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山下和仁リサイタル


 
2001.9.15(土曜日)15:00 開演  

鎌倉芸術館大ホール




プログラム

組曲「ひとびとの靴を履いて」(1998)
1.死んだ人々と生物の為に
2.浜辺の歌、風
3.いろはうた

藤家渓子作曲
無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番ニ短調BWV1004

J.S.バッハ作曲

休憩

夜との語らい(1994)

藤家渓子作曲

無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調BWV1005

J.S.バッハ作曲


アンコール

バッハの作品3曲
平均律クラヴィーア曲集第一番他


JR大船駅から徒歩10分。鎌倉芸術館大ホールは大船駅前からにぎやかな商店街を突き抜けた突き当たり左にある。
今回は、ネットで知り合ったかずきさんから都合が悪く行けなくなってしまったというメールを頂き、チケット2枚譲って貰い珍しく家内とギターのコンサートに行く羽目に・・・なった。
小田急線で藤沢まで出て遅い昼食をとってから大船に着いた。大船観音を観光したいという家内の申し出を時間が無いと振り切ってホールに向かった。コンサート終了後に大船観音に寄ったのだが、幸いにも(?)5時で閉門となっており、急な階段を昇らずに済んだ。ヤレヤレ・・・・。

鎌倉芸術館ホールは比較的まだ新しい建物で大ホールへ向かう通路沿いに中庭が設置されガラス越しに竹林を見ることが出来る。広いロビーは無いが壁には日本画も飾ってあり、竹林を見ながらゆったりと椅子でくつろぐことが出来るのはありがたい。入り口近くで現代ギター社の女性(名前失念)に昨夜に続きお会いした。ギター関係者では今回は彼女だけ、やはり場所が都心から大分離れているせいか。
全席指定で、今回の席は前から9列目の左端ボックスの4,5番。1500名入るだけあって天井も高く2階席もある立派なもの。空席が目立ちおそらく500名も入っていなかったのではないかと思う。休憩後に中央の空いている席に移動し、ちゃっかり真ん中で聴くことが出来た。

開演より5分遅れで山下氏が登場。藤家作品は全て譜面台を使用しての演奏だった。
弾き始める前に楽器を抱え込むようにして両手の指先を前に合わせコンセントレーションを高めていく。ふっと気を抜いたかと思うと右手を前髪にやりおもむろにギターをかなり低い位置に構え、弾き始める。演奏中ギターのポジションはどんどん変化していくのだが。

最初の内はホールが大きいせいか音が小さく感じたが固めの硬質な音色が、きらめく星のような輝きを持って届いてきた。ギターを自在に操る(ギターそのものをかなり大きくゆすったり動かす独特の演奏スタイル)彼の姿を見ているとこの人は生まれた時からずーっとギターを弾いてきたんだなということを今更ながら感じた。続くバッハではさらにその動きが派手になるのだが、時々興に乗ってくると居合抜きをする時のようなポーズでギターのヘッドを大きく左側にひねったりあるいはギターを弾いたまま立ち上がりそうになったりする。最初は驚いたがそれが彼の演奏スタイルなのだろう。
いつもこんな弾き方をしているのかどうかはじめて聴いた(見た)ので分からないが、彼のこうしたギターを大げさに操る動作にはギターの音をホールの隅々まで届かせたい、ホールを音で埋め尽くしたいという気持ちがなせる業なのかもしれない。

最初の組曲について、演奏は終始淡々と進められ、作曲者である山下さんの奥さんには申し訳ないが、疲れ気味のぼんやりした頭には少々眠気を誘う音楽であった。決して悪い曲ではないのだが、体調の良い時に聴くと印象ももっと違うものになったかもしれない。

いよいよバッハのパルティータ第2番全曲。ギターではバルエコでしか全曲は聴いたことが無いのだが出だしから圧倒的な迫力で迫ってきた。まるで自分の命を削っているかのような音をが、力強くギターからほとばしり出てくる。
アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、シャコンヌと一気に弾き進み気がついたら拍手をしていた。
途中アルマンド、ジーグでは、流石に早すぎると感じられた箇所もあったがスリリングで個人的には面白い演奏だった。
シャコンヌは、2番の中では一番オーソドックスな演奏だった。テンポといい雰囲気といい素晴らしい。ただ時折タッチが強すぎて音が割れてしまうのは残念といえば残念。音色については家内の反応は良くなかったが私は迫力があってよかったと思う。ただ、低音の重厚な音には家内も素晴らしいと褒めていたことを付け加えておく。

休憩後、藤家作品の2曲目。これもまた眠気を誘う音楽(失礼)だったが最初の組曲よりこちらの方が良い曲に思えた。
でも出来れば他のギターのオリジナル作品を聞かせて欲しかったというのが本音。
エンディングはまたバッハのソナタ第3番。冒頭から力強い音でハ長調の明るい響きがホールを埋め尽くす。パワー全開といった感じだが、結びのアレグロアッサイは飛ばし過ぎで音が落ちたり細部が全く聴き取れずその前のフーガが素晴らしかっただけに残念であった。
アンコールは3曲で全てバッハの作品・・・だと思う。知っていた曲は2曲目に弾かれた平均律クラヴィーア曲集の第一番。驚いたのは12フレットセーハではじまるアレンジで、原曲と同じハ長調なのだが確かに12フレットセーハの音程ではじめれば最後まで楽譜通り演奏可能ではあるが・・凄い。ハーモニックスを効果的に使い低音を出来る限り伸ばしていた。途中ピアニシモが小さくなりすぎて楽譜を見失ったのかと心配したが山下さん独特の解釈のよう。
アンコールではバッハ以外の曲を聴きたかったけどまあ彼も他の作品を弾く気分ではなかったのだろう。
充分満足しホールを後にした。