りくべつ鉄道、気動車体験運転記
惜しまれながらも2006年4月21日に廃線となってしまった北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線、
その路線の中程にある陸別町が駅施設、車両を整備しこの2008年4月26日に”りくべつ鉄道”として開業、
銀河線で使われていた気動車、ディーゼルカーへの体験乗車や体験運転が出来る観光施設として走り出しました。


鉄道の駅から”道の駅”になった陸別駅
(外観写真を取り忘れてしまいパンフレットから引用させて頂きました。)

北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線、元国鉄の池北線・・その歴史は詳しいサイトが沢山有りますのでそちらを見ていただくとして・・ふるさと銀河線とは愛称ではなく正式な名称でした、乗客が減り2006年4月に廃線となってしまいましたが帯広駅でJRのキハ40形気動車と共に帯広ホームで折り返すまでの間休むCR70形気動車も目にしていました・・同じく今は無くなってしまった長大路線の深名線と共に乗ってみたい路線だったのですが・・残念。
今回の北海道ブラリ旅・・北海道でしか見られない形式の車両に乗りたいと昨年(2007年)暮れには計画していました、そこに飛び込んできたのが2008年4月に元ふるさと銀河線の陸別駅構内を整備し本格的な体験運転が出来ると言うお話、既にWebサイトも有りその内容を見たら駅構内と言えども約500mの距離があり時間内なら何度往復しても良いという運転体験・・北海道へ行く日程は決めてあったのでその中の1日を体験運転に充ててしまいました・・3ヶ月後まで予約を受け付けていると言うことなので早速6月20日の金曜日13時からの運転体験Lコースを予約してしまいました。
旅行の行程はブラリ旅のコーナーにお任せし、その運転体験の事を記憶が怪しくならない内に書き留めて起きたいと思います・・。

北海道足寄郡陸別町・・その陸別駅はふるさと銀河線約140キロの路線のほぼ中間に有った主要駅で元国鉄路線だったためか駅構内はかなり広く体験運転としては最長と思われる500mの距離を銀河線で活躍していた気動車・・ディーゼルカーを体験運転出来ると言う施設として生まれ変わりました。
現在体験運転が出来る所が何カ所か有りますがその殆どが年に数回から月に1回、走行出来る距離が150m〜200m、碓氷鉄道文化村でのEF63運転体験でも約400mとなります、運転出来るのもEF63で1往復(1回の料金5000円ですが運転資格を取る講習と試験で最初に30000円が必要)。
関東鉄道では1回の体験運転日に20人まで参加し車両基地工場内150mの距離を最新型と旧型気動車の乗り比べが出来ますがそれぞれ1回、時間が余ると旧型をもう1度と計3回(お弁当付きで5000円)。
しかし陸別鉄道では体験料金がLコースで20000円と高い部類になりますが1つのLコース枠に1人だけで講習を含め80分と言う時間内なら何度でも構内を往復出来ると言うのは体験運転として別格だと思います。

左の画像はその陸別駅を上空から見た物、撮影は昭和52年なのでまだ国鉄池北線として営業していた頃になりますが駅舎の位置、ホームの構造、跨線橋や駅の配線などは現在の陸別鉄道とあまり変わっていないと見られます。

画像は「国土画像情報(カラー空中写真) 国土交通省」ファイルナンバーcho-77-33_c10_19.jpgより引用、陸別駅部分を拡大して掲載しました。
 
今も残されているふるさと銀河線の看板と陸別駅の駅名表
 
上の2枚は私の前、L2コースで運転されている車両を撮影しました、走行中のCR70形気動車です。

帯広から友人の車にお世話になり陸別駅に着いた時には私の前に予約していた方の体験運転がまだ行われていました、しばらくその様子を見学・・見ていると駅構内を一気に走るのではなく所々に青と赤の旗を持つスタッフと思われる方の手前で一時停止している模様、また何やら車両から降りて転轍機・・ポイントも操作している様子・・。
 
