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新井伴典
ギターリサイタル
2001.6.1(金曜日)19:00 開演
GGサロン(要町)
プログラム
練習曲第4番 |
ビラロボス作曲 |
水とワイン セントラルギター パッショントーク |
ジスモンティ作曲 |
6つのバルカンスミニアチュア |
ボグダノヴィチ作曲 |
休憩 |
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ソナタOp.47<全4楽章> |
ヒナステラ作曲 |
カプリス様式のアラベスク「ターレガの墓に」 | クレンジャンス作曲 |
オブリガード | B.ガクエル作曲 |
アンコール |
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フリアフロリダ |
A.バリオス作曲 |
サウダージ第3番 |
ローラン・ディアンス作曲 |
新井さんは若干30歳?ドイツケルン大学を卒業されオーストリア国際ギターフェスティバルRUST2000コンクール優勝、以後ヨーロッパ各地でコンサートを開始されている将来有望な若手ギタリストの一人である。彼のことは村治昇さんの著書にまだ小さかった頃の写真が掲載されていたのを見てギタリストの親子鷹としてその存在を知っていた。偶々彼がココのBBSに書き込みをしてくれたこともあって今回リサイタルを聴かせて頂くことになった。 GGサロンはほぼ満席。隣り合わせたご婦人は、彼の小学校時代の音楽の先生で、帰国後の姿を見るのが楽しみだと仰っておられた。彼は小学校の時、吹奏楽部でクラリネットを吹いていたらしい。小さい頃は自分をどんどん外へ押し出す積極的な性格だったが、今回の演奏を聴いて(見て)、成長した、大人になったと感慨深げであった。 会場にはギタリスト鈴木豊氏、ギタ菌さん(金 庸太氏)、坪川真理子さん(後でいらっしゃっていたのを知り、お話できなかったのは残念)、製作家の黒澤さん?(表に例の車が駐車されてたから多分・・・)、新井さんのお父様の姿があった。 ステージに登場した新井君は、清潔感溢れる好青年。首元までピッタリとしたベストを着こみギターをすべり止めとクロスでしっかり固定し長い両手で慈しむようにギターを奏でる。 楽器は何か良く分からなかったが20フレットがついていた。演奏は素晴らしかったがどうも楽器の鳴りが今ひとつという印象。甘くやわらかい音色だったが、音量とサステイン(余韻)が不足しているように感じた。曇り空で蒸し暑い天候のせいなのか・・。 彼のテクニックはギタリストのお父様の英才教育の賜物か常に全身がリラックスし、完全に脱力がされた状態で演奏されているのが素晴らしかった。また自分の出す音を冷静に聴きながら演奏しているのにも感心させられた。当たり前のことだがどんな難しいパッセージでもそのスタイルが崩れないのはなかなか真似の出来ることではない。演奏者の意識と演奏する行為が完全に分離していて、まるで指揮をしながら演奏しているかのよう。テクニックは勿論素晴らしく、特に今回のリサイタルでも南米のリズムを生かした作品、ヒナステラやフィナーレのガクエル等では彼のリズム感の良さが大いに発揮されていた。 オープニングはビラロボスの練習曲4番。地味な曲だが、ゆったりと和音を丁寧に歌わせながら音色を使い分けて弾くスタイルはビラロボスのどちらかといえば野趣のある音楽というよりもヨーロッパ音楽の洗練された香りを感じさせる。 続くジスモンチの作品はアサドのデュオでもおなじみだが、水とワインとパッショントークは新井君自身のアレンジらしい。 2曲目のセントラルギターは前衛的な作品だが、彼のテクニックが冴え飽きさせない。水とワインはやはり1本のギターで弾くにはちょっと厳しいかなと感じた。ゆったりしたメロディは心地よいが十分和音を響かせるには彼の技巧をもってしてもギター一本ではいささか無理があると思う。 前半最後の6つのバルカンスミニチュアは、ユーゴスラビアの舞曲で、民族楽器を模した作りになっていた。1曲目のリズミカルなスラーの処理が、巧みで続く5曲のいずれもが細部まで神経が行き届いていた。終曲のリズミカルなダンスでは、ラスゲアードのフィナーレにギターを支えていたクロスでギターを叩いて終わるというびっくりするような演出。若々しく好感を持てた。 ここで15分間の休憩。 第2部はヒナステラのソナタで始まる。今夜の演奏ではこのソナタと最後のガリエルのオブリガードが特に素晴らしかった。ヒナステラはスケール、グリッサンド、ラスゲアード等どのテクニックも自由自在といった感じで最後まで華麗なテクニックで一気に弾き切った。上手過ぎて言うことが無いのだが、特にラスゲアード部の躍動するリズムは右手の素晴らしいテクニックに支えられ聴衆を釘付けにしていた。こうした一種の名人芸を感じさせる彼の演奏はもはや若手というよりベテランの風格を漂わせていた。続くクレンジャンスは、良く考えられているものの、内省的な表現が上手く表に出てこないというか、上手く弾いているのだが今一音楽が伝わってこなかった。この曲は出だしの主題が全てだと思うのだが、ここが素直に入ってこなかったのが原因か。 オブリガードは、25歳の作曲者ガクエルの作品。変幻自在なパーカッション奏法が水を得た魚のようで、生き生きとしたサンバのリズムに聴いているこちらも身体が思わず動いてしまう。様々に叩く位置を変える右手がギターの表面版から彼の眼鏡にまで移動するというお茶目なパフォーマンスが決まっていた。 アンコールはバリオスとディアンス。ともに人気のあるレパートリーだがフリアフロリダでは、メロディは、3弦で弾かれていた。4→3弦の変更に伴う、音色の違いに苦労しなくて良いという意味ではこういう運指もありとは思うがちょっとあっさりし過ぎて個人的には4弦で歌わせる方が好み。早めのテンポで演奏されたせいもあるかもしれない。 サウダージ3番は、これまた見事なテクニックで、彼の技量からするとこの程度の曲はやさしい部類に入るのだろう。メロディー部も速めのテンポで軽くチョーキングを利かせながら一気に弾ききった。途中パーカッション部を表面版を叩かずに手品のように鈴を取り出し鳴らすという演出には驚かされた。終盤旋律が半音ずれて(上げて)弾いてしまった時にはさすがに冷静な彼も目が動揺していたがご愛嬌。(・・・と思っていたらこれも彼一流のパフォーマンスだったことを後になって知らされた。本番のステージで遊んでるんだから、やっぱりプロは凄いもんだ。) アンコール後、鈴を鳴らしながら登場するというお茶目なパフォーマンスで再び場内を沸かせる。 コンサート終了後の打ち上げには参加したかったのだが、土曜日のコンサートの練習の為、早々と失礼した。新井君に挨拶できなかったのは残念だった。 余談だが偶然アルモニコスの村井さんとお会いすることが出来た。アルモニコスは現在日暮里に拠点をおいて活動しているらしい。ヨークのHARUMIを秋にやるので参加しないかと誘っていただいたが、時間が無いのでお断りする。相変わらず頑張っておられるようで何より。11月のコンサートには是非お邪魔したい。 |