管理人のたわごと

GGサロン年４回シリーズの最後を飾る金庸太さんのリサイタルは、若手女流ピアニストの井口真由子さんを迎えて、ギターコンチェルトの夕べと題して行われた。日本初演が４曲という意欲的なプログラム。特に今回の演奏会は、当初バンドネオンの小川紀美代さんとのデュオの予定が、ギターソロによる２０世紀ギター曲集に一度企画が変更され、さらに約１ヶ月前に今夜のプログラムに変わるという極めて慌しいものだった。演奏者にとっては準備期間が少なくかなりシンドイ状況下でのリサイタルだったと思われる。おまけに、既に手中に収めている曲を並べるなら回数が多くても何とかなるだろうが、年４回全て違うレパートリーでしかも今回のように日本初演が４曲並ぶというのは極めてリスキーな試みと言えるだろう。金さんのファン倶楽部会長を自称する私が書くとどうしても彼を贔屓にしていると思われてしまうかもしれないが（事実そうなのだけど）傍目にもかなりしんどい演奏会に見えた。率直に言って今夜の金さんの出来は決して良くなかった。ただこうした厳しい条件下で、金さん独特のバイタリティで新曲に果敢にチャレンジしてくれた意欲的な姿勢は高く評価したいと思う。なかなか聞ける機会の少ない作品に光を与えてくれるのはなんといってもギタリスト次第なのだから。

すっかり前置きが長くなってしまったが、演奏後の打ち上げで珍しく寡黙な金さんを見ていて、ファンの一人として結構つらいものがあった。彼自身、今夜の演奏の出来に納得していないことは確かだろうし、彼の実直な性格からすると九州や、甲府等遠方からも駆けつけてくれたファン（しかも女性ファン）に対して申し訳ないという意識もあったのではないだろうか。演奏家というのは常にベストな状態で演奏出来ないことも事実。今回の年４回シリーズを一種の実験と捉えれば、非常に意味のあるシリーズだったし、実験には失敗はつき物・・なんて安っぽい言い方はしたくないが、彼のギタリストとしてのプライドがこうした一見無謀に見える試みを可能にしてくれたんだと思うと結構胸が熱くなる。演奏後の打ち上げ参加者の方々の感想にも決して否定的なコメントを述べる人がいなかったのも彼の人柄もあるだろうが、ギターに対する彼のまじめな取り組み姿勢を評価しているからだと確信している。これからも挑戦的なギタリストとして頑張って欲しい・・。弱気な発言なんて似合わない。（うーん、なんだか自分に向かって言っているような気もするなぁ・・(^_^;　とにかく)）
金さん、頑張って！
（でも時には肩の力を少し抜いてみるのもいいかもね。年長者のたわごとだと思って聞き流してくだされ・・。）

日本初演のブローウェル作品は、それなりに面白かった。主人公が時間をさかのぼっていくという小説をモチーフに作曲された作品らしい。金さんは小説にも目を通されたようだが、金さん曰く読んでいるうちに段々訳がわからなくなってしまったとのこと。(^_^;)
ピアニストの井口さんの演奏を聞くのは今夜が初めてだったが、とにかく若い、おまけに美人で華がある人。彼女の笑顔を見ていると眩しくなるほど。彼女は関西人で金さんはとても綺麗な京都弁を喋る人と彼女のことを紹介していた。
福田さん曰く、ギターと初めて合わせた頃、ギターでは珍しくない変調子が案外上手く弾けなかったらしい。今では勿論バッチリ、来年１月１１日のGGサロンコンサートでも福田さんとの共演が決定している。
テデスコのオケ伴奏版の原曲は、菅原編集長に伺った所では、終盤のＴｕｔｔｉまでは、殆どハープがギターを支えるだけでオケの出番は最後だけらしい。それをギタリスト兼作曲家の佐藤弘和氏がピアノにアレンジされたもので、とても良い編曲だった。ギター一本では見えにくかったこの作品の色彩感が重厚なピアノの伴奏が入ることで感じることが出来た。打ち上げの感想でもこの曲とトローバのカスティーリャ組曲の評判が高かったのもうなづける。
後、アンコールの二橋潤一氏作曲の哀歌も個人的にはとても好きな曲でしっとりとした演奏が心を打った。
でもダンジェロ・・聴きたかったな。今度またやって下さいね。楽しみに待ってます。