1999年4月27日・・・その日は天気が良くお日様も顔を出しポカポカ熱いくらいだったのを覚えている。
もうこの頃になると満開だったソメイヨシノは散ってしまい、ちょっと寂しくなってくるのだが、代わりにモコモコした花びらの八重桜があちこちでソメイヨシノに変わって咲き乱れる。

そのモコモコ八重桜が大好きな私は以前から「天気の良い日には、八重桜の花見へ行こう!
しかも昼食をどこかで買ってお日様の下でランチタイムをするのだ!!」と計画を立てていたし、その日は休みなのに珍しくお寝坊もしなかったので(普通だと起きるのはお昼頃)実行にうつす事にした。

いつも行くパン屋さんでいつくか買い込み、隣のコンビニで飲み物を・・。
自転車にまたがって、自宅から自転車でだいたい15分位の所にある「里見公園」へと向かった。

「八重桜だったら里見公園でも咲いてるよ」
そんな親の言葉を信じ、川沿いの道を一生懸命にペダルをこぐ。
やっとたどり着いた里見公園、頭の中には昔ソメイヨシノを見に来た時のような満開の絵が浮かんできた・・・。
相当昔の記憶だけど、公園中は桜の花びらでピンク一色に。
そこまでいかなくとも風に吹かれた花びらがはらはらと舞い落ちる・・・そんな光景を思い浮かべながら公園の中へと入っていったのだけれど・・・。

「あれ? 緑色ばっかり・・・? 桜は?」

無惨にも期待は裏切られて公園内は普通の樹木の姿がほとんどだった。
とりあえず八重桜を求め、公園内をぐるっとひと回りしてみたけど、あったのはほんの4・5本だけ。
しかも、運悪くたくさんの小学生や幼稚園児が遠足に来ていて、公園内は子供達の声で満ちあふれ大騒ぎだったのだ!!
さらに、その子供達はほんの数本しかない八重桜の咲いている木の下にドーンと陣取ってお弁当を食べている・・・・・。

「え〜い、じゃまくさいガキんちょ達めっ!!」

そう思いつつも公共の場所だから仕方がないと諦めることにした。
いや、そうせざるを得ないだろう。
ちょうど時計の針は12時15分を指していたので「1時にでもなればいなくなるだろう」と、とりあえず公園中央の空いていたベンチへ・・・。
目の前に花で彩られている花壇があったのでしばらくはそれを見て過ごすことに決定。
たしか花壇の中で咲いていたのはパンジーが多かった。
後は、名前の知らない花がたくさん咲いていたけど、ふだんじっくりと花を見るような機会がないのでこういう時になると必要以上に眺めて、なにかほのぼのとした感覚に包まれていく・・・。
緑は人の心を落ち着かせる効果があるというのはきっと本当の事だろう、と改めて実感することができた。

しばらーくすると、うるさい子供達が私のいる方に移動してきた。
「なんだろ? なにするつもりだよ・・・いいからあっちいけっ」と思いながら見ていると、どうやらこれからお昼の自由時間へと入る様子。
付き添いの先生らしき人が大声でいろいろと注意事項を言った後、子供達はうずうずしていたのだろう、お許しが出ると同時に全員が公園の奥にあるブランコやジャングルジムへと一目散に駆け出していった。

「元気やねぇ〜」と思いながら、ふと噴水の辺りを見てみるとさっきまでいた子供達がいなくなっていた。
「これはチャンスッ!!」\(^o^)/
とばかりに私も一目散に移動を開始した。
その噴水の周りが一番八重桜が満開だったのだ。
さっきまでいた子供達もいなくなり、空いているベンチを占領して昼食をとる事に。
ようやっと思い描いていたランチタイムを始めることができた。


満開の八重桜を見ながら1つめのパンを食べていた時・・・。
噴水の反対側を歩いている人達が何かにすごく驚いて騒いでいるのを見かける。
立ち止まりつつも地面を見つめて何かを言っているのだ。
「なにやってんのかなぁ」
そのへんてこな行動を眺めながら1つめのパンを食べ終わった頃、その原因の正体が私の方へとやってきた。
ゆっくりと、確実に・・・。

「コー、コー、コー、コー・・・・」
「は?」


なんと現れたのは一匹の雄鶏。
ゆっくりゆっくりと私の目の前までくるとその小さな瞳で「じーっ」と私の方を見つめてきた。
「パンが欲しいのかな」と思った私は食べようとしていた2つめのパンを小さくちぎって投げる。
「ココーッ」
「待ってたぜ!」とでも言うようにパクンッと飛びついた鶏。
そしてまた立ち止まって私の方を「じーっ」と睨み付けて催促してきた。




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