一番ホームから池田方向(左画像)と北見方向(右画像)を見た風景、上り線下り線を駅舎の方から跨ぐ様に屋根が増設され跨線橋も改修されている様子、冬場は車庫とこの屋根下に車両を移動、保管し厳しい冬を越すのでしょうか。
体験運転で車両が走るため線路にも銀色のスジが残りこの駅を見る限りでは廃線跡とは思われない雰囲気・・これだけの施設と車両を維持管理するのは並大抵のことでは無いでしょう。

少し休憩後受付でL3コースに予約している事を伝えプリンアウトしてきた予約確認表と共に体験運転Lコースの料金20000円を支払うと左の画像のテキストが手渡されました、内容は運転に使われる気動車CR70(75)形の説明、機器の写真と取り扱い、仕業点検の進め方、運転の手順などが詳しく解説されています。
仕業点検が有る分関東鉄道で行われている体験運転用テキスト(2007年12月に体験)よりページ数も多く内容も濃い物になっていました、テキストには机上講習10分、出区点検とブレーキ練習に20分・・と時間の配分が書かれていましたがやはり実車を見ながら進めるのが一番らしく機器の取り扱い説明を車上で受け、その後一旦車外へ出て下回りの点検・・。
 
CR70形気動車の台車と走行用機関(DMF13HS)、台車は枕バネが空気バネでコンパクトな台車。
機関は排気量13000cc、横置き6気筒過給器付きで最大定格出力は250馬力を2000回転で発揮(1時間定格かな?)
仕業点検、両方の連結器の作動状態、台車の状態、ブレーキ制輪子の残量を目視検査。
機関潤滑油・・エンジンオイルの量、車と同じ様なゲージが付いていて引き抜いて確認・・ちょっと量は多めだけど結構黒かった、まあディーゼルエンジンはちょっと運転するとすぐに黒くなってしまいますが。
運転台のマスコンハンドルから指令を受け燃料の噴射量をコントロールするバルブの動作状態を確認、コントロールバルブは手動ボタンで動かす事が出来ボタンを押すことで動作状態が確認出来ます。
各空気ダメ・・エアタンクのドレーン抜きを行う、ブレーキの原動力になる圧縮空気を溜めておくタンクは空気に含まれる水分が凝結して水となりドレーン溜めに溜まってきます、それを手動バルブの操作で排出させます、実際にはコンプレッサー動作時に自動で排出する装置も有りますがやはり細かい所は自分の目で確認し排出させるのでしょう。
燃料残量確認、エンジンから補機類を駆動するVベルトの確認・・手が届く所は実際に張り具合を押してみたり・・実車の床下などは普段触れませんからこれも貴重な体験です。
画像は指導運転士から床下機器の説明を受けている私、実際に床下に潜るためヘルメットは必須です、結構色々な突起物が出っ張っています・・鉄道車両の床下は、実際ぶつけたし。(^^;

私が車外で点検中に友人が私のカメラで車内を記録に留めていてくれました、鉄分?は含んでいない友人ですがしっかり要点を撮影していてくれて有り難い限りです、私の方は撮影している余裕が有りませんでしたから・・銀河線で活躍したCR70形気動車の車内色々です。
左上は運転室横、ワンマン運転時に使用する料金箱がそのまま残されています、右上は客室内でクロスシートが並びますが出入り口付近はロングシートになるため分類的にはセミクロスシートタイプに、このシートには座りそびれました。
廃止後2年経ちますがきれいに整備されています。

左画像は運賃表示機、もうこの表示機に数字が並ぶ事は・・・無いのでしょうね、体験乗車時に300円・・と表示させているのかな。

運転台左横に有るスイッチパネル、サーキットブレーカーを兼ねたスイッチ類が並びます。
体験運転時に操作するスイッチには赤いマークが。

画像中程に有る○に1のマークが付いたスイッチは運転方向を切り換えるときに必ず操作するスイッチになります。

運転席とは反対側のパネル、ワンマン運転が基本だった路線ですが車掌乗務時にドアを開閉するスイッチも取り付けられていました。
画像下の箱がそれで通常はこの場所も乗客が入るためかJRのタイプとは違い開閉操作は専用のカギを差し込んで回すタイプになっていました。

