コロ軸受けが2組有ります、それを車軸に組み付けると右の画の様になります、軸受け部は密閉されるので外部からゴミなどの進入を防ぐ事が出来ます。
こののタイプは車輪が台車に対してサスペンションの働きで上下方向に動くと軸受けを押さえている軸箱守(凹型に見える部分、密閉型コロ軸受けなので本来の軸箱とは構造が違います)が台車枠案内部と摺動する構造で組み付けられています、つまり擦れるわけで摩耗する部分が有るのです。


→の車輪は最近使われているタイプ(6000系)で軸受けと軸箱守をゴムと山形の金属板でサンドイッチになったシェブロンゴムと言う物で支持されるタイプ、台車に対して上下方向にはよく変形しますが横や前後方向には殆ど変形しません、摺動面が無いので摩耗せずメンテナンスフリー化できます。
台車に組み込むと右画の様な具合になります。


この画像は車輪を組み付ける前の電動車用シャフトと、シャフトに車輪を圧入する装置です、目の前にあるととにかく大きい・・実際には動いていませんでしたが圧入の仕方、雰囲気は解るように展示してありました。



モーターの整備作業場や床下機器、台車の整備場を拝見。

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