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大萩康司ギター・リサイタル

エスニックなマチネ
Guest:Christopher Hardy(Percussion)
東京オペラシティコンサートホール
(タケミツメモリアル)


 
2004.2. 1(日曜日)13:30 開演  




プログラム
       

☆ギターソロ

羽衣伝説〜山入端 博の旋律に基づく

藤井敬吾作曲
すべては薄明のなかで(ギターのための4つの小品)

武満 徹作曲

アストラル・フレイクス(ギターのための)

渡辺香津美作曲

休憩


☆ギター&パーカッション

エスタンビィーダ

13世紀アンダルシア地方の作品
カンティガ

Alfonso el Sabio作曲(13世紀スペイン)

永劫の螺旋

レオ・ブローウェル作曲
鐘の鳴るキューバの風景

レオ・ブローウェル作曲
そのあくる日

レイゲーラ作曲
ラガーシュ

クリストファー・ハーディ作曲

アンコール

デ・ラ・ルンバ ソン
(with Christopher Hardy)

翼 武満 徹作曲(福田進一編曲)



今回のコンサート、実は最初来る予定ではなかったのだが、たまたまネットで知り合った yazuさんのお陰で運良くチケットを手に入れることが出来、出張疲れの体に鞭を打ち、はるばる町田の田舎からオペラシティーまでやってきた。今朝チケットを見るまで夕方の開演だとばかり思っていたものだから13時30分の開演ということに気づいて慌てて家を出た。

前半が今話題の羽衣伝説を含むソロ3曲、後半がパーカッション奏者のクリストファー・ハーディ氏をゲストに向かえデュオでの演奏という大変興味深いプログラム。オープニングにいきなり羽衣伝説を持ってきたのには驚いた。しかも続く二曲が現代曲で武満徹作曲「すべては薄明のなかで」と渡辺香津美の「アストラル・フレイクス」というぶっ飛んだ構成。僕も以前アストラルフレイクスを福田さんのアルバムで聞いてトライしたことがあるが、最初の2段目辺りで弾くのが嫌になった南極・・じゃない難曲^^;。今回印象的だったのは全ての曲を通じて彼が音を出す前から音楽作りを始めていたこと、それから演奏前の入念な調弦、そしてギターを唄わせる技である。昨年5月に彼の演奏を聴いた時、調弦の甘さが随分気になったのだが、今回のステージでは丁寧過ぎるくらい調弦に気を配っていたのにとても好感が持てた。焦って調弦し弾きはじめ、演奏途中でピッチをきちんとあわせるのは名手といえども至難の業。ましてやどんなにしっかりあわせても弾いているうちに狂ってくるのがギターなのである。だからこそ丁寧すぎるくらい調弦には注意を払って欲しい。それから音量の非力なギターを実際に出ている音以上に良く鳴らすタッチというか構え・・うーん上手く言えないけど、とにかく彼のブーシェ?は良く唄っていた。鳴っていたのではなく唄っていたのだ。

プログラムを見た時、前半で3曲というのは曲数としては随分少ない印象を受ける・・・が、いずれも大曲、しかもオープニングからテンションの高い羽衣伝説、難解な武満作品に続いて下手くそが弾くと一体なんの曲かさっぱり分からないアストラルフレイクスという構成は、かなり手ごわい。以前から大萩君は無理をしないプログラム、背丈にあったプログラムで手堅い演奏をする人という印象が強かったのだが、このクラスの難曲をずらり並べても十分手中に収められるだけの高い技術を蓄えてきたという証なのだろう。

羽衣伝説では緩急の緩の部分に特に惹かれた。とにかくニュアンスや音色の変化が自然なフレージングと実に良くマッチしていて音楽の流れが美しいのだ。羽衣伝説のような沖縄のリズムが濃く出た作品に限らず、難解な武満作品でも彼の演奏には一種のリズム、ビートが感じられそれが音楽をより自然なものにしている。ごく自然に音楽が体の中に入ってくるのだ。これは彼の一つ一つの楽曲に対する高い(深い)解釈と、おそらくは膨大な練習量、弾き込みがあって、初めて可能なものだと思う。また彼のメカニックは、今まで他を圧倒するような迫力を感じたことはなかったのだが、今回の演奏では、ちょっとしたフレーズにもある種の凄みが感じられ、海外の超一流の演奏家と比べても遜色の無い世界で通用する高い技量を備えたギタリストに成長したという印象を持った。

すべては薄明のなかでをこんなに分かりやすく美しい音楽として聞かせてくれたギタリストは彼が初めてだし、アストラルフレイクスをこんなにカッコ良い名曲だと感じさせてくれたギタリストもやはり彼が初めてだ。前半の3曲だけで僕は十分満足してしまった。後半のパーカッション奏者クリストファー・ハーディ氏とのデュオでは、白いシャツに着替え、ギター小僧、ギター少年というのがぴったりくる若々しい姿をステージで見せてくれた。一番楽しみにしていた永劫の螺旋は、出来れば彼のソロで聴きたかったのだがパーカッションが加わることで音楽の色彩感が一段と増していた。ただ音量のバランスという点ではやはりマイクを使用していたもののギターがもう少し良く聞こえて欲しかった。彼のギターが素晴らしいだけにもっと彼の美しい音に浸りたかった。これも贅沢な悩みか・・

アンコール最後の翼が、また素晴らしかった。ギターとピアノの一番良いところを合わせたような音の出し方、タッチで最後の一音まで集中力が全く途切れない素晴らしい演奏だった。来るつもりでなかったのだけどこんな良いコンサートに出会えて良かった。最近の大萩君はいつもこんなテンションの高いコンサートをやっているんだろうか・・人気が高いのもうなづける気がする。
いつの世も女性の感性に訴えるものは良い物が多い。それだけ女性の見る目が高いということなのだろうけど。大萩ファンは女性が多いのでつい僕のようなオジサンはやっかみ半分、ギタリストはやっぱりルックスが良くなきゃ駄目だなんて、思ってしまう。でも、まだそう思っている人がいたら目をつぶって彼の演奏を聴いて欲しい。本当に今の彼は素晴らしい音楽をしている。そろそろ僕も大萩ファンの仲間入り・・するしかないか・・(ーー;)


オペラシティ最寄駅の初台駅改札口を出るとホール途中ですぐ手塚治虫ワールドが目に入ります。
アトムと大萩君は誕生日が一緒なんだよね。でも今日の武満メモリアルホールを
選んだのはアトムの故郷だからじゃなくて武満作品を演奏するからだったんだ。
アンコールや忘れた曲教えてくれてアリガト>りぜさん