ワンマン運転時は運転台に有るスイッチで運転室から離れずに開閉操作が出来ます。
運転室扉上部に有るスイッチパネル、やはり体験運転時に投入するスイッチには赤いシールが貼ってあります。 運転室の天井、友人がよく捉えてくれていました・・赤いノブが付いた筒状の物は”信号炎管”と言う物、発煙筒で緊急時にノブを引くと赤い炎で燃焼し周りに非常事態を示します、JRの車両には必ず設置されていてこのCR70もJR線に乗り入れていた関係で取り付けられていたのでしょう。

さて、車両下回りの点検を終わりまた車内に戻ります、これからは運転台にて運転に必要なスイッチ類の切り換え、エンジン始動、運転開始に向けての作業になります。
CR70形気動車の運転台、軽快形気動車としてコンパクトに機能的にまとめられていていますがマスコンハンドル(左側のハンドル)にちょっと時代も感じさせます。
ブレーキ弁もカバーはされていますがJRの車両と同じブレーキ弁が収められている物と思われます、ブレーキ弁とマスコンハンドルの間にはワンマン運転時にドアを開閉するスイッチも並びます。
運転台の前後切り換えに使うエンド交換用スイッチと逆転機切り替えはは小さなキーで扱うシステムでこの辺りはJRや関東鉄道の気動車と違う所です、マスコンハンドルの前に有る二つがその切り換えスイッチです。
ワンマン運転時の安全対策としてデッドマン装置を備えます、床の左側に有るペダルは運転中必ず足を乗せて踏んでいる事が必要で万一運転手に異常が発生しペダルが踏めない状況になると自動的にブレーキが作用するシステムになっています、体験運転時もこの機能は生きていますので運転中は踏んでいなければなりません。
右側の小さなペダルは警笛吹鳴用で発車時に軽く鳴らします。
一段へこんだ所には標識灯の切り換えスイッチ、ワイパーのスイッチが並びます、体験運転時は雨も降ったのでこのワイパースイッチは頻繁に扱うことに。
  
池田川、北見側両方の運転台にて運転に必要な機器のスイッチを確認しながら順次投入していきます、扱うスイッチには赤いシールも貼られていて指導運転士の説明を聞きながら1つ1つONに。

全て入れ終わるといよいよ機関始動・・走行用エンジンをスタートさせます、運転台の前面パネルにある始動ボタンを押すと始動用モーターの音と共に直ぐにエンジンが目を覚ます・・流石に直噴の新型エンジンなので始動性はよく床下から軽いアイドリング音が響きます、もっとも30分程前まで体験運転で走っていましたのでエンジンはまだ暖まっていたので始動はたやすかったでしょう。

激寒地での冬は始動性の良い直噴形エンジンでも夜間アイドリングで留置していたとのお話を聞きました、私は国鉄時代のDMH17形機関の始動性が悪いと言うことを知っていたのでチョンとボタンを押すだけで呆気なく始動したエンジンにはちょっと驚いたり・・。
その後ブレーキの扱い方を練習、運転位置・・重なり位置・減圧位置・・扱いの難しい自動空気ブレーキ・・幸い私はキハ35形の体験運転で経験していたためか程なく終わりとなりました。

左の画像はちょっとへっぴり腰ですが手ブレーキ・・車で言うならパーキングブレーキを緩めているところです、機械的にワイヤーを巻き上げてブレーキをかけているのですがこれを緩めます、この手ブレーキは最近の鉄道車両には無く、この手ブレーキを自分の手で扱うのも貴重な体験です。

その後はまた運転台にて保安ブレーキの動作確認・・スイッチを扱う事でブレーキハンドルの位置に関わらずブレーキシリンダーに圧縮空気が送られます、そして自動空気ブレーキの漏れ試験を進めていきます、漏れ試験はブレーキハンドルを操作し500kpaになっているブレーキ管圧力を60kpa程減圧して保ち圧力計をしばらく見ていてそれ以上減圧しないかを確認する事・・”漏れ無し!”、漏れが有ると減圧が進み少しずつブレーキが強くかかる事になります。

いよいよ運転が始まります。

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