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GGサロンコンサート

金 庸太

 
2003.5. 23(金曜日)19:00 開演  

要町現代ギター社 入り口の看板 シャッターにLAGQのペインティング




プログラム
       

第一部

リンダラハの庭
モラレス作曲

組曲第2番
1.Preludio
2.Allegro Burlesco
3.Andantiono(un poco lento)

ブローウェル作曲

5つのバガテル
ウォルトン作曲

練習曲第一番

カントル作曲

前奏曲、フーガ第一番

ブローウェル作曲
第二部

バリアンテス

ベージョ作曲
内なる想い
1.心静かに
2.たのしみ
3.静寂
4.よろこび
5.はがゆさ

アセンシオ作曲
2つのリディア調の歌
ダンジェロ作曲

アンコール

さよなら  セルジオアサド作曲
天使の死  A.ピアソラ作曲



久しぶりのGGサロンでのソロリサイタル、ほぼ2年ぶりというから意外な感じがする。GGサロンコンサートの年4回シリーズのトップバッターが確かギタ菌さんだったからあれから2年近く経ったことになる。今回のコンサートは日程が直前になって急遽開催が決定されるというやや異例なパターン。CDの初録音を直前に控えてCD録音の候補曲を中心にしたやや実験的なプログラムだった。金さんから今回正式にアルバム録音の発表があったが、その際今夜のコンサート(の聴衆の反応?(^_^;))を参考にしてアルバム収録曲を絞りたいという意味のコメントもあった。
録音は国立・・詳細聞き逃したが・・で行われ、発売は秋、10月頃になる模様。アルバムジャケットは渋谷環さんのアルバムも担当された方で彼が気に入っている人らしい。本当にアルバム発売が待ち遠しい。

さて当夜の演奏だが、前半金さんにしては珍しくMCが無く、ひたすら淡々と演奏が進められた。使用楽器は90年作のフレタ。ギタ菌さんのフレタでの演奏は初めて聴いた。表面的には平静を装っていたが内心帰するところがあっただろう、かなり気合の入った演奏で、最初はそれがやや空回りしている面も見受けられたが5つのバガテルの最終楽章辺りから気持ちが吹っ切れたように演奏が前向きになっていった。
モラリスのような現代曲をオープニングに持ってくるのもギタ菌さんらしいというか、彼のギターに対するこだわり、ポリシーが感じられる。ただ演奏の出来不出来は別として個人的にこの曲は余り好きではない。単なる趣味の問題で、聴き慣れればまた印象も変わってくるのかもしれないが。続くブローウェルの組曲は初めて聴いたが親しみやすい曲。ただ珍しく寡黙な金さんの演奏は、彼の意識が内に向かっていて、ある種近寄りがたい雰囲気すら漂わせていた。そうした彼のストイックな演奏姿勢が彼の想いを聴き手になかなか伝わりにくくしていたような気がする。5つのバガテルは僕の大好きな曲なのだが、ギタ金さんの演奏を以前GGサロンで聴かせていただいているが、正直以前聞かせていただいた時の方が切れが良かった印象がある。今回がさほど悪い演奏であった訳ではないのだが、彼ぐらいのレベルになると期待が大きいだけにどうしても見方が厳しくなってしまう。続くカントルの練習曲は、フォルクローレ調の親しみやすい曲だが、左手のスラーが連続する極めて難しい難曲。これを鮮やかなテクニックで弾ききった。本人は打ち上げの感想でミスを口にしていたが、極めて高度な左手のテクニックが要求されるこの曲をいとも軽々と演奏し、しかもエンディングにかけての集中力と盛り上がりはぞくぞくするほど素晴らしい出来だった。僕はこの日のコンサートではこのエチュードとダンジェロが一番心に残った。続くブローウェルのフーガも難曲だったが、思ったより短く、曲名の割りにあっけなく終わってしまった。技術的に難易度の高い曲が続いていたせいもあってやや印象が薄れてしまった点はゆがめない。
第二部のステージもこれまた難曲、ベージョのバリアンテスで始まった。この曲を以前ギタ菌さんが練習しているのを聞かせてもらったことがあるのだが、その時もえらく難しい曲という印象があったが、今回改めて全曲通して聴いて、これを生のステージで完全な形で演奏するのはプロといえどもかなり至難の業だろうなと思った。アセンシオが始まると、なんだかほっとした程で、アセンシオも難曲だが、他の曲と比較すると易しい曲に聴こえてしまう。いかに当夜のプログラムが難曲ぞろいだったかわかるというもの。多分こんなプログラムを挑戦するギタリストはそんなにいないだろう。
打ち上げでも今夜のプログラムをはじめて聴く曲ばかりだという方が何人かおられたが、そうした聴衆の心も捉えた今夜の金さんの演奏は評価出来ると思う。
フィナーレを飾るダンジェロは僕にとってギター曲の中で、ベスト3に入る大好きな曲でギタ菌さんの演奏を聴いて初めて知った曲。何度聞いても飽きない。息が詰まるほど美しく、今夜の演奏も緻密な音の絵巻を見る思いだった。
アンコールは、譜面を見ながらアサドの「さよなら」を、そしてピアソラの天使の死を気迫のこもった演奏で締めくくった。
今回の演奏は聞いた直後よりも何故か後になってじわじわと僕の中で膨れ上がってきた気がする。
ギターの可能性をギリギリまで追求するギタ菌さんの演奏姿勢が、自分には到底届かないけれどギターのメカニックを改めて見つめ直すキッカケを与えてくれたような気がする。多分会場にいた若いギタリストの卵達は僕以上に刺激を受けたに違いない。
初のCDリリースをキッカケに今年が金さんにとって飛躍の年になりますように♪